ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

ネクタイ業界を救うには?売れない現状が変わる為の条件を考える

ネクタイ売り場 ネクタイの売上を上げる

突然ですが、ネクタイが売れないのだそうです。

今日は、ネクタイ業界の人との、

今、ネクタイを売るためにはどうすれば良いのか

という議題についての小話です。

ちなみに、今日のキーワードは「ネクタイ業界における、技術革新への投資」です。

それが、ネクタイの将来の売上にどう繋がるのか。

よろしければ、皆さま、ご自身なりに予想しながら読み進めて頂ければ、と思います。

では、今日のお話に入りたいと思います。

先日、ネクタイ業界の方とお会いする機会がありました。その方のことは、仮に「社長」としておきましょう。

その社長がおっしゃるには、

「ネクタイが全く売れない」

「街中でも、訪問先の会社でも、ネクタイをしている人の割合が大幅に減った」

「このままでは、ネクタイ業界はやっていけない」

のだそうです。

確かに。

私の感覚でも、ネクタイの売上は相当に落ち込んでいるように思います。

私は、あまり深く考えていないフリをして、こんな風に返してみました。

「そういうと、そうですね。ネクタイをしない人が増えてきた気はしますね。」

社長からは、

「それじゃ困るんだよ。ネクタイが売れないと、みんな困ってしまうんだよ。」

と返ってきました。

うーん。「みんなって、誰なんだろう」と思いながら、こう返してみました。

「世の中のトレンドってものもありますしね。ネクタイ以外で生き残る道も探してみてはいかがでしょう?」

そうすると、この社長からは、次のように怒られてしまいました。

「何を言っているんだ。そんな事では、日本がダメになってしまう。キチンとした格好が出来ない国民ばかりの国になって良いのか!」

「ビジネスマンなら、ネクタイを締めるべきなんだ!そういう考えが当たり前になるように、俺は毎日頑張っているんだ!」

色々と言い返したくはなったのですが、少しお怒りの社長に、正面きって反論するのも得策ではないように思われました。

ですので、少し考えて、こう返してみることにしました。

以下、社長との会話形式でお読み下さい。

私「社長、私も、キチンとした格好が出来ない日本人ばかりになるのは問題だと思います。」

社長「おう。そうだろう。解ってくれるか。」

私「私は、欧米のフォーマルばかりが正しいとは思いませんが、それでも、欧米形式のフォーマルな格好が出来る日本人が増える事は、悪い事だとは思いません。」

社長「そうだろう。フォーマルな文化も大事なんだよ。」

私「ただ、ネクタイを締めない人が増えているのも確かです。対策に繋がるかどうかは解りませんが、業界として、なにか『技術革新への投資』はされているのですか?」

社長「なに?ネクタイ業界に、そんな余力があるはずがないだろう。だいたい、そんなに革新的な技術なんて、もう生まれやしないよ。多少、素材ベースで機能性を高める余地があるくらいだよ。もう、技術的には完成してしまっている。」

私「なるほど。しかし、ネクタイが売れなくなったのは、もしかすると、ファッショントレンド以外にも理由があるかもしれません。今度、若手の方も入れて、じっくりと、売れなくなった理由を研究されても良いかもしれません。」

ちょうど、この社長とはお別れの時間だったので、こうして、この会話は終わりになりました。

さて、皆さま。

今回の社長の主張、そして、私が示唆したこと、それぞれ、どのようにお感じなられましたでしょうか。

業界と関係ない方であれば、当たり前のように「様々な事」が思い浮かばれたのではないでしょうか。

その多くは間違っていないと思います。

ですので、ここで終わりにしても良いのですが、今回は、少し、私なりに思っていたことを補足してみたいと思います。

 

まず、今回の社長は、

「ネクタイが売れていないという事は、キチンとした格好が出来ない人が増えているに違いない」

と決めつけています。

また、この社長は、「フォーマルな格好」「ネクタイが売れなくなった理由」「ネクタイを売る為の技術革新」といった要素についても、決めつけをしてしまっている可能性があるようにも感じました。

誤解がないように明記しておきますが、私は、TPOをわきまえた装い(格好)をする事の大切さを否定する気はありません。

ただし、「フォーマルな格好」の定義も、地域によっては異なります。また、日頃、ネクタイをしていないからといって、フォーマルな格好が出来ない人ばかりではないでしょう。

そして、この問題を考える上では、「世の中の大きな流れ」という視点も大事でしょう。

私も社会人になった頃は、ビジネスでお会いする男性の方は、皆さん、ネクタイをしていました。それが当たり前だったように思います。

しかし、徐々に、そうした「当たり前」の感覚は薄れていったように思います。

そうなった背景は、単に「ファッションのトレンド」といったものではなく、「クールビズの普及」であり、更に、その背後には、「環境問題」があるように思います。

すなわち、仕事をする「環境が変化した」ことによって、「格好も変わってきた」ように思います。

そして、このトレンドは、ファッショントレンドよりも、もっと大きく、重要なトレンドだと多くの人に認識されているように思います。

ですから、私から見れば、小手先の対策よりも、このあたりの問題を何とか出来ない限りは、大きな世の中の変化は見込めないのではないかな、と思ってしまいます。

結果、よほどの「技術革新」がない限りは、大きなトレンドの変化は難しいようにも感じるのです。

では、どんな技術革新があれば良いのか?

それは、ぜひ、ネクタイ業界の方に考えてみて頂きたいところです。

ちなみに、私もネクタイは好きな方です。ぜひ、日本のネクタイ業界にも生き残って欲しいとは本気で思っています。私がこっそり否定したのは、ここで取り上げた社長の考え方であって、別にネクタイ業界の将来ではありません。関係者の皆さま、この点も誤解なきよう、お願いします。


なお、この記事が気に入った方には、以下の記事もお勧めします(同じく、当社の経営改善活動がらみで、相手の経営者が自分の所属する業界について後ろ向きな状況の記事です)。

www.yoshida-ri-blog.com