ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

日本は深夜に仕事をする人に優しいか

深夜勤務 仕事 経営 ビジネスコンサルティング

今日は、「深夜勤務する人を、日本は支えていく気があるのか?」という少し重いテーマを取り上げてみたいと思います。

多くの方がGWの連休を満喫された後のこの時期だからこそ、少し、「多くの人が休んでいる時に働いている人」のことも考えてみて頂きたい、と思ったのです。

まず、皆さまにお伺いします。

「日本企業は、世界で戦い、勝つ事を求められている」

「グローバルの第一線で活躍する人材が、日本には必要である」

こういったメッセージを読まれて、違和感を感じる方はいらっしゃるでしょうか。

恐らく、皆無に近いと思います。こうした事は日頃から言われています。

これを逆にすると、

「日本企業は、世界で負けても良い」

「日本には、グローバルでは戦える人材がいなくても良い」

となりますから、反対意見がないのは当然の事であるように思います。

しかし、ここ数年~十数年、「日本は、本当にそれを望んでいるのか?」と、違和感を感じる事があるのです。

今回は、その点について少し書かせて頂こうと思います。

 

それは、

「日本は、本当にグローバルで戦う『会社』と『人材』をサポートする気があるのだろうか」

という事です。

 

かなり大きな問題提起をしてしまいました。

もちろん、このブログの一記事で、このような大きなトピックスについて包括的に議論をするつもりはありません。

今日のブログでは、この中でも、非常に小さな問題しか取りあげるつもりはありません。

しかし、それは、多くの日本人の価値観に与える影響という意味では、実は、大きな点なのではないか、と思っている問題です。

 

それは、

「日本人の、『勤務時間外に仕事をしている人』に対する意識」

です。

言い回しがややこしいですね。でも、そんなに難しいお話ではありません。

 

質問続きで申し訳ありませんが、更に、いくつか質問を続けさせて頂きます。

「日本において、深夜に仕事している人が快適に仕事出来る環境は整いつつあると思いますか? それとも、今後、環境は悪化していくと思いますか?」

「日本の一般的な感覚として、シフト制の労働は促進されていく方向だと思いますか? それとも、一斉労働・一斉休暇が促進される方向だと思いますか?」

ここまでで、言いたい事は既に解ってしまったかもしれませんね。

でも、解った方も、せっかくですので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

 

「世界で戦う」「グローバルで活躍する」という事は、どういう事なのでしょうか。

当然ながら、日本の会社にとっての営業時間と、世界の営業時間はイコールではありません。

確かに、様々なコミュニケーション技術の発達により、リアルタイムでなくてもコミュニケーションは取れるようにはなりました。

しかし、やはり、第一線で戦い、活躍していこうとすれば、世界で起きている事にリアルタイムに対応する事は求められるでしょう。

ですから、深夜勤務や休日勤務が全く不要になった、とは私には思えません。

すなわち、日本の会社や労働者は、今後も、24時間・365日活動する事が求められるのではないか、と思うのです。

 

勘違いして欲しくないのは、これは、長時間労働や残業について述べているという訳ではない、という事です。

そういった事は、シフト制などで出来る限りの対応はすべきでしょう。

それと、深夜労働の有無は別問題です。

そして、ここで取り上げたいのは、今の日本において、

「『そういった深夜労働に従事する人をサポートしていかないといけない』という意識がどの位あるのか?」

というお話です。

 

正直な事を言えば、現在、深夜に仕事をしていても、そこまで大きな不便を感じている訳ではありません。

しかし、水面下で、そういった深夜に仕事をしている人たちを支える為のインフラが徐々に弱ってきていたり、そもそも、そういった事を考えていかなければならない、といった意識が弱いように思うのです。

 

皆さまにも少し考えてみて頂きたいのですが、例えば、

「深夜勤務者の食事環境は、恵まれているでしょうか?」

「深夜勤務者が仕事を終えた後に『遊びに行ける店』や『移動手段』は用意されているでしょうか?」

こうした点について、あまりに議論がされていないのではないか、と思うのです。

もちろん、こうした点は、改めて取り上げるほど大きな問題ではない、という意見もあるでしょう。

しかし、こうした事をあまりに軽視することは、日本を弱くしていくのではないか、と思うのです。

それとも、深夜に仕事をしている人は、普通の人と同じように便利に生活したり、楽しんだりする権利がないとでも言うのでしょうか。

もし、そうであれば、世界と戦う人たちを日本は支えている、とは言い難いのではないでしょうか。

 

そのように感じる理由の中で、身近な例をいくつか挙げてみます。

例えば、食事はどうでしょうか。

ご存じの通り、最近、ファミレスの多くは深夜営業を止める傾向にあります。

また、コンビニも24時間営業を止めるという話が出ています。

今後も営業してくれる店はあるでしょうが、確実に、深夜の活動を支える「食の基盤」は弱体化しているように思います。

もちろん、こうした事が起きている背景に、人材の問題などがある事は解っています。

ここで、深夜営業を復活させろ、と言いたい訳ではありません。

また、無くなるサービスがあれば、新しく生まれるサービスもある事でしょう(自動化された販売や、遠くからの配達などが真っ先に挙がるでしょう)。

しかし、「夜遅くは、店を閉めても仕方が無い」という考え方が受け入れられる中で、あまりに、「深夜労働をしている人に対するサポートが弱くなる」という点が取り上げられていないように感じる、という事を指摘したいだけです。

 

では、交通機関は?

この点は、昔から日本の弱点として指摘されてきた部分ではあります。

以前の都知事の某氏は、24時間の移動手段確保を目指されていました。

勿論、この点についても、テスト運用で十分な客数が確保出来なかったことや、残業の深刻化に繋がる、といった批判があった事を理解はしています。

しかし、それでも、東京が眠らない街になるという一つのビジョンを目指された事だけは評価したいと思ったものでした。

 

最後に、プレミアムフライデーです。

この考え方の背景には、「一斉に帰る」という考え方があるように感じられました。

勿論、消費を喚起する狙いは理解出来ますし、ダラダラ仕事を辞めてメリハリ仕事に繋がるのであれば、それは素晴らしい施策だとは思いました。

しかし、その一方で、「定時よりも早く、一斉に帰れ」とも受け取れるメッセージを出すという事は、「一斉に帰れない人は、どうするんだろうか」とも思ったものです。

「帰れる人だけでも、帰れるように背中を押すべきだ」という意見もあるでしょう。それに異存はありません。

しかし、この点についても、「一斉に帰れない人の事を考える」という価値観は社会に残っているのかな、と不安に思ったのです。

万一、社会が、そういう方向に向いていったとすると、「私も一斉に帰りたい」「シフト制では働きたくない」といった人が増えてしまうのではないか、と少し不安にもなりました。

 

ときどき、「女性が働きやすい〇〇」とったメッセージを目にする事があります。

もし、そうしたメッセージに意味があるのであれば、

「深夜労働者が働きやすい社会」

という概念についても、何かを検討する時に、少しだけでも気にとめる社会であって欲しいと思います。

少なくとも、「他の人が休んでいる時に休めない人が取り残されて、不幸になる社会」になっていく事だけは止めて欲しいと思います。

日本が世界で戦っていく為には、そうした事を大事にする価値観も「土台」として必要とされているのではないか、と思ったりもします。