今日は、「日本でアクティブ運用(アクティブファンドへの投資)がブームになるかもしれない」というテーマで書かせて頂こうと思います。
ご存じの通り、今はパッシブ投資(インデックスファンドへの投資)がブームとなっています。
ですから、このような事を言っても、ピンと来ない方がほとんどかもしれません。
しかし、現在のブームの旗振り役であった人が、「これからはアクティブ運用だ」と明言しているとしたらどうでしょうか。
実は、そのような事が実際に起きているのです。
日本の投資信託(投信)の世界で有名な、中野晴啓(なかのはるひろ)という方がいらっしゃいます。
つみたて王子(積立王子)という別名(呼び名)でも有名な方で、セゾン投信の実質的な創業者です。
投信への投資が盛り上がっていない頃から、日本で、投信への投資、それも、長期投資(つみたて投資)を呼びかけてきた方です。
そして、それを実現させる為の具体的な投資先(投信)をセゾン投信は販売していました。
この方が推す投資手法(方針)に納得(共感)し、セゾン投信で投信への投資を始めた投資家は、かなり多いと言われています。
そして、この方、現在のNISA制度の立ち上げにも深く関わっており、「現在のNISA制度には、この方の考え方が反映されている」とも言われています。
ただ、この方は、2023年にセゾン投信を事実上解任されました。
理由は、親会社との確執と言われています。
前述の通り、「この方がいたから、セゾン投信で投資をしている」という投資家も少なくなかったので、その後、どうされるのかな、と思って動向を注目していました。
あちこちから引き抜きのようなお話しはあったようですが、結局、ご自身で「なかのアセットマネジメント」という新しい会社を立ち上げる事にされました。
その話を聞いた時、これまでのお客様(自分を信じて投資をしてくれていた投資家)の為に、従来路線を引き継ぐ会社を立ち上げられるのかな、と予想しました(この方がいなくなったセゾン投信の運営方針は変わってしまう可能性がありますので)。
しかし、新会社の具体的な方針が伝わってくると、どうも、予想していた方針とは違う事が解りました。
これまで(セゾン投信時代)は、長期投資を前提とした分散型のインデックス投資(今、ブームになっている投資対象と言えるでしょう)を勧めるような商品ラインナップだったのですが、新しい会社では、アクティブ運用の投信しか扱わないようなのです。
※セゾン投信時代の代表的な商品は「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(セゾンVGB)でした(バンガード社の日本からの撤退に伴い、その後、セゾン・グローバルバランスファンド(セゾンGB)に名称変更)。
不思議に思い、情報を集めてみました。
幸い、中野晴啓氏のインタビュー記事はあちこちですぐに見つかりました(新しい会社の宣伝の為、積極的にメディアに露出されているのでしょう)。
結果、解った事は、「中野晴啓氏は、現在、アクティブ運用を推奨する発言をされている」という事でした。
最もはっきり書かれていたインタビュー記事によると、
「今はインデックスファンド全盛だが、インデックスの最も心地よい環境は終焉を迎え、アクティブ運用がようやく報われる時代が来る」
とまで発言されているようです(一部、著者修正)。
そして、アクティブ運用を推奨する理由としては、「(これからの時代の環境において)持続的に成長する企業に投資する事で超過リターンが得られる」といった理由を挙げられていました。
すなわち、「(しっかりと運営された)アクティブ運用は、パッシブ運用に勝てる」と主張されている訳ですね。
理屈は、その通りですから、別に変な話ではありません。
ただ、アクティブ運用を勧める理由として、目新しいもので無い事も確かです。
ですから、この理由だけで、「自分の考え方に共感して投資してきてくれた投資家に、今後は、アクティブファンドに投資して欲しい」と主張されているという事なのであれば、ちょっと弱いようには感じました。
少しいじわるな見方をすれば、「自分がアクティブ型投信に特化した会社を立ち上げたから、アクティブ運用を推す発言をされるようになったのではないか」とも疑ってしまいます。
もちろん、「キチンと投資先を評価して投資する人がいる」という事は、市場において重要であると言われています。
そして、「既にインデックスファンドは世の中に十分にあるので、今から自分で会社を立ち上げるのであれば、アクティブ運用の会社にしたい」とお考えになったのであれば、それを悪いと言うつもりは全くありません。
ただ、個人的には、「インデックス投資とアクティブ投資を、今後、どのように使い分けていけば良いのか」といった点について、この方ならではの「お勧めの方針(初心者にも解りやすい説明)」の発信をして頂きたかったようには思います。
単に、「今後はアクティブ運用だ(自分はアクティブ運用でやっていく)」と言われても、これまで、この方を信じてインデックス投資をやってきた人は迷ってしまう事でしょうから。
とはいえ、日本にインデックス投資を広めた立役者の一人が、「今後はアクティブ型」と明言されているのは、注目に値します。
過去に日本の多くの投資家を動かしたように、今回も、中野晴啓氏は日本の投資家を動かす事になるのでしょうか。
そして、その結果、今の日本のインデックス投資のブームは陰りを見せるのでしょうか。
アクティブ運用のブームは来るのでしょうか。
注目していきたいと考えています。
※誤解がないように補足しておきますが、中野晴啓氏の事を「インデックスファンドを勧めてきた人」と捉えている人が多いように思いますが、実際には、この方は、これまでもアクティブファンドを否定されていた訳ではないように思います(著書では、推奨するファンドにアクティブファンドも含めていらっしゃいます)。
※本エントリは、様々な中野晴啓氏についての記事を読み、参考にしております。その中の一部(ネットで確認できるもの)のURLを以下に載せておきます。
「アクティブ投信は時代遅れ?「つみたて王子」は泥臭く:なかのアセット・中野晴啓」(トウシル)
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/44933
「積立王子・中野晴啓氏「インフレ下はアクティブ優位」」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB267LF0W4A420C2000000/
「なかのアセット、スタート1カ月 クオリティグロースの本格アクティブ投信 インデックスの時代は終焉」(日本証券新聞)
https://www.nsjournal.jp/%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%81%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%881%E3%82%AB%E6%9C%88%E3%80%80%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B0%E3%83%AD/