海外のトレンドを追っていると、次から次へと働き方についての新しいトレンドワード(流行語)が出てくる事に驚かされます。
それだけ、今という時代は、会社も個人(従業員)も「働き方」や「働く環境」について試行錯誤しているという事なのでしょう。
今日は、また新しい用語である「静かな休暇」についてご紹介させて頂きます。
静かな休暇(quiet vacation)とは、「会社に無断で、自分の好きな場所(通常はリゾート地など休暇の際に行く場所)に行ってしまう」という事を指す用語です。
自宅などで真面目に仕事をしているフリをしながら、実際には全然違う場所にいる、という訳ですね。
このような「サボり方」は、対面での会議や上司への報告が当たり前だった時代には実現が難しかった事でしょう。
しかし、会議がリモート会議となり、上司とのやり取りも、基本、メールやチャットで済ませられるようになると、居場所はバレづらくなり、このような事を考える人が出てくる訳ですね。
もっとも、この静かな休暇、バレて大変な事になってしまうケースも少なくないようです。
当たり前ですが、普通に仕事をしているはずの日に、会社の許可も受けずにリゾート地などにいる訳ですからね。
ちなみに、上司が、部下の静かな休暇に気付くきっかけ(理由)は、以下のようなものだそうです。
・部下が異様に疲れた様子である(会議時間以外は、体力を使うアクティビティをしたりしていたのでしょう)
・部下が異様に日焼けしている事に気付く
・部下の雑談の雰囲気やテーマが、日頃と違う
など。
昨今の優秀なリモート会議のシステムによって、会議中の画面の背景は変更できても、本人の変化まではごまかせない、という事なのでしょうね。
「バレるはずがない」と思って静かな休暇をしていても、やはり、そんなにうまくはいかないようです。
もっとも、米国の従業員の10人に1人は既に静かな休暇を取った事があり、13%が近いうちに実行する事を計画している、との調査結果もあります(ミレニアル世代の働き手の40%が経験者だった、という調査結果すらあるようです)。
ですから、この静かな休暇は、既に、「特別な社員だけが行っているサボり方」という訳でもなさそうです。
また、この静かな休暇が流行している背景には、「最近、なかなか有給休暇が認められない」という事情もあるようです。
その上、「コロナ渦で部下に対する管理体制が変わり、部下の十分な管理が出来なくなっている会社が多い」といった事情が追い打ちをかけている模様です。
結果、従業員側が、「静かな休暇をしてもバレないだろう」と考えてしまいがちなようです。
ですから、会社側が、この静かな休暇を止めさせる為には、「静かな休暇をしたら、必ずバレるだろう」と従業員側に思わせる事が大事なのでしょう。
もっとも、この静かな休暇を問題視する会社が増えれば、技術的に「静かな休暇をしていないかチェックする為の仕組み」は、比較的早く実装されそうな気はします(チェックする方法はいくらでもありそうですよね)。
ですから、静かな休暇のトレンドは、短いものになるのかもしれません。
ただし、経営者の方が注意しておかないといけないのは、「単純に、静かな休暇を従業員に止めさせれば問題は解決する」とは限らないかもしれない事です。
昨今の様々な労働関係のトレンドを踏まえると、「静かな休暇をして良いなら今の会社で働くが、静かな休暇が出来ないなら働きたくない(転職する)」と考えている従業員が少なからず社内にいるかもしれません。
もし、今の社内がそのような状態であった場合、「そもそもの労働環境の魅力度(従業員が働き続けたい会社であリ続けているのか?)」という点についてのチェックや改善も必要になりそうです。
そして、辞めて欲しくない社員がリゾート地での勤務を望み、また、長時間労働を嫌がっているのであれば、そもそも、その企業はワーケーションを原則として認め、かつ、労働時間の短縮に取り組む必要があるかもしれません。
静かな休暇の次には、そういった従業員の為の労働環境の見直しに関するトレンドが生まれてくる可能性もあるように思います。