皆さまは、
「リストラで解雇の対象になるのは、年配者であるべき」
といった意見や、
「リストラの対象から、若者(若手社員)は外すべき」
といった意見について、どう思われますか?
実は、こうした「リストラの対象者に関する価値観」ですが、今回の新型コロナウイルスによって注目されている「命の選別」や「経済的な死者」といった概念によって、見直される可能性があるように思うのです。
※なお、希望退職や早期退職に応募するかどうか迷われている方には、以下の記事がお勧めです。
新型コロナによる企業の業績悪化は、今後も続くと予想されます。
そして、残念ながら、その中でリストラが行われる事もあるでしょう。
リストラの実施に関係する方はもちろん、雇用に関心のある皆様にもお読み頂ければ、と思います。
※本来、リストラは解雇を意味する言葉ではありません。しかし、日本においてはリストラ=解雇という意味で広く使われています。この為、この記事でも事業整理に伴う解雇という意味でリストラという単語を使います。
日本では、今のところ、酷い医療崩壊が報じられる事はありません。
しかし、海外の一部の国では、深刻な医療崩壊が発生しました。
そして、その結果、「命の選別が行われた」と言われています。
具体的には、「病床(治療できる対象)が限られている」為に、「救う人を選ぶしかない」という事態が実際に発生したそうです。
そして、「高齢者の命を救うことを諦め、若者の命を救う事を選ぶケースがあった」と報じられています。
皆さまは、「若者と高齢者、どちらを救うか?」と聞かれたら、どのようにお答えになりますか?
その答えを考えながら、続きをお読み下さい(もちろん、そもそも、そんな状況にはなって欲しくありませんが)。
実は、似たような話で、「会社がリストラする時に、対象になるのは若者か年配者か」という論点があります。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、これまで、日本においてリストラが行われる場合、
「若者(若手社員)はリストラの対象外」
というのが常識でした。
しかし、実は、この常識、世界の常識ではありません。
「解雇されるのは若手から」
が基本の国も多いのです。
(厳密には、在籍期間が短い社員から、といった方が正確です)
理由については、様々な考え方があるようですが、
「年配者の方が、ベテランだから企業にとっても価値が高い」
といった考え方もあるとは聞いています。
ただ、この考え方については、今回は一旦おいておきます(この考え方を検討する為には、「若者とベテラン社員の、どちらが会社にとって価値があるのか」という重い話もあります)。
それよりも、ここでは、他の理由として挙げられる事がある、
「既に長い間、その職場を前提として生活基盤が構築されてしまっている人を保護すべき」
(入社したばかりの人は、解雇されて転職する事になっても、影響(被害)は小さいはず)
という考え方の方を取り上げたいと思います。
日本においても、「若者の方が転職はしやすい」と言われています。
ですから、もし、「失業者を出さない」という視点だけから考えれば、
「会社に、年齢が高い従業員を解雇させない」
という方針は、一定の合理性を持ちます。
特に、新型コロナによって、「経済的による死」や「経済的な死」といった考え方が頻度高く、取り上げられるようになりました。
ですから、従来以上に、
「十分に収入が得られる環境がないと、人は死ぬ事があるのだ」
という事が、社会で認識されるようになったのではないかと思われます。
また、今後、失業者が増えた場合、再就職がより困難になり、「解雇するなら、少しでも再就職が容易な人から解雇すべき」といった考え方が生まれるかもしれません。
その結果、
「長期の失業者を生み出さない仕組みを作ろう」
という風潮が生まれ、
「解雇するのであれば、若者から」
といった考え方が生まれる可能性はあり得るように思います。
場合によっては、そういった制度が導入される可能性すらあるのかもしれません。
または、逆に、
「救うのは若者から」
という事を実際に行った海外において、若者の生活基盤を重視する考え方が芽生え、
「若者を解雇すべきではない」
という逆の考え方が生まれる可能性もあるのかもしれません。
こうした問題を日本で真剣に考える為には、そもそも、「会社には、従業員の能力を高める事について、どのような責任があるのか」や「会社が、人員を解雇する事の是非」といった重い論点が関係します。
また、「新卒採用を前提とした人材システムの是非」や「年齢別の人口分布」「社会保障制度についての考え方」といった問題まで関係するでしょう。
ですから、この問題の是非について取り上げる事はしません。
ただ、
「海外の標準から外れた、『リストラ(解雇)する場合、対象から若者は外される』という日本の常識が、今後見直されるかもしれない」
という可能性だけは、ここで指摘しておこうと思います。