ダイナミックプライシングについての第二弾です。一部から評判が良かったので続編を書いてみる事にしました。
今回は、このダイナミックプライシングが消費者の行動に与える影響について掘り下げてみたいと思います。
ダイナミックプライシングの持つ基本的な意味や、企業がダイナミックプライシングを導入する背景については、以前のブログ記事で書きましたので、宜しければ、そちらをご参照下さい。
- ダイナミックプライシングが日常に与える影響
- ダイナミックプライシングによる価格変動は好ましいことなのか?
- なぜ、価格の安定は重要なのか(価格が急激に変化してはいけない理由)
- これまでとは違うダイナミックプライシングによる価格変動
- ダイナミックプライシングは日常を投資の世界に変えるかもしれない
ダイナミックプライシングが日常に与える影響
さて、ダイナミックプライシングが世の中で広く導入されると、何が起きるでしょうか。
答え:「価格が変動します」
当たり前ですね。ダイナミックプライシングの定義のような話ですから。
では、「日常生活で皆が買う商品やサービスの価格が頻繁に変動する世界が到来した場合、何が起きるのか(何か問題はないのか)?」というのが、今日のお話です。
ダイナミックプライシングによる価格変動は好ましいことなのか?
そもそも、価格の変動は、経済にとって好ましいことなのでしょうか。
難しい議論はおいておいて、現代において、この問題への答えは出ているはずなのです。
誰が答えを出してくれているか?
それは、「中央銀行」です。
中央銀行というのは、日本であれば、日本銀行の事です。
私達が大事にしているお金を管理している大元ですね。
その日本銀行が、「日本銀行の目的は、『物価の安定』を図ること(後略)」と言っています。
ですから、価格の変動に問題がない、という訳はないのです(勿論、「物価の安定」というのは、価格が全く動かないことを意味しません)。
なぜ、価格の安定は重要なのか(価格が急激に変化してはいけない理由)
では、なぜ、物価の安定は重要なのか。
価格が急激に変化すると、私達の生活が混乱するからなのです。
例えば、貴方は、今月の給料を貰ったら、今後一ヶ月分の生活に必要なものを一気に買ってしまい、残ったお金で旅行に行こうと計画していたとします。
しっかりと買うものも決めて、給料日まで指折り数えて楽しみに待っていました。
さぁ給料日。貰ったばかりの給料を手に、買い物に行きました。
しかし、実は、計画した時とは物価が変動しており、実は一ヶ月分の食料品を買うだけでお金は全てなくなってしまいました。
予定していたもの全て買う事すら出来ず、旅行になんて行くお金は全くありません。
こんな事が日常になったら、皆様はどう思われますか?
経済学などを勉強された事のある方は、こうした話を学習された事もあると思います。
そして、実際に、それほど長くない期間の間に、物価が10倍になったりした国は近代でもあるのです。
日本がそんな事になったら、そもそも安心して仕事も出来ませんし、買い物も落ち着いて出来ません。
国の運営への不満は溜まりますし、通貨の信頼もめちゃくちゃです。
こんな事が起きないように、少なくとも、「急激に物価は変動させてはいけない」事になっています。
これまでとは違うダイナミックプライシングによる価格変動
あれ?と思って頂けましたでしょうか。
ダイナミックプライシングでは、値段は大幅に変わります。
もっとも、先ほどの例では値段が上がっていましたが、これが値段が下がる方であったならば、問題を感じる人は少ないかもしれません。
それに、今までだって、消費税があがったり、為替の影響で値段があがったり…といったことは色々ありました。
また、買えなくなっても大きな問題がないようなもの(贅沢品のようなもの)だけの世界に発生する価格変動であれば、それほど大きく騒ぐことではないかもしれません。
ダイナミックプライシングの導入事例として良く取り上げられており、皆さまがイメージしやすいのも、航空券などのレジャーに近い業界の商品やサービスかもしれません。
ですから、ダイナミックプライシングの問題は、日常生活には、あまり関係ないだろう…と思われている方も多いかもしれません。
しかし、改めて考えてみて下さい。
今時、近くの個人経営のお店だけで買い物をしている人は少ないでしょう。
スーパーやインターネット上のショップで生活に必要なものを購入している人は多いと思います。
そして、アマゾンが、このダイナミックプライシングを大規模に導入している事は広く知られていますし、国内の大手インターネットモールもダイナミックプライシングの導入を予定しているとか。
ネットではないスーパーでもダイナミックプライシングの導入を検討している所があると聞きます。
勿論、競争がありますから、単純に値段がつり上がっていくとは限りません。むしろ、下がる事もあるのかもしれません。
しかし、「競争相手を意識して、値段を下げる」ということは、これまでの多くの店が既にやってきている事です。
改めて、どこかの店が「ダイナミックプライシングを導入する」と聞くと、値段を上げる方向の検討がしたいのではないか?と疑ってしまいます。
こうした動きが相次ぎ、ダイナミックプライシングが広く普及した世界においては、日用品の価格までもが激しく変動する世界が来てしまうのかもしれません。
ダイナミックプライシングは日常を投資の世界に変えるかもしれない
実は、「値段が大幅に変動するのが普通」の世界が、私達の身近に一つあります。
それは、多くの方がイメージする「投資」の世界です。
儲ける為に、安く買って高く売るのが当たり前の世界。
値段が変動する事に文句を言う人は、ほぼいません。
そこで勝負をしている人たちは、その変動を狙って、いつ、買ったり売ったりすれば良いかを考え、タイミングを狙っています。
(注:必要以上にリスキーな方法での資産形成をお勧めしていない立場としてば、出来れば、そうしたイメージがつきまとう活動は「投機」と呼ばせて欲しいですが…)
もし、私達の将来においてダイナミックプライシングが広く普及し、日用品の価格までもが激しく変動するようになってしまった場合、私達の日用品の買い物も、それと同じ感覚で付き合わないといけなくなるかもしれません。
そんな未来が仮に来たら、皆さんは嬉しいですか?
いや、これまでの日常の買い物でも努力をされてきた方からは、こう反論されるかもしれませんね。
「今までだって、安い値段をチラシに乗せているスーパーを狙って買いに行っている。変わらないじゃないか。」
確かに、基本は同じかもしれません。
でも、これから始まるダイナミックプライシングでは、一日の中でも値段が変動するかもしれません。
チラシを見て、買い物をするスーパーを選ぶような単純なものでは済まないかもしれません。
また、今度は、かなりの価格変動かもしれません。
こうしたダイナミックプライシングが本格的に普及した場合、皆さまはついて行けそうですか?