ちょっと物騒なタイトルにしてしまいましたが、一つの視点としてお読み頂ければ。
企業にとって、「政治が関係するリスクをいかに回避するか」という事は、重要な経営テーマの一つです。
昨今で言えば、「韓国における不買運動」や「香港における抗議活動」などは解りやすい例です。
「不買運動や抗議運動の対象になるのは嫌だな」と思いながら、日本でニュースを見ている経営者もいらっしゃることでしょう。
では、日本においては、こうした不買運動・抗議活動は起きないのでしょうか。
日本において、ここまでの活動が起きる事は、「稀」であると思います。
しかし、「では、日本では起きないと思って良いのか?」と聞かれると、私はそうも思いません。
「生活の安定が脅かされる」場合や「子供の将来が危なくなる」といった一線を越えた場合には、日本においても、そうした活動が起きる可能性は否定できないように思います。
そして、近い将来、「日本で、不買運動・抗議活動に繋がる可能性が否定出来ない」、と分析している事案が一件あります。
それが、「横浜のカジノ誘致」の問題です。
カジノが実際に出来た場合に、「どこまで重大な影響を横浜に与えるのか(特に悪い方向で)」という事は、私には解りません。
しかし、気になるのは、
・横浜市民の6割以上が反対している(9割というデータもあります)
にも関わらず、
・横浜商工会議所がカジノ誘致に向けた動きを活発化させている
という事です。
市民が反対する政策を政権(今回は地方自治体)が進めること自体は、別に珍しい事ではありません。
しかし、この問題は、横浜市民が、「治安が悪くなる(57%)」「ギャンブル依存症の人が増える(26%)」「イメージが悪くなる(8%)」といった点で反対しており、単に自分自身の不利益といった事を超えて、「横浜の将来のため」「子供のため」といった「大義」を感じてしまう可能性のある反対理由が挙がっているように見えます。
※パーセントは、朝日新聞社調査(9/28-29)より。
そして、本来は消費者である「横浜市民」の方を向いていなければならない地元経済界が、「横浜市民を敵にまわしている」という構図になっています。
今は反対運動自体が激化していませんので、それほど具体的な動きは起きていないようです。
しかし、今後、
「何としてでも、横浜へのカジノ誘致をストップさせたい」
という動きが、横浜市民の間で活発化した場合、
「カジノ誘致に賛成している企業は敵だ」
という発想が生まれる事は、容易に想像出来ます。
そして、どこまで広がるかは解りませんが、その結果、
・横浜商工会議所への抗議運動
・横浜商工会議所に所属している企業への抗議運動
・横浜商工会議所に所属している企業への不買運動
・横浜商工会議所に所属している企業で働いている人への風当たりが強くなる
といった動きに繋がっていく事は予想出来ます。
※横浜商工会議所はカジノ誘致を賛成・支援している団体の代表として書いています。この他の団体であっても、カジノ誘致に賛成を表明している団体があれば、同じように考えるべきでしょう。
横浜商工会議所はカジノ賛成を表明していますから、抗議活動の対象にされても仕方がないと思われますが、実際には、カジノ誘致に賛成ではない企業であっても、「横浜商工会議所に所属している」というだけで、不買運動の対象になる企業も出てくるかもしれません。
更には、何の関係がない企業でも、「横浜にある会社だから、カジノ誘致に賛成に違いない」などと判断されてしまう危険性すらあるでしょう。
※海外の事例を分析すると、これに類するような誤解は良く起きています。
そして、こうした動きが表面化した場合、企業は、「カジノ誘致に反対である事を表明する」、または、「被害を我慢する」、の二択を迫られる事になるでしょう。
もう一つの方向性として、「カジノ誘致を市民に納得して貰う」という手もありますが、一企業で成し遂げる事は不可能に近いでしょう。
どちらにせよ、経営にとっては、大変な負担です。横浜の経済界が割れたりする事にも繋がるでしょう。
もし、そうしたリスクを回避したければ、冒頭の「横浜と距離を置く」という選択肢も候補に入ってきてしまうのです。
もちろん、ここで書いている内容は、「企業のリスク管理として、考えておくべき視点」を紹介しているに過ぎません。
実際に、こうしたリスクが発生する可能性が高い、とまで言っている訳ではありません。
しかし、想像するだけでも嫌な未来図です。
横浜は私にとっても好きな街です。こうした事態が現実化しない事を心より願っています。