YouTubeには「YouTubeプレミアム」という有料サービスがあります。
このYouTubeプレミアムの会員を増やす為、youtube社はかなり宣伝などを行っています。
しかし、この宣伝を見る度に、「なぜ、youtube社はYouTubeプレミアムの会員を増やしたいのだろう」と不思議に思っていました。
なぜなら、youtube社にとって、YouTubeプレミアムは利益に貢献しない可能性が高い為です。
しかし、最近、何人かと議論をして、ようやく、「そういうことか」と思えるような理由(YouTubeの将来性に繋がる理由)がいくつか見つかったので、ここでご紹介してみたいと思います。
youtube社がYouTubeプレミアムの普及を狙う不思議
YouTubeプレミアムは、月額1180円の有料会員サービスです(違う値段で提供される場合もあります)。
そして、YouTubeプレミアムの会員になると受けられる特典の中には、
「広告が表示されなくなる」
というものがあります。
日頃、動画を見ていて「広告が邪魔で動画に集中できない」「途中の広告のせいで、盛り上がっていた気分に水がさされた」などと感じている人は少なくないでしょう。
このYouTubeプレミアムの有料会員になる事で、その不満は解消されます。
ですから、ユーザー側にとっての、「YouTubeプレミアムに加入するメリット」は解りやすいと言えます(他にも、オフライン再生が出来るようになったりするメリットもあります)。
問題は、サービス提供側であるyoutube社の思惑です。
ネットビジネスに詳しくない方の中には、
「ユーザーからお金を取れるのだから、youtube社が会員を増やしたいと思うのは当然!」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、YouTubeプレミアムにわざわざ加入しようと思うユーザーは、YouTubeのヘビーユーザーである可能性が高いでしょう。
youtube社は、これまで、そのヘビーユーザーに広告を配信する事で、かなりの収益を得てきているはずなのです。
ですから、YouTubeプレミアムの会員料金よりも、広告配信で得られる金額の方が大きい可能性は高く、「なぜ、youtube社は、その利益を手放すようなサービスに力を入れているのか?」が解らなかったのです。
YouTubeプレミアム導入がYouTubeの未来に繋がる理由①:囲い込み
ここからは、その理由について何人かと議論した際に出た結果です。
※youtube社の直接の関係者は含まれていませんので、以下はあくまで推測です。間違っている可能性も十分にあります。
まず、一般的な有料会員制サービスと同じように、「ユーザーを囲い込みたい」という理由があるのではないか、とは推測出来ます。
すなわち、「他の動画サービスに、ユーザーを奪われたくない」というもの。
ただし、YouTubeの強力な競合は、今のところ、見当たりません。
ですから、この理由だけで導入を進めているとは考えづらいように思います。
YouTubeプレミアム導入がYouTubeの未来に繋がる理由②:デバイス把握
次に、「ユーザーには、ログインした状態でサービスを使って貰いたい」という理由があるのではないか、という推測も出来ます。
今でもgoogleアカウントを作り、ログイン状態でYouTubeを使っているユーザーは多いでしょう。
しかし、「スマホではログインして使っているが、パソコンではログインせずに使っている」などという人もいる事でしょう。
これが、YouTubeの有料会員になると、そのメリットを生かす為に、会員は必ずログイン状態でサービスを使うようになる事が期待できます。
結果、youtube社としては、あるユーザーが使っている端末を全て把握する事が出来るようになります。
この事は、広告配信などの際にメリットがあるように思われます。
ちなみに、ユーザー情報を把握する為の技術については、現在、規制が厳しくなる方向で動いています(プライバシー保護の為)。
この為、従来から使われている方法だけでは、今後、「分析や広告配信の精度が下がる」と言われています。
この事も関係しているかもしれません。
YouTubeプレミアム導入がYouTubeの未来に繋がる理由③:広告との相性の悪さ
また、そもそも、「ユーザーが見たい動画の前や途中に広告動画を差し込む形式は、ユーザーから嫌われる度合いが強いのではないか?」という事をyoutube社が懸念している可能性もあるように思います。
昔からあるgoogleの検索結果(文字ベース)に広告が紛れていても、そこまで強く「邪魔」と思うユーザーは少ない事でしょう。
少し目を動かせば(または、スクロールなどをすれば)、目的の結果を確認する事が出来るからです。
しかし、動画の広告はかなり邪魔です。
ですから、広告主の立場はともかく、一般のユーザー(視聴者)の立場にたつと、「動画と広告の相性は悪い」と言えるのかもしれません。
そして、そのような状態を続けていると、ユーザーがYouTubeから離れていってしまう危険性をyoutube社は危惧したのかもしれません。
この点に配慮している他サービスにユーザーを奪われたり、そもそも、インターネットで動画を視聴するという行動を止めるユーザーが出てきたりするのではないか、という懸念です。
広い意味での競合であるnetflixのような広告の入らないサービスに負けている点を改良した、とも言えます。
YouTubeプレミアム導入がYouTubeの未来に繋がる理由④:他の収益源の確立
最後に、「広告に頼らない収入体制を確立できる目処がたったから」という理由も考えられます。
ここまで挙げた理由(特に、広告と動画の相性の悪さ)を踏まえると、youtube社としては、「抜本的な収益源の変更(追加)」を模索してきたのかもしれません。
すなわち、広告配信以外で、「YouTubeという動画配信サイトを運営する事で十分な利益を得る方法」を探していた、という事です。
そして、その目処がたった為に、広告に頼らない選択肢を提示できるようになったのかもしれません。
既にリリース済の「広告以外の収入源」としては、「スーパーチャット」と呼ばれる「投げ銭」からの収入などが挙げられるでしょう。
この投げ銭ですが、既に1億円以上を受け取った人もいると報道されており、youtube社にとっても小さくない収入源に育っている可能性があります(youtube社の手数料は30%+アルファ)。
ただ、youtube社が考えている「広告以外の収入源」は、もっと大きなスケールのものである可能性が高いと思われます。
恐らく、youtube社が今後の収入源として考えているであろう有力な収入源の一つは、
「動画を通じた商売のプラットフォーム提供による収入」
でしょう。
例えば、YouTube上で有料会員制のサイトを運営したり、有料の情報商材を販売できるようにする。
また、通販会社が通販番組をYouTube上で運営し、その商品の購入までをYouTube上でスムーズに出来るようにする、など。
そして、その決済額の一定割合をyoutube社としては手数料として受け取る。そういう事です。
それに加え、ビジネスを円滑に進める為の様々なサービスも追加で提供し、手数料を受け取る。
このような動き、既に一部は提供が始まっています。
このような考え方で動画プラットフォームを収入源にしていけば、広告とは別に、青天井の収入を見込む事も可能です。
もちろん、そのようなビジネスを運営する上で、YouTubeプレミアムの会員情報を活用する事もyoutube社は考えている事でしょう。
例えば、YouTubeプレミアム会員にDMを送ったり、優待サービスを提供したり、など。
そのようなビジネスモデルに変わった場合、YouTubeプレミアムの会員数は「有力な商売の武器」になるのかもしれません。
ここまでが、想定できた、「YouTubeの未来の為に、YouTubeプレミアムの推進を行っている背景・思惑」です。
どこまで正しいかは解りませんが、ある程度当たっているとすると、youtube社は、「ユーザーのニーズに応える」という事と「自社の収入源を確保する(拡大させる)」という事を両立させる解を導き出しているように見えます。
さすがgoogleグループのYouTubeというべきでしょうか。恐れ入ります。
※あくまで、この記事の内容は、google社およびyoutube社とは関係ない人間による推測です。事実と異なっている内容が含まれている可能性も十分にありますので、ご注意下さい。
※youtube社CEOのスーザン・ウォジェスキ(Susan Wojcicki)氏は、2022年のインタビューで、①ショート(短編動画、6月には視聴者数が月間15億人達したと発表)、②ショッピング、③リビングルーム(居間のテレビを使った視聴関連)、の3分野に注目している(YouTubeの成長を支えると考えている、または、既に投資している)と回答しています。(2022/9/29追記)