ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

「70代を高齢者と言わない街」に、貴方は好意的?否定的?

70代は高齢者か

ある道路を通行していると、

70代を高齢者と言わない街 ○○市

と書かれた標語を目にしました(○○の所には、ある地方自治体の名前が入ります)。


皆さまは、この標語を読まれて、どのようにお感じになりますか?

その街に住みたいですか?それとも嫌ですか?

この標語に対して、様々な意見が同行者から出ましたので、「高齢者」という言葉を扱う難しさと共に、少し、紹介させて頂こうと思います。


この標語を目にした時、まず、Aさんからは、

Aさん「いいですね。私は、過度に年寄り扱いされるのは嫌です。老後は、そういうスタンスで行政を行っている街に住みたいかもしれません。」

という意見が出ました。

この標語を採用した人が喜びそうな意見です。

しかし、同行者の多くは、日頃から物事を批判的に見る事に長けている人達です。

次々と反論が出ました。

Bさん「いや、俺は嫌だな。高齢者と言わないっていう意味が良く解らない。年を取っても、若者と同じように働けっていう意味かな?」

Cさん「高齢者扱いされないって事は、良くある高齢者向けの優遇サービスもないって事じゃないの?バスの割引が無いとか。」

Bさん「そもそも、高齢者を高齢者って言えない理由があるのかもしれない。税収が足りないから、現役世代と同じくらいに税金払って欲しいとか。それを誤魔化す為のメッセージだったりして。」

皆、言いたい放題です(関係者の方がご覧になっていたら、すみません)。

そして、その後、別の同行者から、少しまとめるような意見が出ました。

Dさん「深読みすると色々な事が考えられてしまうけど、寿命が延びて、『人生100年時代』という言葉まである時代だし、昔の高齢者の定義を変えた方が良いっていう視点は良いと思う。」

※従来は65才以上を高齢者と扱うケースが多かったのです。

発言は続きます。

Dさん「でも、この標語じゃ、『80才代なら高齢者でOK』とも読める。それは良いのだろうか?70代だけを高齢者から外した事には、違和感があるね。」

Dさん「おまけに、既に意見も出ているけど、自分を高齢者扱いして欲しい人もいるはずだよ。そういう人の気持ちも十分に踏まえてあげるべきだけど、そこは大丈夫なのかな。」

2点の問題提起がされた事になります。

ちなみに、この後、定年延長の制度の問題やら、敬老パスの対象縮小の問題やらで盛り上がったのですが、それは、ここでは置いておきましょう。


私も、「70代を高齢者と言わない街」というメッセージは、なかなか微妙だな、と思います。

年を重ねた以上、若者と同じように行動するのは無理があります。

ですから、その年代の住民に対して、一定の配慮はして欲しいと思います。

その一方、年を重ねてくると、同じ年齢でも、健康状態は大きく異なります。

年齢という一律の基準ではなく、その人にあったサポートを適切にしてくれる自治体こそがベストであるようにも思います。

なかなか、「高齢者」という言葉だけで、考えるのは難しいですね。


そして、実は、この「高齢者」という概念については、ビジネスでも取り扱いが非常に難しくて有名なトピックスです。

ご存じの方も多いと思いますが、高齢者に十分に配慮していないと、様々なお叱りを受けます。

例えば、小さい文字で説明を書いていると、「読めない」という問題(使う色でも同じような問題があります)。

固すぎたり、喉を詰まらせる可能性のある食料品だと、「命に関わる」という問題。

ネットを使ったやり取りを前提とすると、「ITに弱い人への配慮が足りない」という問題。

高齢者の方にご満足頂く為には、かなり、様々な事に気をつけなければなりません。

それにも関わらず、そういったポイントに十分に配慮した商品・サービスを開発して、「高齢者向け」として販売すると、今度は、売れなかったりします。

「高齢者として扱われたくない」という強いニーズもあるのです。

高齢者向けのビジネスは本当に難しいです。

冒頭でご紹介した「70代を高齢者と言わない街」という標語をみて、私はその事を連想しました。


皆さまは、「70代を高齢者と言わない街」という標語をご覧になって、どのような事をお感じになりましたか?

好意的に受け止められましたか?

それとも、否定的でしたでしょうか?

ぜひ、皆さまの受け止め方も、コメントなどでお知らせ頂ければ、と思います。