「勤務時間外の従業員に業務連絡をすると違法」という内容の法律がポルトガルで成立した、というニュースが入ってきました。
そして、その法律では罰則(罰金)まで設定されているとの事。
これは、労働者の側からみると、「勤務時間外に仕事の連絡を受けなくても良い権利」が成立した、という事になります。
このような権利は「つながらない権利」と呼ばれており、各国で検討が行われてきました(ポルトガル以外でも、既に限定的な権利が導入されている国もあります)。
今日は、この「つながらない権利」について。
この「つながらない権利」が以前よりも注目されるようになった背景には、「テレワークの普及」があります。
テレワークでは、「何時から何時までが就業時間なのか?」という事が曖昧になりがちです。
また、同僚の状態を確認しづらい為、勤務時間外に連絡してしまう事も増えがちです。
そのような事が増えた結果、「業務から完全に離れている時間を確保する事が大切である」という意見が強くなり、「つながらない権利」が以前よりも注目されるようになっているのです。
このように「つながらない権利」を紹介させて頂くと、「つながらない権利が日本でも早く導入されれば良いのに」と思われる方も多い事でしょう。
しかし、この「つながらない権利」が貴方にとって本当にプラスなのかどうかは、良く考えて頂いた方が良いかもしれません。
この権利、必ずしも、全ての人にとって歓迎されるものではないはずなのです。
特に意見が割れそうなのが、「つながらない権利が導入されると、自分の知らない所で、仕事が進んでいく可能性がある」という点についてです。
「つながらない権利」が導入されると、勤務時間外の担当者に連絡を取る事が出来なくなります。
その結果、「担当者がいなくても、仕事が進められるようにするしかない」という動きが加速する可能性が高いのです。
結果、担当者がいない間に何らかの判断が行われたり、重要な進捗があったりする事が多くなるでしょう。
もちろん、そのような事が当たり前に行われる「仕事の進め方」を以前から目指している職場もありますし、それを歓迎する労働者も多くいます。
そのような「仕事の進め方」が合っている場合、「つながらない権利」の導入に問題はないでしょう。
特に、貴方の仕事が、「毎日、決まった作業や与えられた作業を、決まった時間分だけする」というものであれば、勤務時間外に連絡を受けるメリットはないと言っても良いかもしれません。
しかし、近年、そのような仕事は減ってきている、と言われています。
そして、「自分で様々な事を考え、また、様々な人と調整を行いながら進めていく」というスタイルの仕事が増えている、とも言われています。
そのようなスタイルで仕事をしている人の場合、「自分がせっかく頑張って進めてきた仕事を、他の人に勝手に進められるのは嫌だ」、と考える人も少なくないのです。
この「つながらない権利」を単純に賛成できない人がいる理由、少しはお解り頂けたでしょうか。
そして、実は、「自分の知らない所で仕事が進められては困る」という考え方は、「経営に近い立場で働く人」にとっては、当たり前の考え方です。
特に、「自分が関わった仕事の結果」が自分のキャリアや報酬に直結する場合、「重要な事であれば、勤務時間外でも連絡して欲しい」と思うのは当然です。
ですから、貴方にとっての仕事がそのような性格を持っている(または、そのような方向性を目指している)のであれば、「つながらない権利」は合わないかもしれません。
その一方、「ある人がいなくなったら、仕事が進められなくなる」というような事が当たり前の体制にも問題はあると考えられます。
事業継続リスクへの対応や社員の権利保護の為にも、「誰かが休んでも仕事が止まらないようにしておく」という事も大切です。
そのような点を重視するのであれば、「つながらない権利」をきっかけに、担当者に連絡しなくても仕事が進められるようにはしておくべきかもしれません。
「つながらない権利」からは、様々な事を考えさせられます。
貴方は、自分の知らない所で、自分が抱えている仕事が勝手に進められていても気になりませんか?
それとも、自分が抱えている仕事に関する重要な事であれば、勤務時間外であっても連絡が欲しいと思いますか?
今後、様々な立場の人の意見も聞いてみたいと思っています。