ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

新しいトレンド用語「XR(クロスリアリティー)」とは何か

XRとは

経営の分野でもITが関係する部分については、次から次へと新しい用語が出て来ます。

最近だと、「XR」という用語を目にする機会が増えました。

VRやARと関連する用語である事までは推測できているものの、「正確なXRの意味については自信がない…」という人は多いのではないでしょうか。

そこで、今日は、この「XR」や、XRに関係する用語(VR・AR・MR・SR)の意味・違いについて整理してみたいと思います。

また、「誰がXRを流行らせようとしているのか?」という事についても、触れておきたいと思います。

XRを簡単に言うと

XR(クロスリアリティー、X Realityの略)とは、VR・AR・MR・SRといった「現実と仮想世界を繋ぐ技術」の総称です。

一昔前は、VRとARを知っていれば十分だったのですが、昨今は様々な用語が生まれました。

この為、それらを総称する用語が必要になり、生まれた用語であると理解しておけば問題ありません。

なお、XRの最初の一文字を小文字にして「xR」と表記される事もあります(「○R」(○には色々な文字が入る)という意味を強調した書き方ですね)。

XRに関連するAR・VR・MR・SRなどの用語の整理

XRがAR・VR・MR・SRといった用語の総称である事が確認できた所で、関連する用語についても整理しておきましょう。

①VR

昔から有名な用語が、VR(Virtual Reality)でしょう。日本語では、仮想現実と呼ばれます。

ユーザーに「あたかも、違う空間にいるかのような体験をさせること」を目指す技術です。

良くあるのは、ヘッドマウントディスプレイ(VRゴーグルなどとも呼ばれます)を付けると、自分のまわりに「作られた世界」が広がり、現実にいる場所とは違う感覚が味わえる商品・サービスですね。

最近はゲームなどのアミューズメント分野において、普及が急激に進んでいます。

なお、視界だけでなく、聴覚などに訴えかけるデバイスも存在します。

②AR

AR(Augmented Reality)は、日本語では拡張現実と呼ばれます。

現実世界に、「人工的に作成されたコンテンツ情報を追加する(重ねる)」という事を目指す技術です。

専用アプリを使って周囲の風景をスマホの画面に表示させると、「その場所に関係する情報が表示される」といった事例が一般的です。

ビジネスの世界では、「商品をスマホの画面を通してみると、関連する情報が一緒に表示される」といった使われ方が一般的です。

アミューズメントの世界では、「人工的なコンテンツであるペットなどが自分の周りの風景に重なって表示され、一緒にいる気分が楽しめる」といった使われ方がされています。

個別商品としては、ポケモンGOが流行しましたので、あの画面を思い出して頂ければ、ARのイメージは掴んで頂けると思います。

③MR

MR(Mixed Reality)は、日本語では複合現実と呼ばれます。

このMRは、AR以上に「現実に仮想世界の要素を融合させる」という事を目指します。

細かい定義は人によって多少異なりますが、「現実世界に投影された仮想世界の物体に対して、何らかの操作が可能である」といったイメージが基本となります。

「ヘッドマウントディスプレイを付けると、現実の風景に、人工的に作成されたコンテンツが重なって表示され、実際にそのコンテンツを触って操作する事ができる」といった事例を思い浮かべて頂ければ、MRのイメージは理解して頂けると思います。

ARが情報を現実の世界の風景に追加する(重ね合わせる)だけだったのに対して、それ以上の融合を目指している訳ですね。

④SR

SR(Substitutional Reality)は、日本語では代替現実と呼ばれます。

VR・AR・MRとは少し切り口が異なる視点からの用語で、「過去の出来事(仮想の出来事)を、目の前で起きているように見せる」という事を目的としています。

現実を「置き換える」という事で、「代替」現実という言葉が付いているようです。

「過去に起きた事を、今、起きている事のように見せる(実感して貰う)事で、被験者にどのような反応が起きるのかを観察する」といった医学的な研究などの為に使われています。

誰がXRを普及させようとしているのか

最後に「誰がXRを普及させようとしているのか」という点についても触れておきたいと思います。

まず、ゲームなどのアミューズメントの世界では、「ユーザーにリアリティのある仮想世界を体験して貰う」という事は宿願とも言えるものです。

この為、技術の進展と共に、スムーズにXRは導入され続けています。

しかし、それ以外のほとんどの業界では、様々なメリットが想定はされているものの、そこまで強くXR技術を求めている訳ではなさそうです。

しかし、最近、XRの普及に非常に力を入れている業界があります。

それが、「通信キャリア」です。

すなわち、ドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクなどです。


ご存じの通り、通信キャリアの最新の商品は「5G」であり、各社、5Gの為に巨額の設備投資を行っています。

しかし、これまで通りのスマホの使われ方では、5Gのメリットをユーザーに感じて貰い辛いのです。

そこで、5Gを使う「必要性」として「XR」に目を付けているのです。


実際、ソフトバンクは、

5G時代ならではの臨場感溢れる視聴体験を実現するコンテンツ配信サービス「5G LAB」の提供を、2020年3月27日から開始します。(略)4G(LTE)環境でもご利用いただけますが、5G環境でご利用の場合、より快適にお楽しみいただけます。

※「5G LAB」は「AR SQUARE」「VR SQUARE」などARやVRを活用したコンテンツが含まれます。

と、XRのコンテンツを自ら関与して配信し、かつ、「5Gの方がXRのコンテンツがより快適に楽しめる」という事を強調しています。


また、auのKDDIはXRコンテンツの制作支援を目的に「国際XRコンテンツ制作通信事業者アライアンス(Global XR Content Telco Allianc)」を2020年9月1日に設立。

XRの為のハードウェアとして、「NrealLight」という製品も既に発売しています(ARやVRの為の眼鏡型の装置です)。


ドコモも同様に、「Magic Leap 1」というヘッドセット型のXR用の製品を発売し、XRに関するイベントを開いています。

そして、XR技術を活用する為の新会社「株式会社複合現実製作所」も設立。

今年に入ってからは、XR用の撮影スタジオ「docomo XR Studio」まで開設しています。


要するに、各通信キャリアとも、かなり力を入れているのです。

ですから、5Gサービスのスタートと前後して、「XR」という用語を我々が目にする機会が増えたのも当然と言える訳です。

このあたりの事情を頭に入れておくと、情報に振り回される事なく、各自が置かれた状況に応じてXRと付き合っていけるのではないか、と思います。