ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

社会を維持する為にロボットフレンドリーを考える時代が到来!

ロボットフレンドリー

ロボットフレンドリーという言葉をご存じでしょうか。

今後、このロボットフレンドリーへの配慮は、かなり重要になっていくようなのです。

それも、「社会を維持していく上で必要」というレベルにおいて、です。


ロボットフレンドリー(Robot Friendly)という言葉の意味を簡潔に表現すると、「ロボットにとってのバリアフリーについての考え方」となります。

もう少し詳しく説明すると、「『ロボットと一緒にいる人の動き方』や『ロボットが働く施設環境』などを、ロボットが活用しやすいように整備する」という考え方が、ロボットフレンドリーの意味となります。

最初、この用語を耳にした時には、一部の人が、「そういう考え方も大事だよ」という事で、新しい用語を作って広めようとしているのかな、と思っていました。

しかし、調べてみると、どうも、このロボットフレンドリー、既になかなか重要な概念になりつつあるようなのです。


国(経済産業省)は、ロボットを導入しやすい環境(ロボットフレンドリー環境)を実現する為、2019年度に「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース」を設置しています。

そして、2020年度からは、「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」等の予算事業を進めています。

ロボットフレンドリーは、既に国が真剣に推進している対象なのです。

国がタスクフォースを設置して、重点的に支援しているのは、「施設管理」「食品」「小売」「物流倉庫」の4分野。

どの環境も、従来、ロボットが活躍してきた環境と比べ、「人との共存」や「複雑な移動」などが求められる環境と言えます。


では、なぜ、そのような取り組みが必要なのか。

これまでも、産業界では、ロボットの活用が進められてきました。

そして、大幅に生産性を向上させる事に成功してきました。

今や、大量生産する工場内でロボットを使わない事は考えられないほどです。

しかし、実は、一般的な生活空間でロボットが活躍するには、まだ、多くの問題があります。

例えば、現状、ロボット単体では、エレベーターに乗ったり、ドアを開けたりする事すら難しい。

段差や傾斜などの関係で、移動すら難しい事もある。

この為、ロボットが生活空間に溶け込んで活躍するのは、まだ、難しいのです。

そして、そのような問題を抱えたままロボットを活用しようとすると、「ロボットを運用する為に人手がかかる」という矛盾のような状態が発生してしまう事すら懸念される。

この為、ロボットを積極的に生活空間で活用する為に、まず、「ロボットが活躍しやすい環境を整える」という事が求められているのだそうです。

現在、ロボットフレンドリーが注目されているのは、工場内での生産工程のような場所においてではなく、一般的な生活空間でのロボットの活用においてなのです。


では、なぜ、生活空間へのロボットの導入が必要になるのか。

これまでは、ロボットに任せやすい事だけをロボットに任せてきました。

しかし、労働人口の減少などによって、「生活空間において、ロボットにうまく作業を任せていかないと、社会が成り立っていかないかもしれない」という危機感が、関係者の間ではあるようなのです。

そのような前提にたつと、ロボットへの配慮は極めて重要なテーマになる訳です。


なお、ロボットフレンドリーへの取り組みに関しては、既に産業界が主体となって「一般社団法人ロボットフレンドリー施設推進機構(Robot Friendly Asset Promotion Association: RFA)」という法人を設立しています。

この法人では、「ロボットを導入・稼働しやすい環境を整備するための規格やガイドラインを策定し、あらゆるタイプの施設においてロボットの導入を実現するためにロボットフレンドリーな環境の構築を進めて行く活動を行う」そうです(対象は施設管理分野)。

※一般社団法人ロボットフレンドリー施設推進機構のホームページより(https://robot-friendly.org/


ちなみに、ロボットフレンドリーという用語を最初に聞いた時、私は、ルンバブルという言葉を思い出しました。

ルンバブルは、Roomba(お掃除用ロボットの固有名詞)とable(~できるという意味の英単語)という二つの単語を組み合わせたもので、「ロボット掃除機(ルンバ)で掃除しやすい環境(部屋)である」という意味です。

具体的には、以下のような対応を行う事によって、ロボット掃除機(ルンバ)にとって働きやすい環境が部屋に整っている事を意味していました。

・家具の下部に10cm程度の隙間を確保する(ルンバが入れるようにする)

・部屋の中の段差は2cm以内にする(ルンバが乗り越えられる段差の範囲内にする)

・床に物を出来る限り置かない(ルンバが掃除しやすいように)

このルンバブルは、家庭内で掃除作業を行う人手が確保できない、という問題への対応の為に注目された考え方でした。

今回のロボットフレンドリーは、これを更に進めたものだな、と思ったのです。

ルンバブルは、一つの家庭の中の労働力不足を解消する為に、ロボットに活躍して貰う為のアイデアでした。

今度のロボットフレンドリーは、社会全体の労働力不足を解消する為に、ロボットに活躍して貰う為のアイデアだと考えられるからです。


最後に少しだけ、私が感じた違和感を。

ロボットフレンドリーが必要な事は理屈では十分に理解できますし、適切に対応が進んで欲しいとも思います。

しかし、改めて考えると、この動き、過度に進むと、「社会がロボット中心に設計され、それに合わせて人間が生活する」というような事に繋がりそうな気もしてきます。

考えすぎかもしれませんが、あまりにロボットフレンドリーが重視されるような事になるのであれば、それはそれで違和感を感じています。

皆さまは、このロボットフレンドリーについて、どのような感想をお持ちでしょうか。