ビジネスコンサルティングの現場から

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日本発の大型技術革命?NTTが進めるIOWN(アイオン)とは!

IOWN アイオン

NTTグループが進めるIOWN(アイオン)というプロジェクトをご存じでしょうか。

しばらく前から報道されていた為、私自身、気にはなってはいたものの、その重要性は理解できていませんでした。

しかし、最近のリリースを継続して確認する中で、「これは、かなり重要な技術革新に繋がる動きなのではないか」と思えてきたので、ここでもご紹介させて頂きたいと思います。


まず、IOWN(アイオン)の基本について簡単に。

NTTによると、IOWNとは「Innovative Optical and Wireless Networkの」略であり、「アイオン」と読みます。

そして、NTTでは、このIOWN構想について、「光を中心とした革新的技術を活用し、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。」と説明しています。

※NTT「IOWN構想とは?」より。
https://www.rd.ntt/iown/


これだけを読んで、その重要性がピンと来る方は少ないと思います。

私自身、そうでした。

ただ、このIOWNというプロジェクトの参加企業には、Intel、Microsoft、IBM、CISCO、ORACLEなどが含まれており、もしかすると、重要なプロジェクトなのかもしれないな、とは思って注目を続けていたのです。

ちなみに、導入を検討する協創パートナーの名前としては、アマゾン(AWSジャパン)やグーグル(グーグルクラウドジャパン)などの名前も挙がっています。

なかなかのビックネームが並んでいますよね。

※参加には様々なレベル(グループ)がありますので、全企業が同じように参加する訳ではありません。


そして、最近、このIOWNの重要性らしきものが少し見えてきた気がするのです。

まず、IOWNで実現できる事としては、「電気効率100倍」「伝送容量125倍」「遅延200分の1」などと説明されています。

この数字だけでも、IOWNによる性能アップの度合いが凄い事は解ります。

しかし、現状でも、通信にそこまで不満を感じていない身としては、これまで、その凄さがあまり良く解りませんでした。

しかし、IOWNの本質とは、どうも、「機器間の通信の仕組みはもちろん、機器内の情報のやり取りの基本的な仕組みまでを抜本的につくりかえる」という事のようなのです。

このように理解すると、このIOWNが恐ろしく重要な技術に見えてきます。


では、IOWNは、なぜ、通信の仕組みを変えるのか。

電子機器は、他の機器との通信はもちろん、内部でも様々なデータのやり取りをしています。

そして、現在、その大部分は電子ベースで行われています。

IOWNでは、これを、光での伝送に全面的に切り替える、という事のようなのです(オールフォトニクス・ネットワーク)。

では、光での伝送に切り替えると何が良いのか。

伝達速度の向上や遅延の減少といったメリットもありますが、当面、もっとも重要なポイントとなりそうなのは、「省電力(省電力化)」というメリットであると思われます。


ご存じの通り、今、CO2削減という大きな目標の為に、世界中で恐ろしい額のお金が使われようとしています。

しかし、それでも、カーボンニュートラルの実現には、まだまだ課題がある(実現するのが難しい)と言われています。

そのような背景において、IOWNの「省電力化」というキーワードは輝くはずなのです(NTT自身、カーボンニュートラルの観点で意味があるとアピールしています)。

もちろん、携帯電波が5Gへ移行し、高速で遅延のない通信が当たり前になりつつある中で、IOWNの速度や遅延のなさというポイントが注目されていく可能性も十分にある事でしょう。

このように考えると、NTTはなかなか良い所に目をつけたプロジェクトを進めているように思えてきます。

また、このIOWNが携帯や携帯以外といった垣根を越えた技術である事を踏まえると、先日のNTTドコモの完全子会社化も、その為の布石だったのでは?とすら思えてきます。


もっとも、うまくいったとしても、このIOWNがNTTの収益に本格貢献するのは、かなり先の事になります。

IOWNのサービス自体は段階的に始まっていきますが、NTT自身がIOWNのスケジュール感について、「2030年の実現をめざして、研究開発を始めています」と発表しています。

それでも、日本初の技術革新になるかもしれない話だと思うと、最近、通信分野で日本企業に明るい話題が無かっただけに、今から応援したくはなります。


ちなみに、このようなプロジェクトを本格的に進めていく上では、これまでとは全く違う動き方がNTTに求められるようにも思います。

NTTは、このIOWNを本当に成功させていく事が出来るのかどうか。

そして、IOWNの推進を経て、NTTはどのような会社になっていくのか。

そのような観点からも、非常に興味のあるところです。


※この記事では、IOWNの特徴の一つである「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」について重点的に取り上げています。NTTでは、IOWNの構成要素として、他に、「デジタル・ツイン・コンピューティング」と「コグニティブ・ファウンデーション」を挙げています。
https://group.ntt/jp/group/projects/iown.html