ビジネスコンサルティングの現場から

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「生活の豊かさ実感」に関する国内データの比較が興味深い

GDW ウェルビーイング実感

日本国内の「生活の豊かさ実感」に関する興味深いデータを見つけたので、ご紹介させて頂こうと思います。

今日、紹介させて頂くのは、ウェルビーイング実感という指標についてです。

このウェルビーイング実感、ウェルビーイング学会という所が、日本版Well-being Initiativeによるウェルビーイングに関する調査結果(実際の調査はGallup社に委託)のデータをもとに分析して発表しています。

そもそも、ウェルビーイング自体があまりメジャーではない指標だと思いますが、このウェルビーイング、実は、政府も重要視している指標なのです。

内閣府のホームページには、「Well-beingに関する関係省庁連絡会議を設置し、Well-beingに関する取組の推進に向けて、情報共有・連携強化・優良事例の横展開をはかることとしています。 関係府省庁におけるWell-being関連の基本計画等のKPI、取組・予算をとりまとめています。」と記載されています。


ウェルビーイング実感という指標の調査・計算方法は、非常にシンプルです。

まず、調査対象者に以下の質問をします。

・それでは、梯子(ハシゴ)を想像してみてください。その梯子には、一番下は0、一番上には10と数字が付いています。一番上の10があなたにとって最も理想的な生活で、はしごの一番下の段が最悪の生活を表すと考えてください。

Q1:あなたは、今現在、はしごのどの段に立っていると感じていますか?

Q2:あなたの想像では、5年後にはどの段に立っていると思いますか?

そして、今の生活評価(Q1)が7点以上、かつ、5年後の生活評価(Q2)が8点以上の人を、「ウェルビーイング実感が高い」として集計しているのです。

すなわち、「今の生活にある程度満足し、かつ、将来の生活に対して明るい見通しを持っている人の割合」を、「生活の豊かさを実感している人」としてカウントしている訳ですね。


最新(2022/Q3)のデータでは、この「ウェルビーイング実感が高い」と感じている人の割合は27%です。

この数字が高いか低いかは何とも言い難いところですが、興味深いのは、この数字の2010年代は22%-26%であり、最近の数字が、それより高い傾向にある、という事です。

2020年代は新型コロナなどで大変な時代であったと思われますが、それでも、2010年代より高いというのは興味深い結果と言えるのではないでしょうか(もちろん、2010年代も東日本大震災など大変な出来事はあったのですが)。


なお、ウェルビーイング学会では、この「ウェルビーイング実感が高い人の割合」をGDW(Gross Domestic Well-being=国内ウェルビーイング実感)として定期的に公開し、GDP(国内総生産)と比較する事を提案しています。

GDPが「客観的な豊かさを示す指標」であれば、GDWは「主観的な豊かさを示す指標」であるという考え方のようです。

確かに、定期的に発表されれば、両者の推移を見比べる事も出来ますので、なかなか興味深い取り組みと言えるのではないでしょうか。


そして、更に興味深いのは、このGDWについては、国内比較(都道府県別)データも公開されているという事です。

早速、「ウェルビーイング実感が高い」人の割合の都道府県別ランキングをご紹介しましょう(ウェルビーイング実感が高い順)。


神奈川 30.7
東京都 29.4
兵庫 28.3
大阪 27.7
福岡 27.6
千葉 26.7
奈良 26.7
沖縄 26.5
埼玉 26.5
広島 26.2
佐賀 26.1
京都 26.0
愛知 26.0
宮城 25.8
香川 25.5
滋賀 25.4
熊本 25.4
徳島 25.3
岡山 25.2
北海道 25.2
茨城 25.1
三重 25.1
長野 25.0
岩手 25.0
石川 24.9
新潟 24.9
鳥取 24.9
富山 24.9
福井 24.9
群馬 24.7
大分 24.7
長崎 24.6
栃木 24.6
青森 24.6
島根 24.6
高知 24.5
山梨 24.5
愛媛 24.5
宮崎 24.5
山口 24.4
岐阜 24.3
鹿児島 24.2
静岡 24.1
和歌山 23.9
山形 23.8
秋田 23.6
福島 23.2

※対象期間は2022/Q2。単位は%。


都心部が上位ランクインしている傾向はあるように思いますが、細かく見ると、なかなか興味深いように思います(同じ首都圏でも少し順位を落としている都道府県がある、また、隣接県でも大きく順位が異なるところがある、など)。


ちなみに、「生活の豊かさ」に関係する調査としては、実は、国連による幸せ調査があります(国別比較)。

しかし、この調査については、あまり参考にならないと考えている人も多いのです。

なぜならば、この調査、アンケートへの回答で国別ランキング資料が作成されているのですが、国民性によって、アンケート結果は大きく影響を受けてしまう事が予想されるからです。

例えば、「貴方は幸せですか?」と聞かれて、素直に「はい」と答える人が多い国と、遠慮して回答してしまう国がありそうな事は、すぐに予想が出来ます(ちなみに、日本の順位はかなり低いです)。

しかし、日本国内の調査であれば、そのような差はそこまで大きくない事でしょう。

ですので、ウェルビーイング実感に関するデータでは、単純に「その時に、どのくらいの人が豊かさを実感しているか」や「どの地域が、豊かさを実感しているか」という事を把握できそうです。


最後に、同発表では、今の生活評価(Q1)が4点以下、かつ、5年後の生活評価(Q2)が4点以下を「ウェルビーイング実感が低い」として、別途、集計しています。

その「ウェルビーイング実感が低い」と集計された人の割合は、全国で12%。

そして、ウェルビーイング実感が低い人の割合が高い都道府県別ランキングも公開されています。

ウェルビーイング実感が低い人が多い都道府県を10位まで挙げておくと(ワースト10位)、以下のようなランキングとなります。


青森 13.6
秋田 13.6
長崎 13.4
山形 13.0
福島 1.9
岩手 12.9
高知 12.9
新潟 12.7
和歌山 12.6
徳島 12.6

※対象期間は2022/Q2。単位は%。


少し、「ウェルビーイング実感が高い」人の割合のランキングの下位とは異なる結果とはなっています。

ただ、「ウェルビーイング実感が高い」人の割合のランキングの最下位であった福島は、こちらのワーストでもランクインしています。

理由までは解りませんが、恐らく、原発問題が大きな影響を与えているのでしょう。

近いうちに、福島の同数字が改善する事を願って、このエントリを終わりにしたいと思います。


※GDWについては、以下のURLから確認して頂く事が可能です。
https://society-of-wellbeing.jp/