ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

2022年は「リタイアの常識が変わり始めた年」として記憶されるかも

早期リタイア

2022年も、もうすぐ終わりです。

そこで、「2022年は、どのような年として、後年から思い出されるのだろうか?」という事を考えてみました。

2022年も様々な変化がありましたが、将来からの視点で考えてみると、

リタイアの常識が変わり始めた年

という変化が、一番大きいように思います。


リタイアというのは、仕事を辞めて引退する、あのリタイアです。

では、リタイアに関する常識の、何が変わり始めているのか。

簡単に言ってしまえば、「とにかく定年まで働ければ、リタイア後の生活が待っている」という、これまで多くの人が当たり前に思っていた事が、当たり前ではなくなりつつある、という変化がおきているのです。


以前から、「年金不安」と呼ばれるような、「年金が本当に貰えるのだろうか」といった不安については、取り上げられる事はありました。

また、年功序列の崩壊に伴い、中年期以降のキャリア不安も、多くの人が感じてきました。

しかし、2022年に明らかになった動きは、これらの動きとは一線を画するものです。


まず、「リタイアする為に、いつまで働けば良いのか」という「年齢」に関する常識が変わりつつあります

これまでは、「早ければ60歳、遅くとも65歳頃まで働けば十分にリタイアできる」という暗黙の了解があったように思います。

これは、「勤務先の定年が、リタイアの時期である」という前提があったからです。

しかし、その前提は崩れつつあります。

実は、2022年は、政府が副業を許可するように積極的に動いた年でした。

そして、実際に、副業は急速に普及しました。

その結果、「今の勤務先での勤務が終わった後でも、収入は得られる」という考え方が当たり前になりつつあり、「勤務先の定年」と「リタイアの時期」はリンクしなくなってきているのです。

※2022年に厚生労働省は指針を改定し、すべての企業に副業を認めるように促しました(副業を制限する場合には、その理由を含めて開示するよう要請)。


この変化は、年金制度にも影響を与える可能性があります。

例えば、年金の受給開始の年齢が更に繰り下がるのではないか、という予想があります。

決まった事は未だ何もありませんが、これは、十分にあり得る事です。

以前、厚生年金の受給は60歳からでした。

それが、今は65歳からです(繰り上げをしない場合の厚生年金の受給開始年齢)。

既に一度繰り下がっているのですから、長寿化(や、年金財政の悪化)に伴い、更に繰り下がっても不思議ではないのです。

ただ、これまでは、そのような事をすると、「定年から年金受給開始までの期間を、どうやって生活するのか?」という問題がありました。

しかし、定年後の収入が当然となると、このような点はあまり問題にはならなくなります。

この為、「年金の受給開始を定年に揃えなくても良い」という流れは、今後、更に本格化する事でしょう。


そもそも、企業に対しては、既に、「従業員の70歳までの収入確保に務める義務」が負わされています(以前は65歳までの雇用義務だったのですが、近年、追加されました)。

ですから、「65歳までに定年が来て、収入がなくなる」という前提は、既に外されつつあるのです。

※企業にとっては努力義務ですので、政府のスタンスとしては「企業に70歳までの収入を要請している」という事になりますが、企業が実際に70歳までの収入を保証してくれるとは限りません。


また、2022年には、年金の繰り下げが75歳まで出来る事になりました。

もちろん、現在は、そこまで繰り下げせずに受け取り始める事も可能です。

しかし、現実的には、繰り下げをしないとリタイア後の生活費が年金でまかなえない人も多いのです。

その方々にとっては、「60歳や65歳ではリタイアできない」という状況が、既に発生しているのです。


そして、2022年には、物価上昇という大きな動きもありました。

この物価上昇の結果、生活に必要な費用が大幅に上昇しており、生活が苦しくなっている年金受給者の方は多くいらっしゃいます

それを身近で見ている現役世代が「年金で生活していけるのだろうか」という不安を持ち始めるのは当然と言えるでしょう。

この点も、多くの人が老後の生活を考え直すきっかけとなっています。


これらの様々な要因から、冒頭で挙げたような、

「定年まで勤務先で働いても、リタイアできないかもしれない」

と考え始める人が増えているのです。

そして、その不安は間違いではありません。

実際に老後の生活のプランニングをさせて頂いていても、「今の勤務先の定年まで働き続ければ、問題なくリタイアできる」という人の割合は減ってきている実感があります。


この為、今後、急速に、

「リタイアする時期は、今の勤務先の定年とは関係なく、自分で決める」

「リタイアする為には、自分で準備する必要がある(準備しない限り、リタイアは出来ない)」

という考え方が普及していくように思います。

そして、自分がイメージする「定年年齢」でリタイアする為に、準備を始める人は増える事でしょう。

すなわち、「早期リタイア」の為の準備を具体的に考える人が急速に増えると予想されるのです。

※60歳や65歳(場合によっては、70歳や75歳)でのリタイアを「早期リタイア」と呼ぶ事には違和感がありますが、現在、それよりも良い言葉がないので、「リタイアの為の準備」は、「早期リタイアの準備」と呼ばれています。


なお、政府が、今、強くアピールしている「貯蓄から投資へ」についても、結局は、「自分でリタイアする為の準備をして下さい」という事を言っている面があります。


ですから、現役世代の皆さまには、「時代は変わった」と考え、改めて、ご自身のリタイアについて考える事をお勧めします。

特に、なんとなく、「自分は60歳か65歳頃まで働いて、老後の引退生活を送るのだろうな」と認識されている現役世代の皆さまは、ぜひ、年末年始の時間を使って、ご自身のリタイアについて考えてみて下さい。

「考えるのが面倒」とお感じになる方もいらっしゃるとは思いますが、リタイアを考える事は、リタイア後の楽しい生活について考える事でもあります。

ですから、後ろ向きではなく、ぜひ、前向きな検討として、取り組んでみて下さい。


さて、年内ブログ投稿は、このエントリで終了となります。皆さまも良いお年を。


※リタイアについて検討される場合には、無料で相談できるサービスもありますので、そういったサービスの利用もお勧めします:早期リタイア相談センター(当社が運営に関わっているサービスですが、支援経験豊富なFPの協力を得て、リタイアの準備についての支援を無料で提供しています)。