ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

令和4年度税制改正を分析!個人が知っておくべき変化の方向性は?

令和4年度税制改正

今日は、令和4年度の税制改正の内容を分析した結果を踏まえ、

「令和4年度の税制改正の内容で、個人の方も知っておいた方が良い」

と思われるポイントをご紹介します。

今年はあまり大きな注目ポイントがなく、住宅ローンの制度変更が目立つくらいなのですが、こういう時こそ、今後に繋がる大きな変化が隠されている、と考える専門家もいます。

そこで、細かい税制の変更ではなく、主に、「変化の方向性」にフォーカスし、ご紹介させて頂こうと思います。

※上記は、主に、「令和4年度税制改正の大綱」として発表されている内容を独自に分析したものです。分析結果が間違っている可能性もありますし、今後、制度が変更となる可能性もあります。情報の利用については、自己責任でお願いします。なお、令和4年度税制改正の大綱については、以下のURLから確認して頂けます。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/index.htm

沖縄のお酒への税制優遇措置の撤廃

沖縄県産の酒類に係る酒税の軽減が撤廃される方向となりました(最長10年をかけて段階的に廃止)。これは、沖縄の復帰に伴う激変緩和措置として設けられた制度ですので、当然とも言えるのですが、今後、価格は上がっていく事になるでしょう。

沖縄のお酒がお好きな方は、値段が上がる前に購入された方が良いかもしれません(特に、値段が高く、長期保存できるお酒がお好きな方は)。

配当に関する節税封じ

細かいテクニックの話になりますが、これまでは、所得税(国税)と地方住民税(地方税)で違う方式を申請する事で、配当に関する税金を減らす事が可能でした。

このテクニックが封じられる事になりましたので、今後、手取りの配当額が減る事になる方もいらっしゃるかもしれません。お気を付け下さい。

住宅取得に関する環境性能重視

住宅取得については、これまで同様、様々な税制優遇が用意される方向なのですが、大きな流れとして、「優遇は、環境性能(省エネ性能等)が高いものに限る」という流れがあります。

今後も、この流れは続く可能性があり、もし、環境性能が高くない住宅を取得する予定がある場合には、かなり急いで取得された方が良いかもしれません(今は当たり前のように受けられている税制優遇が受けられなくなったりするかもしれません)。

中古住宅の流通促進

中古住宅の売買については、従来よりも、より税制優遇が受けやすい方向で変更になる予定です。中古住宅の市場がより活発化する可能性もある為、空き屋をお持ちの方などは、今後、売却を積極的に検討されても良いかもしれません。

なお、空き屋を保有していながら放置している場合については、より厳しい対応が行われていく予定です。

環境性能改善の為の住宅改修促進

環境性能を改善するような住宅改修については、従来よりも要件が緩和される傾向があるように思われます。光熱費が高止まりする昨今、税制優遇を受けて住宅改修する事を検討されても良いかもしれません。

ちなみに、バリアフリーに関する住宅改修にも、税制優遇があります。

所得が高い方への優遇措置撤廃

所得が高い人は税制優遇が受けられない方向に向かっています。

既に制限がかかり始めていますが、今後も続く可能性があるように思います。所得が高い方で、住宅取得関係などの大きな税制優遇を受ける予定のある方は、急いだ方が良いかもしれません。

求められる帳簿水準の向上

事業に関する所得がある方限定の話となりますが、帳簿の水準向上が求められる方向性があります。

一般的な法人と同様の記帳(会計ソフトを使った複式簿記)を行っている事業者は問題ないと思われますが、未だ「複式簿記すら導入できていない」という場合には、注意した方が良い動きと言えます。

また、電子化を求める動きにも強いものがあります。既に発表されている通り、証憑(領収書など)の紙保存が一部認められなくなったり、税務署とのやり取りを更に電子化する動きがあります。そういった流れに対応出来ていない方は、今から準備を始めておいた方が良いでしょう。

所得税の各種控除見直し

働き方によって受けられる税制優遇が異なる現状は、今後も、見直しが行われる予定です。税制優遇があるから、「配偶者は、○○という働き方が良い」などと判断されている方は、今後、その前提は変更になるかもしれない、と理解しておかれる事をお勧めします。

生前贈与の難易度アップ

生前贈与した分を相続税の対象から外すのが難しくなる方向に改正が行われています。

今後も贈与税に関する見直しが検討される予定となっていますので、相続税逃れは更に難しくなっていくかもしれません。

インボイス制度

予定通りではありますが、インボイス制度が導入される予定です。

インボイス制度に対応できない個人事業主は収入が減少する可能性があります(緩和措置は導入されていますが、取引の打ち切りなどの影響は出る事でしょう)。また、免税事業者の方が課税事業者になる事で、収入が減る方もいらっしゃる事と思います(これも緩和措置はありますが、益税がなくなる事による影響)。

(おまけ)税理士資格の受験要件緩和

税理士試験を受ける為の要件が緩和される予定です。税理士を目指しやすくなる見込みですので、もし、受験要件で税理士を諦めている方がいらっしゃれば、確認してみて下さい。