ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

使い捨て容器の廃止は地球に厳しい?CO2増加に繋がる可能性も!

使い捨て容器 廃止 禁止 デメリット 問題点

環境問題を意識する人が増えているようです。

それ自体は非常に良い事だと思いますが、

「何が地球に優しいのか(何をすれば地球環境にとって良いことなのか)」

という判断は、意外と難しいように思います。

今日は、「飲食店の使い捨て容器を廃止(禁止)すべきかどうか」という点についての議論から、この問題の難しさについて取り上げてみようと思います。


ある時、学生と環境問題について話す機会がありました。

学生「飲食店の使い捨て容器は、地球に優しくありません。」

私「イートインでも使い捨て容器を使っている店は、意外と多いですね。」

学生「イートインでもテイクアウトでも、飲食店での使い捨て容器の使用を全面禁止すべきです。」

私「なぜ、そう思うのですか?」

学生「海外では、既に、そういう動きがあります。」

私「確かに、フランスを中心に、そういう動きはありますね。しかし、なぜ、日本でも、その動きを取り入れるべきなのでしょうか?」

学生「使い捨て容器は地球環境に良くないからです。」

私「もう少し具体的に。」

学生「使い捨て容器を止めれば、ゴミが減らせる事に間違いはないでしょう?」

私「確かに、そういう面はありますね。」

学生「飲食店にとって手間は増えるかもしれませんが、環境に良い事にはできる限り取り組むべきです。」

私「一番大事な事は、ゴミを減らす事ですか?」

学生「商売上の理由よりも、環境問題を優先すべきだと考えます。」

私「少し議論がズレてしまっている気がします。」

学生「?」

私「商売上の理由を抜きにしたとしても、環境問題全般について意識するのであれば、もう少し、深く考えてみても良いかもしれませんよ。」


さて、皆さまは、なぜ、この時、私が素直に使い捨て容器を廃止する事に賛同しなかったのか、お解りでしょうか。

もちろん、「経営(業務)効率」や「コスト」といった面での問題もあるのですが、実は、環境問題の観点だけで検討しても、「使い捨て容器を廃止すれば良い」とは単純に言えない可能性があるのです。


続けて、私は、このように語りかけました。

私「では、貴方は、『ゴミ削減』と『CO2削減』なら、どちらを環境問題において重要視しますか?」

学生「両方、大事ですよ。」

私「私もそう思います。しかし、強いて、どちらかと言えば?」

学生「選べません。」

私「なるほど。では、少なくとも、『CO2削減も重要である』という点には同意して貰えるのですね?」

学生「はい。」

私「では、やはり、使い捨て容器の廃止については、もう少し慎重に考えた方が良いかもしれません。」

学生「?」

私「使い捨て容器を廃止する事で、確かに、ゴミとして廃棄される容器の量は減らせる可能性があります。しかし、使い捨て容器を廃止して、再利用できる食器に切り替えると、排出されるCO2は増える可能性がある、というデータもあるのですよ。」

学生「!」


嘘ではありません。

使い捨て容器の廃止については、ヨーロッパの方が進んでいます。

そして、そのヨーロッパにおいて、欧州紙製容器包装連盟(EPPA)は、「再利用できる食器類は洗浄・乾燥する必要がある為、使い捨ての紙容器を使った場合と比べ、CO2排出量が177%も増える」というデータを発表しています(ちなみに、水は267%増)。

また、同連盟は、使い捨て紙食器は、持続可能な方法で管理された森林から供給されており、リサイクル比率も高い、という事を強調しています。

※ヨーロッパのクイックサービスレストランでの利用を想定したRamboll社によるライフサイクルアセスメント分析結果。
https://www.eppa-eu.org/general/press-release-european-paper-packaging-alliance-12-january-2021.html


もちろん、このデータは業界団体が発表しているデータですから、その点を差し引いて考えるべきかもしれません。

また、この数字は、あくまで、使い捨て容器のうち、紙の使い捨て容器に関してのデータのみです。

しかし、少なくとも、「使い捨て容器の方が、CO2排出量が少ない(可能性がある)」という指摘を無視する訳にはいきません。

もし、「使い捨て容器を廃止する」というような大きな方針を定めるのであれば、その反証については、しっかりと確認した上で行うべきです。

環境問題を意識する事は大切ですが、本当に環境に良い方針を定める難易度はかなり高いように思います。