ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

なぜ再開発された街はつまらないのか?

再開発 つまらない

ある日、再開発の終わった街に出掛けました。

元々あった古い町並みは綺麗になくなり、巨大なビルが建っていました。

建物は綺麗ですが、正直、そのビルに今後も通いたいとは思えませんでした。


ちょうど、同行者が、

再開発で、なんか、つまらない街になっちゃいましたね」

と、私の感想を代弁するような台詞を言ってくれました。

そして、

再開発すると、街って、つまらなくなるんですかね?」

と聞いてきました。


確かに、再開発に関わる機会のある方は少ないかもしれません。

そして、メディアは、再開発を好意的に紹介する事が多いように思います。

ですから、再開発が抱える「負(マイナス)」の部分を直視した事がある人は、意外と少ないのかもしれません。

せっかくなので、その場で話した内容を、ここでもご紹介したいと思います。


再開発で街がつまらなくなる理由はいくつもありますが、その中でも、現在の日本の再開発では避けては通れない点がいくつかかあるように思います。

再開発でつまらなくなる理由①:大手企業のチェーン店が増える

日本の再開発の多くは、担当する企業がお金を出して行います。

この為、「いかに、投資を回収するか」という理屈が入って来る事になります。

そして、その理屈からは、「高い保証金・高い賃料を払ってくれる店を、再開発後のテナントとして入れたい」という発想に繋がります。

結果、再開発が終わったエリアでは、「他の場所でも、良く見かける店」の看板が目立つ事になってしまうのです。

そして、こうした店の存在は、その街の特色を消す事に繋がってしまいます。

「どこにでもある店」は、入る店を探している客にとっては安心感がありますが、やはり、「その街にしかない」という魅力には繋がりませんので。

再開発でつまらなくなる理由②:街の風景から特徴が消える

理由①とも関係しますが、再開発をしても、土地の広さは変わりません(むしろ、使える土地は狭くなる事も少なくありません)。

その中で、従来よりも効率良く稼ぐ為には、「建物を高くする」という発想に繋がります。

当然、階数を増やせば、同じ土地の広さでも、多くの床面積を確保出来るようになりますので。

従来は1~3階くらいまでの建物しかなかった所に、背の高いビルを建てたりするのが代表例ですね。

そこまでいかなくても、ショッピングモールのような大きな建物がドンと作られてしまう。

これが、「街の特徴を無くす」という事に繋がってしまうのです。

各社、様々な工夫はしていますが、他と同じような街の風景になってしまう事は避けられません。

結果、「便利な施設」は出来ますが、「魅力的な街」を維持する事は難しいのです。

再開発でつまらなくなる理由③:店同士の関係が変わる

再開発の前からある店が残ったとしても、これまでのような「店同士の関係」まで維持できるとは限りません。

まず、テナントとして再開発後の施設に入った場合には、「大家とテナントの関係」が生まれてしまいます。

結果、「自分達が頑張って、この街を盛り上げていかなければ」という、古い街の魅力を作ってきた意識が消えてしまう事が多いのです。

そして、理由①と関係しますが、同一施設内に大手企業の店舗が増えると、そもそも、店同士の連携は難しくなると言います。

やはり、「個人店」と「企業の一店舗」では考え方が大きく違いますし、同じような目線で連携していくのは難しいようです。

結局、「どこにでもあるテナントビル」に近づいていってしまうようです。

再開発でつまらなくなる理由④:道の幅が広くなる

最後に、多くの方に「確かに!」と思って頂けるかもしれない理由も紹介しておきます。

それが、「道の幅」の問題です。

実は、街の雰囲気において、「道の幅」は大きな意味を持ちます。

あまり綺麗に整理されすぎていない場所の方が、「その街独特の雰囲気が残っている」と感じる人は多いようです。

特に、昭和の雰囲気が好きな方にとっては、「細い路地の周囲に小さな店がある風景」こそが大事であったりもします。

広い道は便利ですが、やはり、ちょっと雰囲気が変わってしまいますよね。

しかし、再開発をすると、その「狭い道」を維持する事が困難になります。

いわゆる、「防災上の理由」というやつですね。

確かに、消防の観点からすると、「木造家屋が建ち並ぶ中に、細い路地」というのは最悪なのでしょう。すぐ延焼してしまうでしょうからね。

しかし、その「店と店の絶妙な距離」こそ、これまでの、その街の魅力を形作ってきた要因であった、というケースも少なくないように思います。

そこまで解りやすい例でなくても、道が広がり、綺麗な緑地が出来たりする事で、その街の特徴を形作ってきた要素が消えてしまう事は良くあります。


さて、ここまで4つの理由を見てきました。

もうお気づきかもしれませんが、これらの理由の背景には、「①再開発での収益計算」「②防災上の理由」という2つの事情があります。

これらは一見、「当然に配慮すべきこと」であるようにも思います。

その一方、もし、長い時間をかけて作られてきた「街の魅力」を壊しているのだとすれば、非常に怖い事であるようにも思います。

東京でも地方でも、未だ再開発が進むエリアは多くあります。

その再開発を続けて良いのか。

そろそろ、しっかりと考え直す時期に来ているようにも思います。

今、やっている再開発は、これから50年後、100年後、もっと後の人達から、「あの時、再開発してくれて良かった」と言われるような再開発になっているのかどうか。

くれぐれも、「昔は、この街にも特徴があったらしいね」などと言われるような事が無いと良いのですが。

皆さまは、相次ぐ再開発、肯定派ですか?否定派ですか?