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今後はスマホでの衛星通信が当たり前に?日米で計画が急速に進展中!

スマホ 衛星通信

2022年に発表されたiPhoneの新機能の中では、衛星通信への対応が注目されているようです。

しかし、スマホの衛星通信については、もっと凄いサービスの準備が日米で進んでいます。

今日は、この話題について取り上げたいと思います。


最初に、iPhoneの新機能である衛星通信について、簡単にご紹介しておきましょう。

2022年に発売されたiPhone14では、スマホで直接、人工衛星と通信する事が出来ます。

これまでは、衛星との通信には、専用の機材が必要でした。

しかし、今回の衛星通信サービスでは、スマホ本体だけで衛星と通信する事が可能なのです。

この為、対応機種を持っている人であれば、誰でも衛星通信を利用する事が可能になりました(ただし、日本では、未だサービスは開始されていません)。

ただし、今回のサービスでは、送れる情報量が少ないらしく、定型化されたメッセージを送ってSOSを公的機関に届ける以外の目的では利用が出来ない仕組みとなっています。

それでも、基地局からの電波が届かない場所からでもSOSメッセージが送れるメリットは大きいと言えるでしょう(その他、スマホの場所を探す事も出来るようです)。

ちなみに、アップル社は米グローバルスター社の衛星を利用して、このサービスを実現させているようです(アップル社はグローバルスター社に出資も行ったと報道されています)。


しかし、このスマホを使った衛星通信、今後、更に凄い事になる予定なのです。


例えば、米T-Mobile社は、SpaceX社の衛星インターネットサービスであるStarlinkへのスマホ接続を可能とするサービスを発表しています。

具体的には、SpaceX社が2023年に打ち上げる第2世代のStarlink衛星を利用し、最初はテキストメッセージのみに対応。その後、音声とデータにも対応していく計画が発表されています。

もちろん、T-Mobileの加入者は、普通のスマホだけで、このStarlinkのネットワーク利用が可能になる予定です。

この発表からは、普通のスマホ利用に近いイメージで衛星通信が出来る時代が近づいている事が解ります。

ちなみに、SpaceX社は、あのテスラの運営でも有名なイーロン・マスク氏が運営する会社の一つです。そして、SpaceX社の衛星通信サービスは、ウクライナでも利用された事で有名になりました。


そして、日本でも、楽天モバイルが米AST SpaceMobile(AST)社に出資し、衛星通信のプロジェクトに取り組んでいると発表しています。

楽天モバイルは、このプロジェクトについて、「低軌道衛星を使って宇宙から送信するモバイルブロードバンドネットワークを構築し、地球上におけるモバイル通信サービスの提供エリアを拡大する」と発表しています。

ご存じの通り、日本では楽天モバイルは後発であり、未だ、電波状況についての課題が残っています。

しかし、もし、通常のスマホ通信に近いサービスを衛星通信で実現させる事が出来たなら、楽天モバイルは、一気に、全国をカバーエリアとする(電波圏外のエリアをなくす)事に成功します。

楽天モバイルにとっては、大きな一手となる事でしょう。

衛星通信のコストは解りませんが、後発の楽天にとっては、今後の基地局の拡充・運用コストも相当なものになる事でしょう。

ですから、人口密集地以外で基地局を増やす事を考えれば、衛星通信のコストは、十分に割に合うのかもしれません。


なお、iPhoneのiOSで衛星通信が可能になったのは前述の通りですが、Googleも、次バージョンのAndroidでは衛星通信をサポートすると発表しています。


このように、「スマホでの衛星通信」は、非常に早いペースで準備が進められており、現実のものになりつつあるのです。


最後に一点、ビジネスへの影響について触れて、この記事を終わりにしたいと思います。

携帯電話事業にとって、このスマホの衛星通信という技術は、事業環境を一変させる可能性のあるトピックスです(いわゆる、ブレイクスルー)。

これまで、携帯電話事業というのは、こまめに基地局を設置し、そこからの通信で収益を上げるものでした。

この為、高い参入障壁があり、最初は大変ですが、一度、事業基盤を築いてしまえば、美味しい商売だったのです。

しかし、衛星通信による一般的な電話通信サービスが可能となると、状況は一変します。

なにせ、基地局を全く持たない会社が、(少なくとも技術的には)全国をカバーする携帯電話事業をすぐに始められるようになる訳ですから。

そして、それは国内だけに限りません。

これまでは国単位で高い参入障壁がありましたが、衛星と通信してサービスを提供するのであれば、技術的には、国境による障壁は非常に低くなります。

世界中を対象とした通信事業を始める難易度は、一気に下がる事でしょう。

結果、世界単位で、携帯電話会社の再編といった動きに繋がっていくかもしれません。

日本の携帯電話各社には、ぜひ、この動きを軽視せず、しっかりと対応していって頂きたい所です。

もちろん、既に動き出している楽天モバイルが、この流れをうまく活用して成功できるのか?という点についても、要注目だと思っています。

※SpaceX社は、日本で個人向け衛星通信サービス「レジデンシャル」を開始しました。ただし、専用アンテナが必要なサービスとなります。(2022/12/24追記)

※KDDIが、Starlinkを利用したサービスの提供を開始しました。ただし、このサービスはStarlinkをバックホール回線として利用するものです(基地局と基幹通信網の間の接続に利用)。一般向けサービスに関係する部分としては、既に初島(静岡)での基地局開設が行われた模様です(他に、法人企業や自治体向けのサービスを開始した事が発表されています)。(2022/12/24追記)

※エリクソン社は、2023年にスマホによる衛星通信の試験を始め、2025~2026年には衛星と直接通信して動画などが見られるサービスの開始を目指す事を発表しました。(2023/1/30追記)