「静かな退職」という用語をご存じでしょうか。
日本では、あまり馴染みのない用語だと思いますが、今、この「静かな退職(Quiet Quitting)」を選ぶ人が増えているようなのです。
静かな退職というのは、会社を辞める訳ではない。かといって、熱心に仕事をしている訳でもない。必要最低限の業務はこなすが、仕事への熱意は低い。そんな人を指す用語です。
米ギャラップ社の2022年6月の調査によると、アメリカでは、約50%の社員が、この「静かな退職」を選んでいる、との事です。
特に35才以下で増えているようです。
そして、日本でも、この「静かな退職」を選ぶ人は、以前から多いようです。
例えば、同じく米ギャラップ社の2017年調査では、「日本では、熱意あふれる社員の割合は6%に過ぎない」という結果が出ており、これは、調査対象139カ国中132位です(なお、同調査の2022年版では、その割合は5%で調査対象129カ国中128位であり、更に悪化しているように見えます)。
ですから、世界的にみても、日本では「熱心に仕事をしない人の割合が多い」ようです。すなわち、「静かな退職」を選んでいる人の割合が多いという事になりそうなのです。
※ギャラップ社の調査結果は、以下のURLから確認して頂けます(2022年度版)。
https://www.gallup.com/workplace/349484/state-of-the-global-workplace-2022-report.aspx
では、私たちは、この「静かな退職」を解決すべき問題として捉えるべきなのでしょうか。
昔ながらの価値観でいえば、解決すべき問題として捉えるべきかもしれません。
しかし、昨今は、価値観が多様化し、また、終身雇用制度も崩れています。
そのような変化が起きた結果、「今、勤めている会社の中での成功」と「自分の人生の成功」がイコールとは言いづらい状況があります。
ですから、少なくとも、「静かな退職を選んでいる」という事が、各個人にとって問題であるとは言えないように思います。
ただし、気になるのは、「静かな退職」を選んでいる人が、「仕事以外に何か熱心に取り組めるものを見つけられているのか」という点です。
今の会社の仕事に意欲が持てない人には、3つのパターンがあると考えられます。
①仕事以外に熱心に取り組めるものが見つかっているパターン(趣味や仕事以外の社会貢献活動など)
②今の仕事以外で熱心に取り組みたい仕事が見つかっているパターン(今は、やりたい仕事に就けていないが、将来、やりたい仕事が見つかっている)
③熱心に取り組みたいものが全く見つかっていないパターン
①や②の場合は問題ないでしょう。
①であれば、今の職場では「静かな退職」をしながら、社外活動に精を出せば、充実した人生が送れる事でしょう。
②の場合も、今の職場では「静かな退職」をしながら、望む仕事が出来るように準備をして、いつか、望む仕事が出来る環境が手に入れば、問題ないでしょう。
問題は③のパターンです。
もちろん、何も活動をしなくても、将来、「仕事以外で熱心に取り組みたい事」や「熱心に取り組みたい仕事」が見つかる可能性はあります。
その結果、①や②のパターンに移行できる可能性はあるのですが、単に、「何もやる気がない」という状態を長く続ける事は、精神衛生上も、あまりお勧めできるものではありません。
しかし、様々な方の話を伺っていると、この③のパターンに該当する人というのは、意外と多いようで、実は、この③のパターンの方に対するアドバイスを、これまで何回か求められてきました。
毎回、悩みながらアドバイスをしてきたのですが、今回、一つ、対象者の方に刺さった回答があったので、最後に、その内容をご紹介させて頂きたいと思います。
それは、
「いっそのこと、早期リタイア(アーリーリタイア)を目指してみてはどうか」
というアドバイスでした。
今の仕事にやりがいは感じられない、そして、仕事以外の目的の為にお金を稼ぎたいという意欲もない。
そういった方は、「仕事を長く続けたい」という意欲も無い事が多いようです。
であれば、その気持ちを正面から受け止めて、「早めに仕事をやめる」という事を、当面の目標にしてはどうか?という提案をしてみたのです。
このブログをお読みの方の中には、「そんなふざけた目標があるか」とご立腹の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、仕事だけが人生ではありません。
そして、今、定年を迎えた方の中で、老後、何を生きがいにして生きていこうかという事で悩まれたり、定年後の人生の送り方で悩まれている方も少なくありません。
であれば、もっと体が元気なうちに仕事をリタイアし、その後の事をゆっくり考えてみるのも前向きな選択だと思うのです。
案外、「仕事をしなくて良いよ」という状態になってみると、「○○を生きがいに、自分は残りの人生を送っていきたい」というものが見つかるかもしれません。
ベーシックインカム制度によって働かなくても良くなった場合でも、人々の生産性は落ちなかった、という分析結果があるくらいですから。
そして、何も目標がない人生よりは、早期リタイアという目標があった方が、毎日の生活にもハリが出るというものです。
今後も日本で「静かな退職」が減らない場合、「早期リタイアに向けた準備活動」は大きなトレンドになる可能性があるのではないか、と思ったりもしています。
※早期リタイア(アーリーリタイア)は、多くの方にとって実現可能な目標です。ただし、その為には、しっかりとした準備プランの立案(と実行)が必要です。また、様々な環境変化により、以前よりも準備の難易度は上がりました。早期リタイアを目指される場合には、十分にお気を付け下さい。なお、準備に必要な知識が不足している場合には、専門家への相談もご検討下さい(当社が運営に関わっている早期リタイア相談センターでも相談をお受けしています)。