ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

「好業績の企業は給与を上げるべき」に隠された問題点

企業業績と従業員給与の関係 企業業績と従業員への還元の関係

皆さまは、

高収益の企業は、従業員の給与を上げるべきだ

莫大な利益を、従業員に還元しない企業はおかしい

といった発言をお聞きになった場合、どのようにお感じになるでしょうか。

あまり深く考えずに、そのような発言を聞くと、「その通り!」と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。

しかし、数十年前ならいざ知らず、昨今の日本企業を分析している中では、

発表されている利益が莫大な額であっても、給与を上げると問題が出そう

と感じる事は多くあります。

しかし、この事はあまり認知されていないようですし、また、「あるべき姿」を考えると難しい点があります。

この為、今日は、

『日本企業の収益』と『国内従業員の給与』を連動して考えてはいけない理由

について、取り上げさせて頂こうと思います。


「日本企業の収益」と「国内従業員の給与」を素直に連動させるべきではない理由はシンプルです。

以前の日本企業であれば、収益は、「国内の法人による、国内従業員による努力の結果」でした。

ですから、「収益が上がった場合、その国内従業員に還元する」という関係に問題はなかったのです。

しかし、昨今の日本企業は海外展開が進みました。

そして、連結決算が増えた結果、「子会社(または関連会社)の収益が、親会社の収益として計上されている」という会社がほとんどになりました。


この為、事情が少し変わってきてしまっている面があるのです。

その代表的なものは、

「日本の親会社の業績は良いが、良く見てみると、国内事業はボロボロで、海外の子会社の利益が親会社の収益として計上されている」

といったものです。

この場合、国内事業はボロボロな訳ですから、素直に「国内従業員の給与を上げるべき」とはならないはずなのです。

もちろん、「海外も好調で国内も好調」という企業もあり、そういう企業については、国内従業員への還元も積極的に行われるべきでしょう。

しかし、報道などでは、それぞれの会社が「どちらのケースに該当するのか」というポイントについては、あまり区別されていないように思うのです。


そして、「国内はボロボロだが海外が好調」という企業の場合の国内従業員の処遇については、なかなか難しい面があります。

「好業績なのは海外だから、国内従業員への処遇は不要」という単純な考え方で良い場合もあるのですが、さすがに、そのようなケースばかりではありません。

例えば、

①国内従業員が海外子会社をうまく指導している事によって、海外子会社の業績が良い場合

②国内事業はボロボロでも、国内に本社機能があり、そこが優秀なグローバル戦略を立案している結果、海外子会社がうまくいっている場合

などのケースもあり、事情をしっかりと把握しないと、国内従業員が果たしている役割は見えてきません。

また、

③過去に国内従業員が開発した技術を生かして海外事業がうまくいっている場合に、過去の国内従業員の努力に報いる必要がある場合

などの少し特殊なケースもあります。


その一方、海外子会社は自分達の国の事業結果を知っている事も多い為、現地の従業員とのコミュニケーションに気をつけておかないと、「自分達が稼いだ利益が、親会社に奪われている(自分達に還元されていない)」という不満が、現地で高まってしまう事もあります。


どちらにせよ、発表されている「日本企業の収益」と「国内従業員の給与」の連動については、あまり軽々しく考えない方が良いケースも多い、というお話でした。

この問題は、経営者はもちろんですが、労組(従業員代表)などの立場で関わる方も多くいらっしゃる事と思います。

ぜひ、こういった視点についても知っておいて頂ければ、と思います。