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貴方のツイートも3億円で売れるかも?NFTを理解する為の10個のQ&A

NFT

ある人のツイートが3億円で売買された」といったニュースをご存じでしょうか。

その売買を可能としているのが、今日、取り上げる「NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)」という概念(技術)です。

このNFT、良く話題となっている割に、肝心な所があまり理解されていないように思います。

そこで、「NFTについて、最低限、これだけ知っておけば大丈夫!」というポイントを、Q&A形式でご説明させて頂きます。

Q:NFTとは?

NFTとは「Non-Fungible Token」の略であり、日本語では「非代替性トークン」と訳されます。

技術的な難しい説明は省きますが、デジタル資産の権利者を証明する仕組みです。

そして、その「権利者を証明する事が出来る仕組み」により、「(形がなく、複製が自由に出来てしまうという特徴のある)デジタル資産を売買する」という事が可能になりました。

Q:NFTの有名な取引事例は?

最も有名な取引事例は、「ツイッター社の創業者であるジャック・ドーシー氏が2006年に投稿した初ツイートが競売にかけられ、約291万ドル(約3億円)で落札された」という事例でしょう。

皆さまも良くご存じの通り、公開されているツイートは誰でも見る事が出来ます。

そのようなツイートが売買の対象になるという事自体、多くの人にとっては衝撃的だったはずです。

その他にも、オークションでBeeple(ビープル)というデジタルアーティストの作品に約75億円の値が付いたり、米プロバスケットボールリーグでの試合のワンシーン(ビデオクリップ)が数千万円で売買されたりもしています。

Q:どんなものがNFTで売れるの?

「ネット上で情報として流通させる事ができるものであれば、何でも売買の対象に出来る」と考えて頂ければ結構です。

具体的には、以下のようなものが取引の対象となっています。

・デジタルの作品(パソコンで再生できる音楽や動画などをイメージして下さい)

・ツイート

・スポーツの動画の一部分(試合のあるシーンなど)

・ゲームで使われるアイテムの権利

・アイドルグループのデジタルカード

など。

もちろん、「(技術的に)売買できる」という事と、「売買が成立する(=売りたい人と買いたい人が揃う)」という事は別です。買い手が魅力的に思うものでなければ、取引が成立しないのは、通常の売買と同じです。

Q:NFTで売買が成立するイメージがわかないのだけど?

例えば、インターネットの様々な所で公開されている情報を思い浮かべてみて下さい。

通常、そのような情報は、「誰が持ち主(権利者)なのか?」という事は良く解らなくなってしまっています。

情報に権利者の記載があるかもしれませんし、(ファイルの形で提供されているものであれば)プロパティを開くと記載があるかもしれません。

しかし、それらの情報は偽造された(書き換えられた)ものかもしれません。

しかし、NFTでは「その情報の権利を誰が持っているのか?」という事を証明できるようになっているのです。

そして、その証明された権利を取引する事で、売買が成立するのです。

Q:NFTでの購入は、普通の購入とは何が違うの?

通常、「モノを買う」という事は、その「モノ」を手元においておき、他の人に勝手に見られたり、使われたりしないように出来る権利を手に入れる事を意味します。

しかし、NFTでデジタル資産の権利を買った場合、そのデジタル資産を既に利用している人に対して、利用を制限する事はできないのが原則です。

ですから、「(従来のような)所有する権利とは違う権利を取引している」と考えて頂いた方が良いでしょう。

Q:NFTを使うと権利を手放した後も稼げる仕組みが作れるって本当?

本当です。

自分がデジタル資産を売却した後、更に第三者に転売が行われた際、自分に代金の一部が入ってくるような権利を設定する事が出来ます。

この仕組みは、アーティストの権利を大きく変えるのではないか、とも言われています。

通常、アーティストが自分の作品の売却によって得られる収入は、最初の購入者への売却による一回きりです。

その後、どれだけ自分の作品の価格が高騰しても、それによる追加収入を得る事は出来ません(もちろん、次回作以降の価格が上昇したり、売却以外の収入に繋がるといったメリットはあります)。

しかし、この仕組みを使うと、最初の売却以降にも、(売却が行われる事によって)自分への追加収入が得られる道が開かれるのです。

Q:ゲームとNFTに関係があるって本当?

本当です。

ゲーム中で利用されるアイテムもデジタル資産の一種です。

ですから、その権利を売買する為にNFTを活用する事が出来ます。

そもそも、「ゲームのアイテム売買によってNFTが有名になった」という過去もあります。

具体的には、Cryptokitties(クリプトキティーズ)というゲームがあり、そのゲーム内では(仮想の)猫を育成する事が出来るのですが、その猫を(現実世界において)NFTで売買する事が出来たのです。

Q:ブロックチェーンとNFTは、どんな関係なの?

NFTのベースとなっている技術がブロックチェーンです。

NFTで取引されるデジタル資産は、「モノ」のように、「手元においておく事で、自分が権利を持っています」と主張する事が出来ません。

ですから、「このデジタル資産の権利は○○さんが持っている」という情報が改ざん出来てしまうと、売買が成り立ちません。

それを防ぐ為に、ブロックチェーンの技術が活用されています(ブロックチェーンとは、そのような目的の為に活用されている技術であり、暗号資産(仮想通貨)の取引が改ざんされない為にも活用されています)。

Q:高額な取引がNFTで成立するのがピンと来ないのだけど?

通常の売買とは異なりますので、そのように感じる方がいらっしゃるのは当然でしょう。

イメージが難しい場合には、「モノを買う」というイメージよりも、「○○をする権利を買う」というイメージで理解して頂いた方が良いかもしれません。

例えば、「自分が好きなアイドルのファンクラブの会員番号1番の権利を買う」といったイメージではどうでしょうか。

その権利を得る事によって生まれる様々な事に価値を見いだせる人にとっては、高額な対価は惜しくないはずです。

同じように、NFTで取引されるデジタル資産の権利について価値を見いだせる人にとっては、高額な対価は不自然なものではないのです。

Q:なぜNFTは重要なの?

まず、「これまで売買できなかった資産を売買の対象にできるようになる」という点が重要です。

例えば、デジタル作品を生み出すクリエーターが作品を売れるようになります。

作品が「パソコン上で再生する動画」であったり、「広い場所で、大勢の人が同時に見られるような作品」であったりするクリエーターの場合、従来のように「モノ」のかたちで売るのが難しい場合があるのは理解して頂ける事でしょう。

しかし、そのようなデジタル作品であっても、このNFTを活用すれば、問題なく売る事が出来るようになるのです。

そのような作品の売買以外でも、「スポーツ選手が、自分のプレイ動画の権利を売って収入を得る」といった、これまで想定されてこなかった「新しい稼ぎ方(市場)」が生まれるのです。

そして、それは、何かに投資したい人にとっても、新しい投資先が生まれた事を意味します。

特に、デジタル資産は管理のコストがかかりません。

ですから、「投資先として優れている」と考える人もいます。

もっとも、今後、このような権利に対する高い評価が維持されるかどうかは解りません。

一時的なブーム(バブル)ではないのか、といった指摘は既にあり、その懸念が正しかった場合、今後、NFTを活用した取引の規模は急速に縮小する可能性もあるでしょう。