「パナソニック、中国TCLとテレビ生産委託で交渉」というニュースが出ました(2021年4月30日)。
衝撃を受けた人もいたようで、
「ついにパナソニックのテレビも国内生産を終了か!」
「日本だから、パナソニックのテレビを買ってきたのに」
などの声も聞きました。
やはり、パナソニック製品に「日本の家電」という印象を持っている人は少なくないようです。
その一方、日本の家電にこだわる人であっても、今回のニュースをあまり気にしていない人もいました。
私なりに分析してみた所、「その人の『何をもって日本とするか?』という点についての考え方の違い」が、感想の違いに繋がっているように思います。
なかなか面白いな、と思いましたし、「家電を買う時に、何を重視するのか?」という事を考え直す良い機会でもあるように思いましたので、今日は、このお話を短めに。
※TCL(中国)は、テレビ世界販売台数でサムスン電子(韓国)、LG電子(韓国)に続く世界3位の企業です。
まず、今回のニュースで衝撃を受けた方の言い分は、
「日本製が良くてパナソニックを買っていたのに!」
という事であったように思います。
やはり、「(自分と同じ)日本人が工場で作っている」というイメージが大事なのでしょうか。
そして、今回のニュースを重要だと捉えなかった方は、
「別に、パナソニックが日本のメーカーじゃなくなる訳ではないから…」
という事であったように思います。
こちらは、「日本のメーカーの製品かどうか」という事が大事で、作られている場所は重要ではない、という考え方なのでしょう。
ちなみに、この考え方をしていた方の一人に、もう少し意見を聞いてみると、
「そもそも、日本のメーカーでも、海外の協力工場(=他の会社)を使って生産しているのは普通でしょ」
といった意見が返ってきました。
ごもっとも。
日本メーカーの製品として売られている製品でも、「海外に発注して作ったもの」は全く珍しくありません。
その一方、ビジネスに詳しい方からは、この中間とも言える意見も聞きました。
「いや、海外でも良いけど、日本メーカーが運転する工場で作っていて欲しい」
なるほど。
製品の品質などを大事に考える観点からは、「日本メーカーの基準で運転しているかどうかが大事」という事ですね。
ちなみに、この意見をくれた方には、
「発注時に品質基準をしっかり定めれば、品質に問題はないのでは?」
と突っ込んでみましたが、
「いや、仕事の哲学みたいな所が違うと、検査の数字には出てこない品質の差がある」
との事でした。
深いですね。
しかし、その目に見えづらい部分こそが、「日本ブランド」の価値を高めてきたのかもしれません。
※誤解がないように書き添えますが、パナソニックのテレビ生産はこれまでも海外でも行われてきています。また、パナソニック以外の日本企業でも、テレビ事業を継続している所はあります。
※パナソニックから「国内向けテレビを生産していた宇都宮、インド、ベトナムでの生産を終了」との発表がありました(2021年5月10日)。なお、メキシコ工場は閉鎖済です。(2021/5/16追記)
さて、色々な考え方や意見がある事は解りました。
ここで、皆さまにも少し考えてみて頂きたいのは、
結局、「何をもって、『日本の家電』と考えるべきか?」という事です。
まず、
「①日本企業が日本の自社工場でつくっている家電」
多くの人にとって、これは「日本の家電」で間違いないでしょう。
では、
「②日本企業が海外の自社工場でつくっている家電」
はどうでしょうか?
そして、今回のように、
「③日本企業が海外の他社工場でつくっている家電」
は?
なお、実は、
「④海外企業が日本の自社工場でつくっている家電」
や
「⑤海外企業が日本の他社工場(ただし、日本企業)でつくっている家電」
といったパターンもあります。
更に、上記の「①日本企業が日本の自社工場でつくっている家電」は、
「①-1 日本企業が日本の自社工場(従業員は日本人)でつくっている家電」
「①-2 日本企業が日本の自社工場(従業員は全員外国人)でつくっている家電」
に分けて考えてみた方が、考えが整理できるかもしれません(海外工場でも、同じ事は言えますね)。
こう考えると、「日本人が作っている」という点が大事な人の場合には、
「日本企業に所属する外国人が、日本で作っている製品」
よりも、
「外国企業に所属する日本人が、外国で作っている製品」
の方に高い評価をするべきな気もします。
少しややこしくなりましたが、「何をもって『日本の家電』とするか?」という事は、意外と難しい問題であるように思います。
最近は、家電ブランドの国籍が変わったり、生産体制の変更が相次ぎます。
「日本の家電」が好きな方は、「自分は、何を重視して選ぶのか」という事を、この機会に考え直してみてはいかがでしょうか。