ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

コインパーキング料金の謎、1時間500円の横に1200円の設定は何故?

コインパーキング 料金 経営 失敗


今日は、コインパーキングの料金設定(値付け)のお話です。

コインパーキングの料金設定は、その場所での駐車場需要を分析し、そして、周囲の競合となるコインパーキングの料金設定を参考にして設定されています。

しかし、「あれ?」と思うような料金設定がされているケースも存在します。

普通に考えると、

こんな馬鹿な料金設定をしているコインパーキング、大丈夫なの?

と思われるようなものでも、実は、ワザと、そうなっている場合もあるのです

今日は、そのようなケースの一つを取り上げてみたいと思います。

一般の方には、「なるほどな~」と思って読んで頂ければ。

そして、経営に関係している方には、冒頭部分で、ぜひ、その理由を見破って頂きたいと思います。

では、始めましょう。

不思議なコインパーキングの料金設定の例

首都圏ではありますが、都心とは言いづらい場所で駐車場を探していました。

比較的、目的地に近いところにあるコインパーキングで、

「1時間500円」

という料金表示がされている看板を見つけました。

都心と比べれば、手頃な水準と言える料金設定です。

そして、少し周りを見渡すと、もう一カ所、コインパーキングがあるようでした。

念のため、そのパーキングも値段も確認してみると、

「1時間1200円」

と書かれていたのです。

見間違えかと思って、近づいて確認してしまいました。

しかし、見間違えではありませんでした。こちらのコインパーキングの設備が特別良い訳でもなさそうです。

条件(立地や設備)が同じにも関わらず、片方の料金が、もう片方の倍以上に設定されていた訳です。


さて、皆さま。なぜ、こんな事が起きるのか、お解りでしょうか。

ぜひ、理由を少し考えてから、この先をお読み下さい。

おかしな料金設定の理由として考えられるもの

ちょうど、現地で待ち合わせをしていた同行者がいたので、この話をしてみました。

そして、「どうして、こんなにも料金設定が違うと思う?」と聞いてみました。

最初に指摘されたのは、

「見間違えでしょ?」

「昼料金と夜料金、平日料金と土日料金の差でしょ?」

といったものです。

しかし、それはありません。同じ平日昼間の料金設定同士を比べています。

※厳密には、昼扱いとなる時間帯設定などは異なるのですが、話を簡単にする為に、ここでは、そういった要素は無視させて頂きます。


それが解ると、さすがに同行者も真剣に考え始めました。

まずは、この後、返ってきた答えを書き出してみます。


まず、1番目。

「単に料金設定を間違えている」

確かに、2カ所目の駐車場は大手の経営ではありませんでした。

競合調査をしていなければ、ありそうです。


2番目。

「競合の駐車場が料金を下げたばかりで、対応出来ていない」

これも同じく、ありそうです。


3番目。

「提携先があり、一般客には積極的にとめて欲しくない」

さすが、と思ったのが、この理由です。

実は、コインパーキングとして一般利用を可としているところでも、あまり積極的には利用して欲しくないケースがあるのです。

例えば、何かの店に併設の駐車場で、基本的には、その客の為に駐車場は空けておきたい。

しかし、夜間や店の閑散期には、店の客はいない(少ない)ので、駐車場として活用したい(この場合、そういった期間や時間帯については、料金は低額に切り替わります)。

または、高額の駐車料金を払ってくれるのであれば、店の客よりも、駐車場利用客を優先しても良いと思っている、など。

実は、私もそれは疑いました。

しかし、確認できた限り、そういった事もなさそうでした。


以上、3例ですが、皆さまの想定された理由は、この中にありましたでしょうか。

しかし、恐らく、これらは、全て間違いです。

もちろん、オーナーの人に話が聞けた訳ではないので、本当のところは解らないのですけれども。

※本当は、もう1つ理由が挙がったのですが、専門的な知識が無いと難しいので省きます。専門家の方は、「更地のまま放置したくない」というキーワードでお考え下さい。

競争上おかしい料金設定が正当化される本当の理由

さて、私が分析した限り、この無茶苦茶な値付けのパーキング、実は、ちゃんと考えて値付けされています。

この料金設定がされている理由は、

「1番目のパーキングが満車になった後の客だけを狙って、料金設定している」

からです。

※何度も書きますが、あくまで、私の分析です。


そのエリアは、遠くから車で来る人が多く存在するエリアでした。

そして、1番目のコインパーキングだけでは、駐車場の供給が足りていませんでした。

ですから、

「安いコインパーキングから埋まっていったとしても、必ず、コインパーキングを使わざるを得ない人(車)が出てくる」

という事を、このコインパーキングのオーナー(料金設定した人)は知っていたのでしょう。

そして、恐らく、入念に分析し、安いパーキングが埋まった後に来る客だけでも、十分に儲かる水準で価格設定されていたのでしょう。

コインパーキングの料金設定の奥の深さ

ここまでの説明を読むと、

「では、そのエリアの駐車場、全てが料金を上げれば良いのではないか?」

という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。


もちろん、その発想も解りますし、それが正しいケースもあるでしょう。

しかし、これが料金設定の難しい(奥が深い)ところなのです。

※更に繰り返しますが、あくまで、私の分析です。


実は、そのエリアでは、地元の人による駐車場ニーズもありました。

もし、そのエリアの全てのパーキングが値段を上げた場合、

「そもそも、そのエリアに車で来る人が減る」

といった現象が起きてしまい、結局、駐車場経営も失敗してしまう危険性があるのです。

それが、今回の駐車場2カ所の棲み分けに繋がっていたと思われます。

料金設定は、本当に奥が深いですね。