ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

京大川北/JPX 日本株指数とは?新しい株価指数のメリットと懸念点

京大川北/JPX 日本株指数 株価指数 東証 東京証券取引所

京大川北/JPX 日本株指数という新しい株価指数の公開が予定されています。

この京大川北/JPX 日本株指数、まだ、あまり知られていない株価指数だと思いますが、専門家の間では以前から話題になっている株価指数ですので、紹介させて頂こうと思います。


京大川北/JPX 日本株指数(Kyodai-Kawakita/JPX Japan Index)とは、京都大学大学院経営管理研究部と東京証券取引所(東証)の共同研究によって生まれた、日本株に関する株価指数です。

従来、JPX京都アカデミア株価指数という名前で開発が発表されていたのですが、いつの間にか、京大川北/JPX 日本株指数という名前に変更になったようです。

2018年から開発が始まり(共同研究に関する東証のニュースリリースは2018年7月)、構成銘柄については、「東証の3市場から、成長性と安定性があり、世界を牽引するような独自性がある、長期投資に適した200銘柄で構成される」との事です。

また、「売上高や利益が伸びていることなどを重視する」「時価総額1000億円以上の企業を対象とする」「構成される200銘柄で、上場企業全体の時価総額の45%程度をカバーできる」「毎年7月末に銘柄の入れ替えを行う」などと説明されています。

株価指数の算定開始日(予定)は、2023年1月30日(月)。基準日は2023年1月27日(金)となり、基準値10000ポイントからスタートする予定です。

※京大川北/JPX 日本株指数の特徴については、意味合いが変わらないように留意しながら、指数開発に深く関わっている川北英隆名誉教授の発言を改変して引用。現時点で一般に発表されている情報は、以下からご確認下さい。
https://www.saci.kyoto-u.ac.jp/topics/news/13620.html
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/nlsgeu000006pbc4-att/release_1031_j.pdf


さて、既に存在し、また、投資にも広く活用されている株価指数には東証株価指数(TOPIX)があります。

ただ、この株価指数には「構成銘柄が多すぎる」や「業績が芳しくない銘柄も含まれる」といった問題があり、この京大川北/JPX 日本株指数では、これらの問題を解消する事を狙って開発が進められたようです。

実際、京大川北/JPX 日本株指数を2022年3月までの過去10年間で試算してみると、TOPIXよりも71%も上昇率が高かったようで、株価指数を参考に投資する方にとっては、要注目の株価指数という事になるでしょう。


ただし、この京大川北/JPX 日本株指数については、いくつかの注意点(知っておいて頂きたい点)があります。


まず、この京大川北/JPX 日本株指数は株価指数ではあるものの、選ばれた銘柄だけで構成されています。

担当者の好き嫌いで銘柄が選ばれるような事はないようですが、一定の基準で銘柄が選ばれ、その銘柄をもとに株価指数が計算されます。

この為、もし、この京大川北/JPX 日本株指数をもとに投資を行う場合、「誰かが選んだ銘柄に投資する(専門的に言えば、アクティブ投信を買う)」という事に近い面があります。

ある市場に上場している全銘柄に対して投資するインデックス投資と同じようには考えるべきではありません。

投資される方は、その特徴を十分に理解した上で、投資される事をお勧めします。


また、上場している銘柄のうち、一部の銘柄だけで構成される株価指数は、別に京大川北/JPX 日本株指数だけではありません。

既に日経株価指数(日経225)やJPX日経インデックス400、S&P/TOPIX150などがあります。

※これらの株価指数については、東証のページから確認して頂く事が可能です。
https://www.jpx.co.jp/markets/indices/line-up/index.html

ですから、TOPIXではない株価指数を対象に投資したい方も、京大川北/JPX 日本株指数に飛びつくのではなく、どの株価指数が適切か十分に検討した上で投資される事をお勧めします。


その他、ここからは、京大川北/JPX 日本株指数そのものに連動する投資をお考えの方以外にも関係が出てくる注意点となります。


まず、今後、京大川北/JPX 日本株指数が注目されるようになり、京大川北/JPX 日本株指数に採用されている銘柄に投資する人が増えた場合(京大川北/JPX 日本株指数に連動する投信などへの投資を含む)、京大川北/JPX 日本株指数に採用されるかどうかによって、特定の銘柄の株価が大きく変動する、といった現象が生まれるかもしれません。

これは、既存の株価指数でも既に起きている問題ですが、特に、ある銘柄が京大川北/JPX 日本株指数の採用銘柄から外れた場合、その銘柄の株価が大幅に下落するような事態が起きるかもしれません。

京大川北/JPX 日本株指数の構成銘柄に投資される場合には、この点について、知っておいて頂いた方が良いでしょう。


また、京大川北/JPX 日本株指数への採用が株価に大きなインパクトがある事が周知されると、今後、京大川北/JPX 日本株指数に採用される事を過度に意識した経営を行う会社が出てくる可能性もあります。

これは、京大川北/JPX 日本株指数が採用銘柄を選ぶ際に重視する項目が真っ当なものである限り、決して悪い事とも言えないのですが、特定の項目を極端に意識した経営が行われた場合、あるべき経営からかけ離れた経営が行われるリスクは否定できません。

投資先を分析される上では、この点も知っておいて頂いた方が良いと思います。


最後に、おまけとも言える注意点ですが、京大川北/JPX 日本株指数という名前は、誤解を招くケースがあるように思います。

京大川北/JPX 日本株指数という名前は、京都大学が開発に関わっているという所から来ているようですが、知らない人が名前だけを見た場合、「京大(京都大学)」という名前からの連想で、「京都(関西)に関係する株価指数である」と勘違いしてしまう可能性があるように思います。

特に、京都には、京都証券取引所(京証)というれっきとした市場が2001年3月までありました。

この為、その記憶が残っている人にとっては、東証の株価指数であるというイメージがわきづらいかもしれません。


以上が京大川北/JPX 日本株指数について、知っておいて頂きたいポイントとなります。

色々と気になる点もありますが、京大川北/JPX 日本株指数のような株価指数の発表は、日本の証券投資にとってメリットも大きいように思います。

京大川北/JPX 日本株指数が日本で定着するかどうか、注目していきたいと思います。

※このエントリの京大川北/JPX 日本株指数に関する情報は、日本FP協会が会員向けに発信した情報を参考にしています。また、JPX京都アカデミア株価指数に関して発信されてきた内容が、京大川北/JPX 日本株指数にも全て当てはまるという前提で書かれています。間違っている点や、今後、変更となる可能性もありますので、投資の参考にされる場合には、最新の情報を東京証券取引所のホームページなどでご確認の上、ご自身の責任でお願いします。