ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

「日本人の性格は悪い」という研究結果があるのを知っていますか?

日本人の性格の特徴

日本人の性格は悪い」という研究結果があるのをご存じでしょうか。

正確には、「日本人は、海外の人よりも『いじわる』である」という研究結果なのですが、なかなか面白い研究結果だと思いますので、ここでご紹介させて頂きます。

ちなみに、この研究結果が本当であれば、会社の中で行われる「足の引っ張り合い」という現象の理解に繋がるように思います。

また、大きく考えてみると、「日本人が中心となっている企業の国際的な競争力の低下」や「日本の経済成長の為に行う施策の限界」といった話にまで繋がる話だと思います。


最初に、この研究の為に行われた「ゲーム」について、ご紹介しましょう。

貴方は、ある人(一人)とゲームをする事になりました。

貴方とゲーム相手は、共に、自由に使って良いお金として、10万円を持っていたとします。

そして、貴方とゲーム相手は、「ある投資案件に投資をするかどうか」を決めなければなりません。

その投資案件では、必ず、投資された金額の1.5倍になってお金は返ってくる事になっています。

ただし、返ってくるお金は、貴方とゲーム相手の両方が投資した金額を合わせた金額の1.5倍です。

そして、投資した人だけではなく、貴方とゲーム相手の両方に返ってくるものとします。

すなわち、貴方が投資をしなくても、ゲーム相手が投資をしてくれれば、貴方は投資をする事なく、リターンだけを得られる事になるのです(もちろん、相手も同じ条件になります)。

しかし、相手が投資するかどうかは、結果が出るまで貴方は知る事が出来ません。

このような場合、貴方は、投資を行いますか?

それとも、投資を行いませんか?

話を簡単にする為に、投資できる金額は0か10万円のどちらかの2択だったとしましょう(すなわち、投資しないか、全額を投資するか、の2択)。


それほど難しい話ではないと思いますが、一応、貴方の選択による損得を整理しておきましょう。

貴方が一番儲かるのは、貴方とゲーム相手の両方が投資をした場合です。

両者が投資した金額(合計)である20万円の1.5倍である30万円が貴方の手元には残る事になります。

しかし、ゲーム相手の選択は最後まで解りません。

もし、貴方が投資をして、ゲーム相手が投資をしなかった場合には、ゲーム相手は丸儲けをする事になります。

すなわち、投資をせずに、貴方が投資した10万円に対するリターン15万円を得られるので、ゲーム相手は25万円が手元に残る事になります。

貴方は、10万円を投資した結果として15万円のリターンですから、15万円だけが手元に残って終わる事になります(ゲーム相手よりは手元に残るお金は少ないですが、別に貴方が損をしている訳ではない事に注意!)。

もちろん、貴方もゲーム相手も投資をしなかった場合には、所持金は共に10万円で変化しません。


さて、もし、貴方がこのゲームに参加するとしたら、どのような選択をしますか?

実は、冷静に考えれば、投資をするかどうかの選択で悩む必要はないはずなのです。

相手が投資する場合であっても、しない場合であっても、自分が投資をすれば、その投資の1.5倍が返ってきます。

ですから、自分の手持ち資金に関する損得だけを考えれば、ゲーム相手の行動にかかわらず、貴方は投資をした方が手持ち資金を増やす事が出来ます。

実際、海外では、そのように行動する人が多かったようです。


しかし、です。

実は、研究結果によると、日本では、「投資をしない」という選択をする人の割合が、海外よりも多かったのだそうです。

投資をしない事で、自分が損をする事が解っていても、です。

それはなぜか。

もし、研究結果では、「自分は投資するが、ゲーム相手が投資をしない」という結果になった場合、

「相手だけが(努力もせずに)得をする事になり、自分は相手よりも悪い結果で終わる(所持金で負ける)」

という事を気にする人がいた為だと分析されています。

先ほども書いた通り、相手が得をしたとしても、別に自分自身が損をしている訳ではありません。

しかし、それが許せない。

すなわち、

「相手に負けるくらいであれば、自分の所持金が増やせるチャンスを棒に振っても良い」

という判断をする日本人の割合が多かったという事になります。

この行動は、研究結果の中では「スパイト(いじわる)」と呼ばれています。

※このゲームは、経済学を勉強した方であれば良くご存じの「囚人のジレンマ」の応用ケースです。

※ここで取り上げたゲームの内容は、実際の研究発表で紹介されているゲーム内容を一部改変し、また、一部のみを取り出しています(実際の研究結果では、その後の行動までを研究した結果が紹介されています)。正確な内容については、発表の原文および関連論文をお読みください(西條辰義「日本人は「いじわる」がお好き?!」(経済セミナー2005.12))。


さて、「自分が得をする」という事よりも「相手が自分よりも得をするのは許せない」という考えを優先するスパイト行動が日本人に多いという事は、何を意味するのでしょうか。


まず、国家レベルで、「『ある人だけを成功させる』といった施策を採用し辛い」という事が言えるかもしれません。

世界には、「一部の人だけが、先に豊かになれば良い」という考え方もあります。

先に豊かになった人が多くの税を国や地方に支払い、また、寄付などをしてくれるのであれば、豊かになれなかった人にも恩恵がある。

だから、「皆が平等に豊かにならなくても良いではないか」という考え方です。

確かに、全国民を豊かにするよりは、一部の人だけを豊かにする方が簡単なのかもしれません。

しかし、スパイト行動を前提とすると、「他の人だけが豊かになるくらいなら、自分も豊かにならなくても良い」という事になってしまい、そのような目的の為の施策は日本では実行しづらいという事になってしまいます。

その場合、結局、皆が豊かになれない、という結末で終わってしまうかもしれません。


この理屈は、業界や企業の内部においても当てはまるでしょう。

例えば、「同じ業界内のある会社が成功してくれれば、マーケット全体が広がって、自社も得をする」や「同僚が昇格してくれれば、自分の評価にも繋がる」といった事が解っていた場合であっても、「自分よりも、相手の会社・個人が成功する事が許せない」という考え方で動く会社・人が多ければ、結果、「全員が成功できない」という結末で終わってしまう可能性もあるように思います。

いわゆる、「足の引っ張り合い」で、皆が損をしてしまう、という話です。


皆さまは、この研究結果を読まれて、「その通り」だと思われましたでしょうか。

それとも、「そんな事はない」と思われましたでしょうか。

私も一人の日本人として、「日本人はいじわるである」と言われると否定したくはなります。

また、せっかくうまくいく施策があるのに、それが日本では成功しない可能性がある、と聞くと、それも馬鹿らしく感じてしまいます。

しかし、日本には「出る杭は打たれる」というカルチャーがあるような話も聞きます。

皆さまが、この研究結果を、どうお感じになるか、ぜひ、様々な意見をお聞きしてみたいと思っています。