ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

日本もついに金利が上がる?金利上昇が予想される理由・影響・対策

日本の金利上昇

まだ余談を許しませんが、

「日本も、ついに金利が上がるのではないか?」

と予想し、推移を見守っています。

ご存じの通り、日本は、超低金利(あるいはマイナス金利)が長年続いてきました。

この為、特に若い人は金利が上がった状態がピンと来ないのではないかと思います。

この為、警告も兼ねて、この記事を書く事にしました。

※2022年12月、ついに日本の金利も上がり始めました。本稿には、内容が古い部分も含まれていますが、今後も日本の金利は上昇する可能性が十分にあり、内容(特に、本稿後半の金利上昇局面への対応など)は現在でも通用する内容ですので、ぜひ、最後までお読み下さい。(2022/12/29追記)

異常な日本の金利水準

一般の方が金利を真剣に意識されるのは、やはり、大きな買い物をされる時だと思います。

特に、住宅や車などの大きな買い物をされる時に、金利の差を実感されるのではないでしょうか。

具体的には、そのような大きな買い物をする時に「○年ローンで○%」といったかたちで金利を確認し、そして、毎月の返済に加えて、「金利が○○円」という金額の重みで意識される事が多いと思います。

しかし、その時に4%を超えるような金利で借入をされる方は少ないでしょう(カードローンや消費者金融で借りる場合は別ですが、これらの場合、最初から長期で借りる予定で借りる方は少ないはずです)。

しかし、この金利水準、相当に「異常な水準である」と言えます。

日本でも1990年代までは、住宅ローンの変動金利であっても、6%を超える金利水準は全く珍しくありませんでした。

※過去の住宅ローンの金利水準について確認したい方は、住宅金融支援機構の「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」が見やすいと思います。
https://www.flat35.com/loan/atoz/06.html


ちなみに、今でも海外では金利水準が4%を超える事は少なくありません。

例えば、政策金利ベースで確認しても、金利が4%を超えている国は少なくありません。

・南アフリカ 4.00%
・中国 4.35%
・メキシコ 5.50%
・ロシア 8.50%
・トルコ 14.00%

など(これは政策金利の水準ですので、実際に借りる人は、これよりも高い金利で借りる事になるのが一般的です)。

※外為どっとコムの主要各国政策金利表の2022年1月のデータより。


すなわち、最近の日本が異常なのです。

ただし、日本では低金利が長く続いてきてしまいました。

なぜ日本の金利は低かったのか

では、なぜ、日本の金利は極めて低い水準で維持されていたのでしょうか。

金利は様々な要因で決まる(決められる)為、説明は難しいのですが、ここでは2つの要因を挙げておきます。

まず、「景気を良くする為には、金利を上げる訳にはいかなかった」という理由があります。

金利を上げると、企業の資金調達コストが上がり、企業がお金を使いづらくなる為、「景気が悪化しがちである」と言われています。

そして、日本では、バブル崩壊後、「景気を(更に)良くしたい」という考えで運営が行われてきた為、誰も金利を上げたいとは思って来なかったのです。

そして、もう一つ、「物価が上がらなかった」という理由もあります。

中央銀行の主要な目的に「物価の安定」があり、物価が期待以上に上がるような事があると(インフレ)、中央銀行は金利を上げようとします(金利を上げると、物価を下げる効果がある為です)。

しかし、ご存じの通り、日本では、これまで物価が上がってきませんでした(むしろ、物価が下がるデフレを克服する目標すら立てられてきました)。

この為、金利を上げる動きが生まれづらかったのです。

ちょっと難しい話になったと思いますが、とりあえず、金利上がらなかった理由としては、この位の事をご理解頂ければ十分だと思います。

なぜ、これから日本の金利が上がる可能性があるのか

少し前置きが長くなりました。

さて、では、なぜ、これから日本の金利が上がる可能性があるのか。

それは、海外の国々が金利を引き上げており、更に、今後も引き上げていく事が予想されているからなのです。

例えば、アメリカでは、今後、数回にわたり政策金利が引き上げられる見込みです(7月までに合計1%程度と報じられています)。

その他、アメリカ以外でも、各国で政策金利引き上げに関するニュースは発表されています。

・英イングランド銀行(中央銀行)は2月3日、政策金利を0.25%引き上げて年0.5%にすると発表。利上げは2021年12月の前回から2会合連続。

・カナダ銀行(中央銀行)は1月26日、今後利上げに動く必要があると述べた。早ければ3月の会合で利上げに踏み切る可能性。

・ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は12月23日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き上げて1%にすると決定した。利上げは2021年10月、11月に続き3会合連続。

・ロシア中央銀行は2月11日の金融政策決定会合で、政策金利を年8.5%から9.5%に引き上げると決めた。利上げは2021年3月から8会合連続。

・韓国銀行は1月14日に政策金利を0.25%引き上げ年1.25%とし、追加利上げも示唆した。

・メキシコ中銀は21年12月に5会合連続で利上げを決め、政策金利を0.5%引き上げて5.5%にした。

などなど。

※主に日経電子版より。著者修正。


このような政策金利の引き上げが相次いでいるのは、主に、各国で物価が急上昇している為です。

先ほど書いた通り、各国の中央銀行は急な物価上昇(インフレ)を嫌います。

そして、それを防ぐ為に金利を上げて対応しようとしているのです(その効果の是非については、本稿の趣旨とずれる為に触れません)。

そして、海外の国々が金利を引き上げ、日本が金利を引き上げずに現状維持した場合、海外と日本の「金利の差」は大きくなります。

その結果、日本で円安が進む可能性があるのです。

通貨水準についても様々な要因が関係する為、これも分析が難しい所ではあるのですが、基本的に、「金利が相対的に低い国の通貨は売られ、通貨の価値が下がる」という傾向があります。

この為、日本と海外の金利差が広がった場合、日本円の価値が下がる(=円安になる)可能性があるのです。

そして、そのような動きが拡大し、日本の円安が進んだ場合、日本では「円安是正を求める声」が続出する可能性があるのです。

なぜ円安を是正する為に金利を上げる事になるのか

原材料の多くを輸入で賄っている企業は少なくありません。

そのような企業では、円安はコストアップに繋がります。

結果、急激な円安で致命的なダメージを被る企業が相次ぐ可能性もあります。

一昔前は円安で輸出が伸びた為、円安は企業業績にとってプラスでした。

しかし、昨今は、円安によるプラス効果はかなり限定的と言われています。

また、一般消費者にとっても、大きな影響があります。

原材料の高騰に加え、完成品の輸入にも円安は影響します。

様々な生活品の値段が上がり、実質的な生活水準を下げる事に繋がるでしょう。

そのような影響が明確になった場合、「円安を是正して欲しい」という声が大きくなる可能性は高いと考えられるのです。

そして、その対策の一つとして、「日本の金利を上げる」という策が講じられる可能性が否定できないのです。

金利上昇による影響を受けるのは誰か

では、日本の金利が引き上げられた場合、誰か大きな影響を受けるのでしょうか。

それは、大きな借入のある企業(組織)や人です。

ただし、企業はこれまでも金利の上げ下げに対応してきた経験を持っている所も多いですし、企業ごとに金利水準も大きく違います。

ですから、業績悪化に繋がる可能性はありますが、全体として見れば、金利変動に対応できる企業は多い、と予想しています。

それよりも、対応する事が出来ずに大きな影響が出ると予想しているのが、「個人で、大きな借入を、それも低い金利でしている人」です。

その代表格は、「住宅ローンを抱えた個人」だと見ています。

昨今は住宅の価格が上がっている事もあり、一昔前の感覚では、かなり厳しいはずのローンを組んでいる人が少なくありません。

そして、それは低金利で金利負担が小さいからこそ成り立っている部分があります。

もし、金利が大幅に上がるような事があった場合、そのローンを無事に返済していけるのかどうか。

金利だけは払えたとしても、元本が減らないといった事態に陥る人が多く発生する可能性が十分にあるように思います。

この場合、一昔前のローンであれば、「返済期限を延ばせば良い」という考え方もあったのですが、最近のローンでは、総額が膨らんだせいで、元々、かなり高年齢になるまでの返済を最初から見込んでいるケースが多く見受けられます。

そのようなローンがどうなってしまうのか。非常に心配です。

また、そのような懸念が現実のものとなった場合、住宅市場(不動産市場)の冷え込みにも繋がるでしょうし、結果、景気への影響も否定出来ません。

なお、消費者金融などからの借入については、金利が元々高い事がほとんどであり、また、金利の上限も貸金業法で定まっている為、影響はほとんどないと予想しています。

金利上昇への対応・対策について

では、既に大きな借入を抱えている人は、金利が上がる局面に備えて、どのような対応を取れば良いのか。

取れる行動の候補としては、基本的に、「借入を返す」か「固定金利の借入にスイッチする」のどちらかしかありません。

ただ、どちらの対応も、容易に踏み切れる人は少ないように思います(もっとも、住宅ローンの現場では、固定金利に関心を持つ人は増えているようです)。

借入を返す為には、資産を売却したりする必要がある人がほとんどでしょうし(住宅ローンの場合には、住宅を売らないと返済出来ないケースが多いでしょう)、固定金利へのスイッチは金利がかなり上がりますので、返済計画が大幅に変更になります。

とはいっても、何も手を打たずに金利が上がり続けるのを傍観するのも、なかなか危険です。

具体的な行動には踏み切れない人でも、最低、「自分の場合、どのくらいまでなら、金利が上昇しても大丈夫か(自分のローン返済は破綻しないか)」といったシュミレーションくらいはしておく事をお勧めします。

それが、貴方の老後を救う事になるかもしれません。


(お断り)
本文中にも明記しています通り、金利や為替水準には様々な要因が関係します。この記事の内容はあくまで一つの可能性を示しているに過ぎません。何か行動される場合には、ご自身で十分な検討をされた上で、ご自身の責任で行うようにして下さい。

※この記事は2022年2月に書かれたものです。

※金利の引き上げを行っている米国では、住宅ローンの金利が急上昇しました。具体的には、2021年末時点では3%台前半だった30年固定の住宅ローンの金利が、5%台にまで急上昇しています(2022年5月時点)。この急上昇を受け、住宅ローンのニーズ自体が減少する事態に陥っている模様です。(2022/6/13追記)

※日本でも金利の上昇が始まりました。リタイアの準備の為に借入(住宅ローン)をしている方から、「どう対応すれば良いのか?」という質問を頂きました。本文にも記載させて頂いている通り、まずは、シュミレーションを行い、その上で、対策を検討する事が大切です。ある程度はご自身でも作業可能と思いますが、出来れば、FPへの相談をお勧めします。返済は長期にわたりますので、今後の出費や年金額の予想なども踏まえたシミュレーションを行うべきですが、そのようなシミュレーションを専門家以外が行うのは難しい為です。熟練のFPであれば、様々な条件を踏まえたシミュレーションを作成してくれますし、今後の方針についても相談にのってくれるはずです(ご参考までに、リタイアに向けた準備に関するFP相談サービス(筆者が運営に関わっています)をご紹介しておきます:早期リタイア相談センター)。(2022/12/29追記)