ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

「AppleはiPhone SE2を発売するのか」を経営の視点から分析する

iPhone SE2

Apple社はiPhone SE2(iPhone SEの新型)を発売するのでしょうか。

一部では、出るという噂が出て騒がれているようです。

当社の関係者でも、iPhone SE2の発売を強く待ち望んでいる者がおります。

そこで、この問題をApple社の経営の視点から考えてみよう、というのがこの記事のコンセプトです。

2019/9/5追記:一部新聞が、2020年春にもApple社がiPhone SEの後継機を発売する予定であると報じました。

iPhone SE2という製品についての基礎知識

まず、この製品にあまり詳しくない方の為に、検討対象であるiPhone SE2の前身である「iPhone SE」という製品(モデル)について整理しておきましょう。

Apple社はiPhoneというシリーズのスマートフォン(スマホ)を製造・販売しています。これは、ほとんどの方はご存じでしょう。

そして、そのシリーズの中に、「iPhone SE」というモデルがあります。

2016年の春に発売され、2018年の夏頃までは大々的に販売されていたモデルです。

このモデルは、比較的小さいサイズであり、その後、Apple社からは、こうした小さいサイズのモデルは発売されていません。専門的には、「4インチ端末」と呼ばれているようです。

数年前の機種ですから、性能面では最新機種にはかないません。このiPhone SEを持っているユーザーの中には、そろそろ最新機種に買い換えたいという人は多いのでしょう。

しかし、前述の通り、このサイズの新しい製品は出ていません。この為、このサイズが気に入っていたユーザーは買い換えたいモデルを見つける事が出来ず、困っているそうなのです。

少なくとも、この製品に一定のニーズはありそうです。

そして、売れるなら、Apple社も発売しそうなものですが、これまで、発売の噂が何度も出たものの、現実には発売はされていません。

検討ポイント1:販売見込量

ここからが本題です。

Apple社の経営の視点からは、この「iPhone SE2を発売するかどうか?」という問題はどう検討される事になるのでしょうか。

勿論、本当の事は解りませんので、理屈での推測になります。また、iPhone SE2は、iPhone SEと同じ特徴を持った製品である、という前提で考えていきます。

 

まず、このiPhone SE2という製品を経営の視点から捉えると、自社のiPhoneという製品群の中で、iPhone SE2は2つの特徴を持った製品になる、と言えるでしょう。

①小型である
②比較的、廉価である(値段が安い)

 

そして、Apple社がiPhone SE2の発売について検討する際、最も基本的な点として考える事は、自社が期待するほど売れると思えるかどうか、という点でしょう。
当たり前のことですが、Apple社が売れると思わなければ、そのモデルは発売されないからです。ですから、この点を最初の関門としましょう。

第一のポイント
「十分に売れるのかどうか」

検討ポイント2:他の自社製品への影響

では、iPhone SE2が売れそうであれば、Apple社はiPhone SE2を発売するのでしょうか。

そんな簡単な話ではないでしょう。

Apple社は、「iPhone SE2を出さなくても、自社の他の製品にユーザーが買い換えてくれれば良い」と考える可能性があるからです。

iPhoneユーザーは、iPhoneの中で次の製品を選ぶ傾向が比較的強いと言われています。それが本当であれば、ユーザーの為に用意するのは、別にiPhone SE2でなくても良いのではないか、とApple社は考えるかもしれない、という事です。

ここで重要な事は、Apple社自身が「iPhone SE2と他のモデルのどちらを売りたいと考えているか」という事です。

そして、その検討の上では、この製品が「比較的、廉価である」という特徴が影響する可能性があります。

一般的には、廉価版は、そうでないモデルに対して利益が小さいと言われています。この為、同じように売れるのであれば、廉価版ではないモデルを売りたがる企業が多いのです。

特に、ユーザーにとって、スマホは「iPhone SE2を買って、さらに、他のiPhoneのモデルも買う」という商品ではなく、「iPhone SE2を買ったら、他のiPhoneはしばらく買わない」と考える製品群です(もちろん、そうでないユーザーもいるでしょうが、それは例外とします)。

この為、自社の売上金額を伸ばしたい企業からすれば、「単価が安い製品ではなく、少しでも高い製品を売りたい」と考える事が多いのです。

第二のポイント
「自社の他の製品と比べて、どちらが儲かるのか」

検討ポイント3:他社へのユーザー流出

では、自社の他のモデルを売りたいとApple社が考えていた場合、iPhone SE2は出ないのでしょうか。もちろん、そうとも限りません。

iPhoneのユーザーは比較的、同じiPhoneのシリーズで次に買う製品を決める傾向が強いとは言われています。しかし、これも「必ず」ではありません。

自分の好みにあったモデルがiPhoneの中になければ、当然、ユーザーはApple社以外の製品の検討も始めるでしょう。他の会社にユーザーを取られるくらいであれば、廉価版でも良いのでApple社としては売りたいと考えるでしょう。

ただし、ここが難しい所なのですが、廉価版をApple社が出してしまうと、「本来は(廉価版が出ていなければ)、Apple社の高いモデルを買ってくれるユーザーまで、廉価版を買ってしまう」という現象が多少なりとも発生します。

すなわち、他社に移るはずだったユーザーは引き留める事が出来るかもしれませんが、自社のなかで買い換えてくれるユーザーからの収入は減ってしまう可能性があるのです。

第二のポイントとも関係しますが、仮にApple社が廉価版を売りたくないと考えていた場合、この現象による高いモデルが売れなくなるデメリットは無視できません。

第三のポイント
「出さない事で他社にユーザーを取られるデメリット vs 出すデメリット」

検討ポイント4:同時発売モデルの数増加による影響

また、少し難しい話にはなりますが、Apple社には、同時に開発したり発売したりするモデルを一定の数(種類)にまで絞り込もうとする力が働きます。

製品の種類を絞り込まないといけない理由は色々とありますが、「発売後のサポートの事を考えると、多くの種類を出したくない」「売る為の費用を少数の製品に集中する事で、効果的に販売促進をしたい」などが分かりやすいでしょうか。

他にも、通常、開発や生産の関係でも種類を絞り込むメリットはあり、そういった点も影響します。

また、そもそも、Apple社の能力をもってしても、同時に発売出来るモデルの数には制限があるかもしれません。

現在、前身であるiPhone SEの発売は止まっています。Apple社のホームページを見ても、販売ページには掲載すらされていません(2019年4月頭現在)。この為、もし、iPhone SE2を発売すれば、同時に販売する製品の種類を増やす事になるでしょう。

こうした点から、製品の種類を増やす事によるデメリットについても検討は行われるでしょう。

第四のポイント
「発売するモデルの種類を増やすメリット vs デメリット」

iPhone SE2発売に関する検討ポイント中間まとめ

以上、こうしたポイントが、基本的な検討の軸となるでしょう(この後、第五以降のポイントも指摘しますので、検討ポイントはこれで終わりではありません)。

そして、こうした検討における判定結果は、時間と共に変化します。

例えば、何らかの事情で、予定していた新製品が発売出来なくなれば、第四のポイントの判定は大幅に変わります。むしろ、何でも良いから新モデルを発売したいとApple社が考えてもおかしくないでしょう。

また、当たり前ですが、競合製品の状況(市場に、ユーザーが買い換えたいと思う他社製の製品があるのかどうか)によって、第三のポイントの判定は変わるでしょうし、製品に使われる材料の価格変動などによって、第二のポイントが影響を受ける事もあるでしょう。

Apple社としては、発売出来る準備だけはしておくが、こうした情報を分析しながら、iPhone SE2を発売する時期を見計らっている(または、最終的には発売しない)可能性もあると思われます。

検討ポイント5:販売後の継続収益

さて、通常の製品に関する分析であれば、また、数年前のApple社の製品に対してであれば、検討のポイントとして私が挙げるのは、ここまでです。

しかし、今回は、もう一つ、検討されるかもしれないポイントを挙げてみたいと思います。

それは、「iPhoneを売る」という事による直接的な収益とは関係ない面で、「Apple社がなんらかの判断する可能性」についてです。

実は、Apple社はハードウェア(スマホなどのモノ)を売る会社から、そのほかの収益によって稼ぐ会社に変化しようとしています。

とはいえ、iPhoneは、その新しい収益においても、重要な役割を果たします。

Apple社は、iPhoneを買ったユーザーに対して、「iPhoneで聞ける曲を売る」「iPhoneで使えるアプリを売る」「iPhoneで契約出来る定期サービスを売る」といったセールス(売り込み)が出来るからです。

こうした事を踏まえると、もしかすると、「iPhoneを売る」という事に関する判断には、「そうした収益にどのような影響があるか」という点を関係させている可能性も考えないといけないのかもしれません。

iPhone SE2で期待されている特徴は「小型である」という部分ですが、もしかすると、他のモデルと比べて、「小型である」という所から来る制限によって、搭載出来る機能に制限があるかもしれません。

また、この「小型である」という特徴は、現在のところ、「画面の大きさが小さい」という特徴を意味します。もしかすると、ユーザーが使うスマホの画面の大きさによって、ユーザーの消費傾向には影響があって、小型のモデルをAppleは売りたくないと考えているかもしれません。

すなわち、ユーザが大型のスマホを使うようになると、自社のサービスに多くの金を費やしてくれる、という裏付け(データ)があるのかもしれません。

なお、私はこうした事を裏付けるデータを何か持っている訳ではありませんし、誰かから、そうした話を聞いた訳でもありません。念のため。

第五のポイント
「販売した後の自社の収益の事を考える」

検討ポイント6:自社ブランドイメージへの影響

他の要素と比べると、判断に与える影響は小さいでしょうから、書くかどうか迷ったのですが、一応、最後にこれも付け加えておきます。

Apple社は、「スマホは大きい方が今のトレンドに合っている」と考えているかもしれません。トレンドというのは、単に求めている人が多い、という意味ではなく、おしゃれとか、そういった意味でのトレンドです。

そうした場合、Apple社がイメージを重要視する会社である事は間違いないようですから、「大きいスマホを売っている方が、自社のイメージにあっている」「小さいスマホを売って、イメージを悪くしたくない」と考える可能性もあるのかもしれません。

また、「少しでも大きいモデルの方が、製品についているApple社のロゴが外部から良く見えて宣伝効果が高い」という事を考えている可能性も、要素としては、一応、挙げられます。

もちろん、ケースなどで隠れる事も多いでしょうし、そんなに小さい事を気にするとは考えづらいとは思いますが。

第六のポイント
「自社イメージのアピールの観点から考える」

 

かなり細かい点まで考えてみましたが、これで以上です。

そして、私が提示出来るのは、ここまでです。

読者の皆さまの方が事実関係についてお詳しいと思いますので、ここから先の検討はお任せします。

iPhone SE2、皆様は出ると思われますか?