ビジネスコンサルティングの現場から

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AppleはiPhone miniを復活させるのか?iPhone miniの今後は?

iPhone mini

先日、iPhone 15シリーズが発表・発売されましたが、miniのラインナップはありませんでした。

これに伴い、iPhoneの小型サイズのラインナップであるminiの販売も終了する事になりました(miniは2世代前のiPhone 13シリーズが最後となった為)。

日本ではiPhoneの人気が根強く、また、ビジネスの現場では小型のスマホを好む人も多いように思います。

miniが無くなってしまう事について、残念に思う声も聞こえています。

そこで、「Appleは、今後、iPhone miniを復活させるのか?」というテーマで記事を書いてみる事にしました。

iPhone miniとは

最初に、iPhone miniというラインナップについて、簡単に説明しておきましょう。

iPhone miniは、iPhoneシリーズの中で最も小型サイズのラインナップとして、iPhone 12およびiPhone 13のシリーズにおいて設定されていました。

iPhone 12 146.7 mm * 71.5 mm * 7.4 mm (162 g)
iPhone 12 mini 131.5 mm * 64.2 mm * 64.2 mm (133 g)

iPhone 13 146.7 mm * 71.5 mm * 71.5 mm (173 g)
iPhone 13 mini 131.5 mm * 64.2 mm * 7.65 mm (140 g)

※高さ * 幅 * 厚さ (重量)

見比べて頂ければ、miniの小ささ・軽さは一目瞭然と思います。

そのminiのラインナップが、2022年に発表・発売されたiPhone 14のシリーズからは無くなってしまい、2023年のiPhone 15のシリーズでも復活しませんでした。

この為、miniの販売全てが終了してしまったのです(在庫分の販売は一部流通経路で続く可能性があります)。

ちなみに、iPhoneには、同じく小型のラインナップとしてSEというシリーズもありますが、miniとは少し違う位置づけになっています(顔認証ではなく指紋認証が採用されている、など)。

iPhone mini復活を検討するポイント1:販売見込量

ここからが本題です。iPhone miniの復活についての判断をApple社が行うにあたり、どのような検討が行われる可能性があるのか、という点について検討していきたいと思います。

まず、Apple社がiPhone miniの今後について検討する際、最も基本的な判断材料となるのは、「自社が期待するほど売れるかどうか」という点についてでしょう。

当たり前のことですが、Apple社が売れると思わなければ、iPhone miniは発売されない可能性が高いからです。

そして、このiPhone miniという製品は、2つの特徴を持った製品群になります。

①小型である
②比較的、廉価である(値段が安い)

iPhone miniへの需要については、この特徴のうち、「小型である」という点について、どの程度の需要があるか?で決まる部分が大きいと言えるでしょう。

この点については、(少なくとも、世界的には)過去、miniの販売はあまり芳しくなかったらしい、という報道があります。

この為、「小型スマホに対する爆発的な需要は見込めない」と考えるべきかもしれません。

ただ、ビジネスで小型スマホを使っている人からのニーズを聞いている限り、一定の需要がある事も、また、間違いないように思われます。

実際、「中古市場では、最近、miniの売れ行きがかなり良い」という報道もあります。

そのような意味では、「ある程度、需要を貯めれば(買い換え需要が貯まれば)、一定の需要は期待できる」とは考えられるかもしれません。

第一のポイント:「十分に売れるのかどうか」

iPhone mini復活を検討するポイント2:他の自社製品への影響

では、iPhone miniが売れそうであれば、Apple社はiPhone miniを復活させるのでしょうか。

そんな単純な話ではないかもしれません。

Apple社は、「iPhone miniを出さなくても、自社の他の製品をユーザーが買ってくれれば良い(買い換えてくれれば良い)」と考える可能性があるからです。

iPhoneユーザーは、iPhoneの中で次の製品を選ぶ傾向が比較的強いと言われています。

それが本当であれば、ユーザーの為に用意するのは、別にiPhone miniでなくても良い可能性があるからです。

この場合、重要な事は、Apple社自身が「iPhone miniと他のiPhoneのモデルのどちらを売りたいと考えているか」という事です。

そして、その検討の上では、この製品が「(比較的)廉価である」という特徴が影響する可能性があります。

一般的に、廉価版は、そうでないモデルに対して利益が小さいと言われています。

この為、同じように売れるのであれば、廉価版ではないモデルを売りたがる企業が多いのです。

特に、ユーザーにとって、スマホは「iPhone miniを買って、さらに、他のiPhoneのモデルも買う」という商品ではなく、「iPhone miniを買ったら、他のiPhoneはしばらく買わない」と考える製品群です(もちろん、そうでないユーザーもいるでしょうが、それは例外とします)。

この為、自社の売上金額を伸ばしたい企業からすれば、「単価が安い製品ではなく、少しでも高い製品を売りたい」と考える事が多いのです。

もし、Apple社も同じであれば、「iPhone miniと、その他の自社製品群で、どちらが儲かるか?」という点を重視して、iPhone miniの復活について判断する事になるかもしれません。

結果、Apple社はあまり積極的にはiPhone miniを発売しようとは考えないかもしれません。

第二のポイント:「自社の他の製品と比べて、どちらが儲かるのか」

iPhone mini復活を検討するポイント3:他社へのユーザー流出

では、自社の他のモデルを売りたいとApple社が考えていた場合、iPhone miniは出ないのでしょうか。

もちろん、そうとも限りません。

iPhoneのユーザーは、比較的、同じiPhoneのシリーズで次に買う製品を決める傾向が強いとは言われています。しかし、これも「必ず」ではありません。

自分の好みにあったモデルがiPhoneの中になければ、当然、ユーザーはApple社以外の製品の検討も始めるでしょう。

他の会社にユーザーを取られるくらいであれば、廉価版でも良いのでApple社としては売りたいと考えるでしょう。

この点については、各時点での他社の製品ラインナップの魅力度(その時点でのiPhone miniの利用者が乗り換えたいと思うような製品が他社にあるかどうか?)で判断される事になるでしょう。

第三のポイント:「出さない事で他社にユーザーを取られるデメリット vs 出すデメリット」

iPhone mini復活を検討するポイント4:同時発売モデルの数増加による影響

また、少し難しい話にはなりますが、Apple社には、同時に開発したり発売したりするモデルを一定の数(種類)にまで絞り込もうとする力が働きます。

製品の種類を絞り込まないといけない理由は色々とありますが、「発売後のサポートの事を考えると、多くの種類を出したくない」「売る為の費用を少数の製品に集中する事で、効果的に販売促進をしたい」などが分かりやすいでしょうか。

他にも、通常、開発や生産の関係でも種類を絞り込むメリットはあり、そういった点も影響します。

そもそも、Apple社の能力をもってしても、同時に発売出来るモデルの数には制限があるでしょう。

こうした点から、製品の種類を増やす事によるデメリットについても検討は行われるでしょう。

第四のポイント:「発売するモデルの種類を増やすメリット vs デメリット」

※ちなみに、「小型サイズのスマホの需要に対応はしたいが、2種類以上のモデルは出したくない」とApple社が考えていた場合、「(同じく小型・廉価な位置づけである)SEとの統合」といった判断が行われる可能性もあるでしょう。

iPhone mini復活を検討するポイント5:販売後の継続収益

さて、通常の製品に関する分析であれば、ここまでの検討で十分でしょう。

しかし、今回は、もう一つ、検討されるかもしれないポイントを挙げてみたいと思います。

それは、「iPhoneを売る」という事による直接的な収益とは関係ない面で、「Apple社がなんらかの判断する可能性」についてです。

実は、Apple社はハードウェア(スマホなどのモノ)を直接販売する以外にも、iPhoneのユーザーから様々な収益を得ています。

具体的には、iPhoneを買ったユーザーから、「iPhoneで聞ける曲を売る」「iPhoneで使えるアプリを売る」「iPhoneで契約出来る定期サービスを売る」などの収益を得ています。

こうした事を踏まえると、もしかすると、「iPhoneを売る」という事に関する判断には、「iPhoneを販売した後に得られる関連収益にどのような影響があるか」という点が関係する可能性があります。

具体的には、「iPhone miniが小型である」という特徴が、その判断に影響する可能性があるかもしれません。

例えば、Apple社が、今後売り込みたいサービスの中に、大きめのディスプレイがある事を前提にしたものがあったり、小型のスマホには搭載できない機能を前提にしたものがあったり、といった事情がある場合、Apple社としては「小型のスマホを出したくない」と考えるかもしれません。

逆に、小型のスマホだからこそ売りやすいサービスがある場合には、その逆の結論が導き出される可能性もあるでしょう。

第五のポイント:「販売した後の自社の収益の事を考える」


かなり細かい点まで考えてみましたが、今回の検討は以上です。

iPhone miniが復活するのかどうか。それは、数年後にははっきりする事でしょう。

ただし、その時には、技術革新によって、スマホのサイズに対する考え方自体が大きく変わっているかもしれません。

また、その時に、「日本におけるiPhoneの存在感」がどうなっているか。

そもそも、「スマホという製品の位置づけ」自体がどうなっているか。

変化が早い製品群だけに、本来は、むしろ、これらの点に注目すべきなのかもしれません。


※当記事は、2019年4月12日に公開した記事「『AppleはiPhone SE2を発売するのか』を経営の視点から分析する」を修正し、iPhone miniの今後(復活)について検討する記事として再構成したものです。