DX(デジタルトランスフォーメーション)の概念を説明するのに、苦労していた時期がありました。
その時は、どうしたものかな…と悩んでいたのですが、
「多くの方がDXだと思っているが、実はDXではないもの」
を先に説明する事で、理解して貰いやすくなる事に気が付きました。
特に、「DXに至る3つの段階(ステップ)」という言い方で説明させて頂く事で、最近は、誤解を防げる自信がついてきましたので、ここでもご紹介させて頂こうと思います。
これさえ覚えておけば、DXに詳しくない人に会った時に、「私はDXを良く理解しているぜ!」という雰囲気で喋れる事、間違いなしです。
※各用語の定義にはばらつきがあり、ここでご紹介する定義以外の定義も存在します。
まず、DXを相手に理解して頂く為には、
「DXは、単純なデジタル化ではない」
という大前提を理解して頂くことが大切です。
従来から続くITの推進活動と、DXが同じもののように考えられてしまっている事も多いからです。
ですから、逆説的ではあるのですが、
「皆さまがイメージされているものの中で、デジタル化に含まれないものがDXだと思って下さい」
という説明が、DXを理解して頂く上では有効なようです。
とは言っても、その、「デジタル化」の説明にも苦労してきたのですが、デジタル化を2つに分類して説明すると、理解して頂きやすい事が解りました。
具体的には、「デジタル化」は「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」に分けて説明する事が可能です。
日本語(カタカナ)で見ると、かなり似た用語なのですが(一見すると、同じ用語に見えてしまうほどです)「デジタライゼーション」には、「デジタイゼーション」に、一文字、「ラ」が加わっています。
では、それぞれ、どのような意味か。
まず、デジタイゼーション(digitization)とは、「情報をデジタル化する」という事を指します。
具体的には、
・紙資料のデジタル化(スキャナ取込、システムへの打ち込みなど)
が、デジタイゼーションの代表例となります。
とにかく、アナログの資料をデジタルデータに変換する事を指します。
次に、デジタライゼーション(digitalization)ですが、この用語は、「業務をデジタル化する」という事を指します(調査会社のガートナー社が定義したと言われています)。
具体的には、
・業務に関するシステムの導入
が、デジタライゼーションの代表例となります。
導入するシステムは、ERPが良く例として挙げられますが、業務のデジタル化の為に導入される仕組みであれば、何でも問題ありません(パソコンを使うシステムである必要もありません)。
そして、業務をデジタル化する為には、原則、データのデジタル化が必要となりますので、
「第一段階:デジタイゼーション」
→「第二段階:デジタライゼーション」
という順序でデジタル化は進んでいく事が多いと言えます。
さて、ここまで説明させて頂くと、ほとんどの方は、
「全てのIT化は、どちらかに含まれてしまうじゃないか!」
という反応をされます。
実は、その反応こそが重要であり、また、DXを理解して頂く上での鍵となるようです。
(その事に、説明がうまくいかない経験を繰り返して、ようやく気付きました)
ご存じの方も多いとは思いますが、
「DXとは、既存のデジタル化を超えて、デジタル技術を活用する事で、既存の業務の進め方などを抜本的に見直す」
という事を指します。
ですから、単に、「紙の書類をデータ化する」や「業務をシステムで行うようにする」といった変化は、単なる「デジタル化」であり、DXではないのです。
ここまでの内容を踏まえ、「企業のIT化は、以下の3段階で進む」というような文脈で説明すると、多くの企業関係者には納得して貰いやすいようです。
第一段階:デジタイゼーション(情報のデジタル化)
第二段階:デジタライゼーション(業務のデジタル化)
第三段階:DX(デジタル化の先にある変革)
皆さまも、細かい内容については忘れてしまって問題ないと思いますが、DXに至る、この3段階の概念だけでも頭に残しておいて頂ければ、と思います。
そうすれば、DXの本質については間違えずにいて頂けるように思います。
貴方が専門家でもない限り、大切なのは、用語を覚えておく事ではなく、DXの本質を間違えずに理解しておく事だと思いますので。
※なお、この3つの段階については、私が発見したものではなく、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会」の報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』でも紹介されています。
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html