日本の年金制度は非常に複雑です。
この為、誤解をされている方も多くいらっしゃいます。
年金について話をさせて頂く中で、「他にも誤解されている方が多いかもしれないな…」と思う事もあります。
今日は、その中から、特に興味を持って頂けそうなポイントを、クイズ形式でまとめてみました。
題して、「誤解で損をしない為の、日本の年金受給についてのクイズ10問!」です。
目次の形式で、最初にQ(質問)を書きますので、皆さま、A(回答)を考えてから、本文を読み始めて頂ければ、と思います。
※厚生年金・国民年金のみに加入している場合を前提としています。また、2021年11月時点での仕組みに基づいています。
- 老後の年金は、何歳から貰える?
- 老後の年金を貰う為には、最低、何年の加入(保険料の支払)が必要?
- 繰り上げ受給によって減らされた年金額(月額)は、何歳になると元に戻る?
- 繰り下げ受給で年金額を増やしたい人は、60代前半の年金は貰えない?
- 遺族年金を貰えるのは女性だけ?
- 夫には長生きして貰わないと、妻が貰える遺族年金が少なくなる事がある?
- 妻には長生きして貰わないと、夫が貰える遺族年金が少なくなる事がある?
- 子供が大きくなると、遺族年金が減る事がある?
- 子供が結婚すると、遺族年金が減る事がある?
- 収入が多い場合、年金額を減らされるのを避ける為に繰り下げ受給するべき?
老後の年金は、何歳から貰える?
これは基本中の基本ですね。
といいながら、実は、回答が難しい質問だったりもします。
まず、現在の原則としては、老齢年金は65歳からの受給となります。
ですから、65歳と回答された方が、一応の正解とはなります。
しかし、実は、年齢と性別によっては、60歳代前半から貰える方もいらっしゃいます(条件によって、貰い始める事が出来る年齢や内容は異なります)。
そして、その条件は、その方の経歴によって違っていたりもします(例えば、会社員と公務員では、微妙に条件が違うのです)。
ですから、もしかして?と思った方は、詳しい人に聞いて確認してみて頂いた方が良いかもしれません。
老後の年金を貰う為には、最低、何年の加入(保険料の支払)が必要?
答えは10年。
25年でしょ?と回答された方。貴方は数年前までなら正解。
実は、2017年に、必要となる期間が25年から10年に短縮されました(細かく言うと、保険料を支払っていなくても、カウントして貰える期間もあったりします)。
こんな基本的な事まで、年金は良く変わるのです(だから、誤解も多い)。
ちなみに、「年金なんて本当に貰えるかどうか解らないから、これまで、保険料は払わなかった」という方(特に、自営業の方ですね)、期間が短縮されたので、もう少しだけ頑張って払うと、年金が貰えるかもしれません。
また、加入期間が足りない方の為に、加入期間を増やす方法も用意されているので、今から払ってみようかな?と思われた方は、詳しい人に相談してみて下さい。
繰り上げ受給によって減らされた年金額(月額)は、何歳になると元に戻る?
答えは、「生涯、戻らない」。
ほとんどの方にとっては、「戻る訳ないじゃないか」という感覚だと思いますが(途中で元に戻るなら、繰り上げた方が確実に特になるはず)、時々、間違って理解されている方にお会いします。
繰り上げをお考えの方は、お気を付け下さい。
ちなみに、繰り上げ受給というのは、本来は65歳からしか貰えない年金を60歳~65歳の間に貰い始められる仕組みの事です。
早めに貰い始める事が出来る代わりに、貰える額が減らされてしまうのです。
なお、「死んでしまったら、貰えないから、早めに貰っておきたい」とおっしゃる方はいらっしゃいますし、その考え方も間違いではありません。
しかし、老齢年金を限度まで繰り上げ受給(60歳から受給)してしまうと、自分の年金は、一生、65歳から貰った場合の受給額の30%引になってしまいます。
しっかりと悩んでから決めるようにして頂きたいと思います。
繰り下げ受給で年金額を増やしたい人は、60代前半の年金は貰えない?
「60代前半の年金を貰っていても、繰り下げは出来る」が答えです。
60代前半に出る年金は、繰り下げと関係なく貰えます。
「年金を出来る限り増やしたいから、70歳になるまで年金は貰わない」という考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、「65歳までの年金と65歳からの年金は、全く別のもの」と考えて頂いた方が良いと思います。
ただし、そもそも、60代前半に年金が出る対象者は限られます(色々と条件があるのですが、今、50代前半より若い方は、まず出ないと思って頂いて結構です)。
また、遺族年金とか障害年金とかの受給は、また別の話になります(上記の説明は老齢年金のみ)
遺族年金を貰えるのは女性だけ?
答えは、「男性も遺族年金を貰える」です。
昔は、厚生年金に加入されていない方(自営業)が亡くなられた場合、基本的な遺族年金は女性しか貰えませんでした(この部分の男女差は2014年に廃止され、男性でも出るようになりました)。
ですから、以前の男女差をご存じの方は、「遺族年金は男性には出ないのだろう」と思い込まれてしまっている場合があります。
お気を付け下さい。
なお、ちょっとややこしいのは、今でも、遺族年金には、女性しか貰えない場合(部分)もあります。
ですから、「女性しか貰えない遺族年金もある」と回答された場合、それも正解です。
夫には長生きして貰わないと、妻が貰える遺族年金が少なくなる事がある?
答えは「Yes」です。
まず、長く加入していた方が年金額が上がる面があるのですが、それ以外に、夫が亡くなった時の妻の年齢によって、遺族年金が貰える年数が変わる事があります(妻が若いと、早めに打ち切られる事がある)。
子の有無などによっても条件が変わるので、ここで詳しい条件は書きませんが、自分の年金額を増やす為にも、夫には長生きして貰って下さい。
妻には長生きして貰わないと、夫が貰える遺族年金が少なくなる事がある?
一つの上のQの逆パターンですね。
これも、答えは「Yes」です。
夫と妻で理由(仕組み)は違うのですが、こちらも同じような話があります。
妻が亡くなった時の夫の年齢によって、遺族年金が貰えない部分が発生する事があります。
具体的には、妻が死亡した時に夫が55歳になっていないと、貰えない年金があります(ただし、夫が貰えなかった分を、他の親族が代わりに貰える場合もあるので、更にややこしいのですが)。
子供が大きくなると、遺族年金が減る事がある?
答えは「Yes」です。
子供がいるからこそ貰える、という遺族年金の部分があります。
そして、子供が一定の年齢(原則、18歳の年度末)になると、遺族年金においては、「子供がいる」とは扱われなくなります。
子供の年齢を止める事は出来ませんが、子供がいなくなると年金が受け取れなくなります。子供は大事にして下さい。
子供が結婚すると、遺族年金が減る事がある?
これも、答えは「Yes」です。
上のQで説明した通り、子供がいるからこそ貰える、という遺族年金の部分があり、その部分は、年齢の他に、子供が結婚した場合も、打ち切られてしまいます。
子供が親から離れたら、親が必要とするお金は減るでしょ?という考え方なのでしょうね。
ですから、子供がいる事で貰えている年金がある場合で、遺族年金を減らしたくない為には、子供に結婚を待って貰う必要がある、という事になります。
収入が多い場合、年金額を減らされるのを避ける為に繰り下げ受給するべき?
答えは、基本的に「No」です。
まず、年金(老齢年金)を受給中に、他に収入があると年金の額が減らされてしまう、という仕組みがあるのは本当です。
そして、繰り下げをして年金を受け取らない場合、繰り下げが完了するまでの期間、年金以外の収入だけを受け取って過ごす事になります。
ですから、その期間中、「後で満額の年金が貰えるのだろう」と思ってしまうのも仕方がない気はします。
ですが、実は、「収入が多かった事で減らされた分の年金額(割合)」は、裏側でしっかりと計算されており、繰り下げ後に貰える金額に反映されてしまいます。
ですから、繰り下げても、年金額の減額を完全に回避する事は出来ないのです。
計算はややこしいので、ここでは省きますが、誤解している人が多い点だと思います。
お気を付け下さい。
なお、仕組みを理解されたい方は、以下のURLからご確認下さい。
https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/rourei/rourei-kousei/kurisage/20140421-01.html
以上、10問でした。
気になる点があれば、ぜひ、詳しい人に相談して、確認してみて下さい。