ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

そろそろ消費税は「消費者が負担する」という考え方は限界かもしれない

消費税の引き上げ 消費税についての矛盾 消費税の本当の負担者は誰か

 

消費税の10%への引き上げ、今回は本当に実行されそうな情勢ですね。

嫌だなぁと思われている方も多い事でしょう。

しかし、実は、今回の消費税のアップでは、「『消費税が嫌われている理由』が少し変化してきているのではないか?」と感じていたりもします。

ですので、今日は、その辺りのお話を。

消費税はなぜ嫌われるのか

皆さまは、「消費税が、ほかの税金と比べても嫌われている理由」について考えたことがあるでしょうか。

多くの方にとっては、実感されている内容そのままではありますが、

・ほぼ例外なく全国民が、
・ほぼ、あらゆる支払いの度に
・税金を支払わされる

のが消費税であり、ほかの税金と比べて、その支払いを意識しやすいのが消費税の特徴です。

そして、消費税の税率がアップすれば、そのアップ分も意識しやすい事になります。

これは当たり前の事だと認識されている方がほとんどでしょう。

しかし、この後、この原則、少しだけ「揺らぐ」ことになります。ですので、しっかりと覚えておいて下さい。

消費税が嫌われないようにする方法

では、仮に、消費税が嫌われないようにするにはどうすれば良いでしょうか。

先ほどの話を踏まえれば、答えは簡単ですね。

答え:消費税を消費者が負担しないようにすれば良い

です。

消費税を消費者が負担しない?

不思議に感じた方もいらっしゃるでしょう。

しかし、本来、税金は消費者だけが払うものではありません。あらゆる商品やサービスの価格には、販売している企業が負担している税金が間接的に上乗せされていると考えられます。

この観点からすれば、消費税を消費者が負担せず、販売した側が負担すると決める事も不可能ではない気がしませんか?

ちなみに、「売上の金額に応じて企業が支払う税金」という概念は日本においても存在します。別に、特別な考え方ではありません。

ただ、消費税を消費者以外が負担する事になった場合、「消費税」という名前は変えた方が良いかもしれませんが。

消費税の原則

これまで、消費税に関しては、

・消費者から○%分を本体価格とは別に取る

という考え方で運営されてきたように思います。

もし、こうしなければ、消費税アップの際、消費者の購買意欲ダウンを恐れた企業が、

・税込み価格を維持

・税率アップ分をポイント還元する

などの施策に走り、企業の収益がダウンしてしまう事は避けられなかったでしょう。

また、これまでの消費税引き上げの際、

・消費税分を割り引くような宣伝・広告は禁止します

といった通知が国から出ていたのを覚えている方もいらっしゃると思います。

こうした方針の徹底によって、企業の負担は増えず、「消費税のアップ分は消費者が100%負担する」という方針が徹底されてきた訳です。

ですから、消費税の存在によって、消費者の購買意欲が低下し、販売量が落ちる事はあっても、あくまで、本体価格に対応する消費税分は、消費者が完全に負担している事になっていました。

今回の消費税アップの裏で起きている変化

しかし、この大きな前提が、今回の消費税アップでは、こっそり変化しているように感じるのです。

すなわち、事実上、「消費税の一部を企業が負担する」という考え方がまかり通るようになっているように感じるのです。

皆さま、お気づきになっていたでしょうか?

それが、飲食物における「軽減税率」についての対応です。

さて、皆さまに確認問題です。

弁当屋で、本体価格100円の商品(飲食物)を買った場合、税込みでいくら払うことになるでしょうか?

答え:消費税が10%に上がった後でも、実は、飲食物には軽減税率が適用されて108円

です。

しかし、その弁当を店内で食べるとどうなるでしょう?(イートイン)

答え:軽減税率は適用されず、10%の消費税がかかってしまい、110円

そして、これまでの考え方では、この場合、消費者から110円を払って貰うようにするのが当たり前でした。

しかし、実は、今回、そうした2重価格はあまりに複雑、ということで、「適用される税率に関わらず、同じ税込み価格にする」という方針が容認されています。そして、実際、大手チェーンでも、そうした方針を採用すると既に表明している所が現れています。

先ほどの例で、店が税込み価格108円で統一したケースを考えてみましょう(持ち帰りでもイートインでも、同じ108円)。

この場合、イートインの場合は、108円÷1.1で、企業の手取りは100円を割り込んでしまいます。

あれ?と思って頂けましたでしょうか。

消費税は消費者が払うという原則は継続されるのか

恐らく、国側(税務署側)は、「これまでと方針を変えている訳ではない」と主張することでしょう。もちろん、それも間違いではないと思います。

イートインと持ち帰りで、違う税抜き価格を企業が設定している、と考える事が出来るからです。

しかし、これまで同一金額で販売してきたのであれば、その会社は、これからも同じ金額で販売するつもりであったと考えるのが自然でしょう。

であれば、先ほどのケースにおいては、事実上、企業が消費税の一部を負担しているように見えないでしょうか。

これからの消費税はどこにいくのか

これから、消費税がどうなっていくのかは解りません。

しかし、今後も消費税が上がるのであれば、より軽減税率が複雑になっていく可能性は否定できないでしょう。

そうした中では、「税率が違っても、税込み価格を統一させたい」という企業ニーズは、より強く出てくるでしょう。

そして、今回、「消費税は、消費者に完全負担させる」という考え方が少し崩れた事で、「消費税の一部は、企業側が負担する」という考え方が一般的になっていくかもしれません。

そうなると、冒頭の「消費税が消費者に嫌われる理由」は、少し変わってきてしまいますね。

それが良いことなのか、悪いことなのか。それは、また難しい問題です。

しかし、今回の消費税アップにおいて、その大きな変化の一歩が静かに踏み出されたのではないか、と思っていたりします。