ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

頭の体操、「六本木で起業すれば成功する」は本当か

起業を考える人がイメージする六本木の街並み


先日の頭の体操の記事について、「少し難しかった」という意見も頂いたので、もう少し簡単なものを。

先日、ある媒体で「港区女子」が特集されていました。

それを見ていて、随分昔の事ですが、一人の相談者の事を思い出しました。

起業に関する相談を受けていたのですが、彼は、

「起業するなら、絶対に六本木!」

と強硬に主張していたのです。

皆さんは、なぜ、彼が、六本木にこだわったかお解りですか?

ちなみに、「ヒルズ族」という言葉が世間で騒がれていた頃です。

今日は、改めて読むと、ちょっと馬鹿っぽく感じる事かもしれませんが、「事案の真っ只中にいる人にとっては、冷静に考えるのが難しいものです…」という事を良く表している、ちょっとした小話です。


彼に、私は質問しました。

「どうして、六本木にこだわるのですか? 家賃も決して安くないし、オフィスを六本木に構える必要性が理解出来ないのですが?」

彼は、こう応えたのです。

「だって、六本木にオフィスがある会社は、みんな成功しているでしょ? だから、違う場所にオフィスを構えて、失敗したくないんだよ。」

うーん。と、悪い意味で唸ってしまいました。

確かに、当時、報道されていた「羽振りの良い会社」の多くは、皆、六本木(港区)が拠点と報じられていました。

どうやら、彼はそれを聞いて、六本木にオフィスを構えれば、自分も成功出来る、と思い込んだようなのです。

皆さま、「彼のどこが間違っているか」はお解りですよね?

この後、私も、頭を抱えながら、彼を説得する事になりました。


しかし、この「六本木なら成功出来る事件」(名前をつけると、大仰ですね)、これで終わりではなかったのです。

実は、この後、違う方からも、同じような相談があったのです。

ただ、彼は、少し違いました。

彼は、こう聞いてきたのです。

「日本でIT企業と取引するなら、やはり六本木で起業すべきなのでしょうか?」

私は答えました。

「そんな事はないと思いますよ。勿論、取引先との物理的な距離が大事なケースもありますが、今回のケースでは、どちらにせよ、想定されている取引先とは、こまめにミーティングを開いたり、モノを届けたり、という関係にはならないでしょうから。」

それでも、彼は、六本木にこだわりました。

この、「こだわる」という所だけは、前回の彼とそっくりでした。

不思議に思って、少し突っ込んで聞いてみた所、今回の彼が「六本木に拘る理由」が判明しました。

彼は、本か何かで、

「アメリカで起業するなら、シリコンバレーでなければダメだ」

という事を学んでいたのでした。

そして、様々な人に聞いてまわった結果、「日本におけるシリコンバレーは六本木である」という結論に至っていました。

今は少し事情が変わってきていると思いますが、当時、アメリカでIT関係の起業をするのであれば、私もシリコンバレーでの起業に賛成でした。

そして、「日本におけるシリコンバレーが六本木だ」という彼の認識にも、当時、反論する事はありませんでした。

しかし、それでも、彼には、六本木での起業を勧めませんでした。

「アメリカならシリコンバレー」だったとしても、やはり、私にとっては、「日本では六本木」とはならなかったのです。


なお、この2つの事案、過去の事案として考えて頂いたこともあって、「何を馬鹿な事を…」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、案件の当事者だと、そして、時代の流れに翻弄されている中だと、意外と、冷静な判断は難しいものなのです。

そして、後から考えてみれば、「どうして」と思うような判断を自分では見直せない事もあるものなのです。

皆さまもお気を付け下さい。

なお、こうした思い込みで失敗するのが怖い場合には、起業相談を活用するのがお勧めです。無料の起業相談もありますので、起業される際にはネットで調べる等してみて下さい。