ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

コックとウェイターは、お互い、相手の時給の低さに不満があるらしい

シェフとウェイターの賃金(時給)

 

突然ですが、皆さまは、以下の二つの仕事、どちらの時給が高いと思いますか?

または、どちらが「高くあるべき」だとお考えですか?

 

①オーナーレストランの厨房(コック見習い

②チェーンレストランの給仕(ウェイター)

 

今日は、それぞれの店長(オーナー)が、

自分が雇っている方こそ、低い給料で良いはず

と思っていた、というお話です。

この話、給料水準について考える、良い機会にして頂けるかもしれません。

※学生の方は、バイトの求人広告に載っている時給をイメージして読み進めて頂くと良いと思います。

 

まず、それぞれの仕事内容の紹介ついでに、ことの発端をご紹介しましょう。

ある日、レストランのシェフ兼オーナーの方とお話させて頂く機会がありました。

このシェフは、若い頃から修行し、随分前に自分で店を開いた人です。

店はチェーン化はしておらず、一軒だけです。

昔ながらの料理を提供して、地元の人から愛されています。

ですが、最近、調理を手伝うスタッフが集まらず、困っているそうです。

オーナーシェフである彼に言わせると、

十分な時給で求人広告を出しても、人が集まらない

のだそうです。

 

このような会話があった後、しばらくしてから、今度は、チェーンレストランの店長とお会いする機会がありました。

ちょうど、彼からも、同じような話が出ました。

人が集まらないから、時給を上げてウェイターの募集をかけ直している

のだそうです。

 この店長、ウェイターとしても働いているので、人が集まらないと大変そうです。

 

どこも同じなのだな、と思いながら、先日のシェフの話をしてみる事にしました(もちろん、先日のシェフとの話が機密扱いでない事は確認してあります)。

「○○(レストランの名前)さんの所でも、求人には苦労されていましたよ」

そうすると、このチェーンレストランの店長、こう仰います。

「そりゃそうでしょう。ああいうレストランの厨房は大変だからね。相当な額を提示しないと、人なんか来ないんじゃないの?」

ちなみに、このチェーンレストランが募集しているウェイターは、仕事内容が整理されており、マニュアル通りに単純作業が出来れば良いのだそうです。

 

続いて、この店長、人が良いのか、こうも仰いました。

「うちが出している求人の条件(時給)、向こうの店に教えてあげて下さい。たぶん、ああいう店は、周りが提示している時給が上がっている事も知らないのでしょう。時給ベースで、相当な差を付けないと、向こうは、人、採れないと思いますよ。」

 

さて、お許しを頂いたので(求人条件は大きく張ってあるので、本当は秘密でも何でもないのですが)、早速、先日のオーナーシェフにお伝えする事にしました。

「今、チェーンレストランのウェイターの募集は○○円で出しているそうですよ。」

続けて、「結構な差を付けないと厳しそうですよ…」と言いかけた所、間髪入れずに、このオーナーシェフからは、

「そんなもんだろ? うちは、相当良い条件で求人をだしてるって事だな」

と返ってきました。

 

そんなに自信満々の返事が返ってくるとは思っていなかったので、意外に思いながら、それでも、

「ちゃんと、周りの求人募集の水準も確認されていたんですね。」

とお話しさせて頂き、これで、この話も終わりだな、と思いながら、念のため、

「ところで、チェーンレストランの求人とは、どの位、差を付けて、求人広告を出されているんですか?」

と聞いてみました。

 

そうすると、何と、

ほぼ同じだよ

と、このオーナーシェフからは返答が。

 

私は、良く解らなくなってしまいました。

それでも、何とか、

「ウェイターと同じだと、人は採れないかもしれませんよ」

とお伝えすると、今度は、このオーナーシェフ、急に機嫌が悪くなってしまいました。

 

そして、

本来、ウェイターの方が給料が高くて当然だろう!

と怒鳴られてしまいました。

皆さま、この意見の不一致、理由はお解りになりますか?

 

さて、早速、答え合わせといきましょう。

まず、チェーンレストランの店長が、

レストランの厨房の方が大変だから、ウェイターの方が時給が安くて良いはずだ

という意見なのは、皆さま、容易にご理解頂けたかと思います。

 

では、なぜ、オーナーシェフは、逆の意見だったのか。

これは、彼の台詞を、そのまま(一部抜粋)でご紹介しましょう。

「ウェイターは接客業だ。外見も問われる。変な格好なんてもってのほかだ。客への対応力も問われる。それに対して、厨房は俺が教えた通りに作業さえ出来れば良い。変なヤツでも大丈夫だ。どちらが採用が難しいかなんて、言うまでもないだろう。」

確かに、そう言われると、そういう部分もある気がしてきます。

 

そして、その後、もっと大事なポイントが解説される事になります。

「ウェイターは独立出来ない。特にチェーンなら、得られるスキルも限られるだろう。しかし、うちで働けば、数年後には自分の店が開けるくらいの実力がつく。本来、給料はタダで良いくらいだ。むしろ、授業料が欲しいくらいだ。」

 

確かに、「仕事の何を重要視するか」によって、結論は逆になるのかもしれません。

この話、意外と、重いトピックスであったようです。

皆さまは、どうお感じでしょうか。

 

そして、せっかく、当社の記事ですので、もう一点だけ。

とはいえ、実際には、オーナーシェフの店の求人には応募が来ていません。

オーナーシェフの先ほどの考え方が正しいのであれば、ウェイターと同じ時給であれば、仕事を求める人が押し寄せても良さそうなものです。

なぜ、現実には来なかったのでしょうか?

単に、オーナーシェフの意見が間違っていたのでしょうか?

特に、オーナーシェフが想定している若い人が、この条件を魅力的に感じないのは、どうして?

 

理由を考えるのは、それほど難しくないと思います。

しかし、この点を考えて頂くと、この話、レストラン業界だけに留まらず、さらに重いトピックスとして考えて頂けるかもしれません。