ビジネスコンサルティングの現場から

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血液検査の検査の正しい見方は?対応すべき項目に優先順位あり!

血液検査の結果の見方

日本では従業員に対する定期健康診断の実施が義務付けられています。

この為、血液検査の結果を定期的に確認する機会のある人は多い事でしょう。

しかし、複数の血液検査の異常値が見つかった場合、「どの血液検査の項目を重視すべきなのか」という点について、ピンと来る方は少ないのではないでしょうか。

この血液検査の異常項目の相関関係をシンプルに整理し、「何に対応すれば良いのか」という点を明らかにする考え方を知ったので、今日は、その考え方についてご紹介させて頂こうと思います。


その考え方を知ったのは、野口緑氏(大阪大学大学院公衆衛生学特任准教授)のセミナーでした。

この野口緑氏、スーパー保健師と呼ばれている事もある方のようです

この方が提唱している「血液検査の見方」には、素晴らしい所が二点あります。

まず、一点目。

「異常値が出る血液検査の項目を、体の悪化の段階(フェーズ)に分けて整理してくれている」という事。

そして、二点目。

「後のフェーズに属する血液検査の項目で異常項目(悪い項目)が見つかった場合、その前のフェーズで発生していた異常項目に対応するべき」という考え方を提唱する事で、「どの項目を重視して対応すれば良いのか?」という事を明確にしてくれている事。

提唱されている考え方は、言われてみれば当たり前の事にも思える内容ではあるのですが、「医療に詳しくない人でも、自分で考えやすい考え方」として整理して頂けているのは、素晴らしいと感じました。


では、具体的に、どのように血液検査の結果を見れば良いのか。

野口緑氏によれば、血管が悪化していく場合、フェーズを追って異常項目が見つかっていくそうです。

<フェーズ1>
・BMI
・腹囲
・中性脂肪
・肝機能(AST、ALT、γ-GTP)

<フェーズ2>
・血圧
・血糖・HbA1c
・LDLコレステロール
・尿酸

<フェーズ3>
・腎機能(尿タンパク、クレアチニン、eGFR)
・心電図(虚血性変化)
・眼底検査(血管変化)

※フェーズという名前の付け方は、本稿の著者による。また、血液検査以外の健康診断の結果項目も含めて記載しています。


すなわち、

・血管が傷む要因が発生しつつある段階(潜在的に進行する段階)では、フェーズ1の項目に異常が見つかる。

・血管が実際に痛み始める段階になると、フェーズ2の項目に異常が見つかる。

・更に悪化が進んでしまい、血管が痛み、かなり不味い状態になる(血管が変化する段階)と、フェーズ3の項目に異常が見つかる。

という事です。

もちろん、フェーズ3の状態が続くと、大きな病気(脳梗塞、心筋梗塞、慢性腎不全など)にも繋がってしまいます。


ですから、「健康診断で問題があった場合には、自分が、どのフェーズの項目の異常が出ているのか」という事を、まず、把握すると良い訳です。

そして、野口緑氏は、フェーズ2以降の異常が出た場合には、「一つ前のフェーズの項目でも、既に異常が見つかっていたはず」と考える事を勧めています。

すなわち、強引に言ってしまえば、「(もっと早い時期に見つかっている)前のフェーズの異常を放置してしまっていた為に、それが原因となって、次のフェーズの異常が結果として出ている」と考える訳ですね。

ですから、「何に対応すれば良いのか(何を治せば良いのか)」といえば、「その前のフェーズで見つかっていた異常に対応すれば良い」という事になるのです。

健康診断の結果を確認する際に、単に、「血圧と中性脂肪が異常値だった」と認識するのではなく、「中性脂肪の異常値を放っておいたせいで、血圧も異常値になってしまった」と認識する訳ですね。

そして、「色々と悪い所があるが、先に悪くなっていた中性脂肪を何とか正常値に戻さなければ」と考える。

確かに、そのように捉えて対応を考える方が、「血圧と中性脂肪が異常値だけど、どちらか片方だけでも正常値に戻らないかなぁ」などと考えるよりも、具体的なアクションに繋がりやすい事でしょう。

医療に詳しくない人が自分の血液検査結果を確認する上では、特に有用と思われます。


ただし、この野口緑氏の考え方を採用する際には、2点、注意しておいて頂いた方が良いと思われる点があります。

まず、この考え方は、あくまで、「血管が痛む」という病気に関してのみ適用されるものである事(ただし、血管が痛む事によって発生する病気は多いです)。

また、遺伝などの理由で問題が発生している場合には、この考え方が通用しない場合もあるはずである事。

一点目とも関係しますが、血管の悪化に伴う異常ではない場合もありますからね。

ですから、少しでも気になった場合には、しっかりと医者の診察を受ける事をお勧めしたいとは思います。


なお、本稿でご紹介させて頂いた考え方は、「健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと(野口緑著、日経BP社)」という本で詳しく紹介されています。

この本では、血管が痛む仕組みなどについても図解されていますし、血管の状態が悪化した場合に医者であっても治療できる限界がある事(現在の医療では元に戻せない事もある事)なども説明されています。

ご興味ある方は、ぜひ、お読み下さい。


※野口緑氏の研究結果について、より詳しくお知りになりたい方は、以下の研究発表をお読みになる事をお勧めします。
「Japan Trial in High-Risk Individuals to Enhance Their Referral to Physicians (J-HARP) A Nurse-Led, Community-Based Prevention Program of Lifestyle-Related Disease」[Journal of Epidemiology 2020;30(4):194-199]
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/30/4/30_JE20180194/_pdf

※本稿の著者は、野口緑氏と個人的な繋がりは一切ありません。内容に責任も取れませんので、健康管理はご自身の責任で行うようにして下さい。