投資信託(ファンド)を活用した運用の世界において、
アクティブファンド(アクティブ運用)とパッシブファンド(パッシブ運用、インデックスファンド)のどちらを選ぶべきなのか?
というテーマは、昔から熱く議論されてきたテーマでした。
もっとも、最近では、「その議論の結果は既に出てしまっている」と考えている人も多いように思います。
なぜならば、このテーマを検討する上では、
アクティブファンドとパッシブファンド(インデックスファンド)のどちらが実際に成果を出しているのか、という結果(勝率)
を比べる事が欠かせず、そして、少なくとも、勝率(買ったファンドの数)の比較においては、その勝敗は明白だからです。
最近、日本政府(金融庁)から出されているレポートで、この論点に関する数字を再確認する機会がありました。
そこで、ここでも紹介させて頂こうと思います。
なお、後半では、その他のレポートの数字もご紹介し、また、日本独自の事情についても少し考察させて頂こうと思います。
では、まず、金融庁のレポートから、日本、米国、ヨーロッパのアクティブファンド(アクティブ運用)とパッシブファンド(パッシブ運用、インデックスファンド)を比較したデータをご紹介させて頂こうと思います。
このレポートでは、各国(地域)の大型株式アクティブファンドがインデックスファンドに勝利した割合(勝率)を以下のように紹介しています。
<10年間>
・米国 13.4%
・欧州 21.3%
・日本 33.3%
<5年間>
・米国 15.1%
・欧州 20.8%
・日本 35.8%
<3年間>
・米国 26.6%
・欧州 27.5%
・日本 48.5%
※金融庁「資産運用業高度化プログレスポート 2023」(2023/4)より
https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230421/20230421_1.pdf
これらの数字は、アクティブファンドがインデックスファンドに勝った割合です。
そして、どの数字も50%は超えていません。
ですから、「地域を問わず、インデックスファンドに成績で負けたアクティブファンドの方が多い」という事になります。
ちなみに、このような比較をする際には、ある程度は長い期間で比較するべきですので(短期間だと、特殊要因で結果が変わる場合がある為)、10年のデータに注目する事をお勧めします(もっとも、3年や5年でも傾向に差はありませんね)。
他のレポートに掲載されている勝率データもご紹介しておきましょう。
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスのSPIVAリサーチでは、SPIVAスコアカードとしてアクティブファンドがインデックスファンドの勝った割合(勝率)を公表しています。
<10年間>
・米国 14.39%
・欧州 7.16%
・日本 15.54%
<5年間>
・米国 13.42%
・欧州 6.65%
・日本 6.87%
<3年間>
・米国 20.20%
・欧州 10.71%
・日本 18.02%
※S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス「SPIVAデータ」より(2023年10月確認)
https://www.spglobal.com/spdji/jp/research-insights/spiva/
比較条件が異なりますので、結果の数字は違いますが、こちらのデータでも、アクティブファンドがインデックスファンドに勝った割合は低い事が確認できます。
※両データとも、詳細な比較条件をお知りになりたい方は、参照URLからご確認下さい。
もちろん、インデックスファンドに勝ったアクティブファンドも存在はする訳ですが、そのファンドを確実に選ぶ事は容易な事ではありません。
そして、仮に、そのような能力があり、また、投資にそれだけの手間をかけられる人であれば、そもそも、投信ではなく、大儲け出来そうな個別銘柄を選んで投資された方が良いかもしれません。
この為、ご紹介させて頂いたような数字からは、少なくとも、「投信選びに余程の自信がある人以外は、インデックスファンドを買った方が勝てる(より儲けられる)可能性が高い」という結論が導かれる訳です。
ちなみに、このような「インデックスファンドがアクティブファンドに勝つ事が多い」という結果が出るのには理由があると考えられています。
まず、「株価には入手可能な情報が反映されている為、アクティブ運用を行っても、市場を出し抜いて、自分達だけが高いパフォーマンスを出す事は難しい」という考え方がある事。
すなわち、「アクティブファンドの運用担当者が頑張っても、あまり意味がない」という考え方ですね。
そして、アクティブファンドとインデックスファンドでは、経費に違いがある為(基本的に、アクティブファンドの方が経費が高い)、よほどアクティブファンドがインデックスファンドよりも高い運用成績を出さない限り、結果に結びつかない(アクティブファンドはインデックスファンドに負けてしまう)という事。
ちなみに、この点については、前述の金融庁のレポートでも、
「通常、アクティブ運用の投資信託はパッシブ運用の投資信託と比べ、信託報酬が高く設定されており」
と、投信の経費についての指摘を行っています。
最後に、日本のアクティブファンド(アクティブ運用)の勝率について、少し分析を。
前述のデータを良くみて頂くと、用いるデータにもよりますが、実は、日本は他地域と比べ、「アクティブファンドがインデックスファンドに勝っている割合が高い(アクティブファンドが頑張っている)」という傾向が見て取れます。
これは何を意味するのか。
日本のアクティブファンドが優秀なのでしょうか?
もし、そうであれば良いのですが、残念ながら、そうとも限りません。
最もあり得そうな理由としては、
日本のインデックスファンドの成績がよろしくないから
という理由が挙げられます。
すなわち、
日本のインデックスファンドを構成する銘柄に、あまり魅力的ではない銘柄が含まれているので、結果、アクティブファンドの勝率が上がる事になる
という事情があるのではないか、と考えられるのです。
結果、インデックスファンドの運用成績が、他地域よりも悪い(=アクティブファンドは勝ちやすい)とも考えられるのです。
もっとも、この問題については、以前から、「(旧)東証一部には、明らかに魅力的ではない銘柄が多く含まれている」といった指摘がされてきました。
そして、東証でも、このような問題は認識しており、改善が進められています(市場の再編、上場している企業への各種指標の改善指導など)。
ですから、この問題は、今後、改善していく事が予想されます。
結果、日本のアクティブファンドの勝率も海外と揃っていく(=低下していく)のかもしれません。
以上、アクティブファンドとインデックスファンドの勝率と、その日本の特徴について紹介させて頂きました。
なお、インデックスファンドの構成銘柄から一部の銘柄を外した投資を行いたい方に向けた運用手法については、以下の記事で解説を行っております。
※本稿は、あくまで情報提供を行っているのみです。投資についてはリスクがありますので、投資をされる際には、ご自身の責任で行って下さい。また、本稿で紹介した記事に間違いがあった場合でも、一切の責任は負いかねます。