先日、
「非正規労働者との待遇格差に関する訴訟の結果(最高裁の判断)」
が、相次いで出ました。
ここでは、その結果を簡単にご紹介させて頂き、その上で、
労働者(社員)の皆さまに、
「自分の給与を守る、または、増やす為に、何をするべきなのか」
という点についてのアドバイスを提供したいと思います。
非正規労働者の待遇格差の問題とは何か
最初に、「非正規労働者の待遇格差」の問題について、簡単に説明しておきましょう。
非正規労働者の待遇格差の問題とは、
「同じような仕事内容なのに、正社員と正社員以外で貰えるお金が違う」
という問題です。
具体的な差については、「手当」「賞与」「退職金」など様々なものが比較の対象となります。
※厳密には、「お金」以外の待遇も含まれますが、ここでは、「お金」に限定して話を進めます。
非正規労働者との待遇格差に関する訴訟とは
この「正社員と正社員以外で貰えるお金が違う」という問題については、法的な裏付けがあります。
既に、「同一労働同一賃金」という考え方が導入されているのです。
そして、この「同一労働同一賃金」の考え方に反しているという事で、
「自分はもっと多くのお金を貰えるはずだ」
という訴訟を起こしている人達がいました。
その訴訟の結果が、先日、相次いで出たのです。
非正規労働者の待遇格差に関する訴訟の結果
10月に最高裁で出た判決は計5件なのですが、その中から2つのグループの結果を簡単に紹介しておきましょう。
※以下、判決の言い回しを読みやすく書き換えているので、正確性は落ちています。ご了承下さい。
日本郵便の契約社員の訴え
まず、日本郵便の集配業務を担当していた契約社員が、
「(同じような仕事をしているのに)年末年始勤務手当などが、正社員だけに出るのはおかしい」
と会社を訴えていたケースです。
このケースでは、最高裁は、契約社員側の訴えを認めました。
すなわち、
「会社は、契約社員にも、正社員と同じだけの手当を出す必要がある」
という判断を最高裁がしたのです。
東京メトロの売店の契約社員の訴え
次は、東京メトロの売店で販売を担当していた契約社員が、
「(同じような仕事をしているのに)退職金が正社員だけに出るのはおかしい」
と会社を訴えていたケースです。
このケースでは、最高裁は契約社員側の訴えを認めませんでした。
すなわち、
「契約社員に退職金が出ないのは仕方がない」
という判断を最高裁がしたのです。
※厳密には、東京メトロ子会社の契約社員です。
許される格差と許されない格差
この2つの例を見比べて頂くと解るように、同じような訴訟であっても、最高裁の結論は全く逆になりました。
この結果の分析は各所で進んでいますが、現時点での分析結果として言える事は、
「労働の純粋な対価として支払われている事が明確であり、かつ、金額の比較的小さい部分(手当など)については、差は認められない」
「個別の労働と直接結びつける事が困難な所で支払われる退職金などについては、差は認められやすい」
という2点です。
※様々な見方がありますので、一つの分析として読んで下さい。実際には、契約更新の事情なども関係していると言われています。
貴方は賃金を増やす(減らさない)為に何をすべきか
さて、ここまで、自分とは関係ない話、と思って読まれた方も多いでしょう。
しかし、この訴訟結果を受けて、多くの会社は対応を検討しています。
また、対応を予定していない会社であっても、非正規労働者側から訴えられ、会社として対応しないといけなくなるケースもあるでしょう。
その前に、「労働者としての貴方が何をするべきなのか」を考えてみます。
貴方が正規労働者の場合
実は、今回の訴訟結果を受けて、「正社員向けの手当を廃止する方向で動く会社が多い」と予想されています。
正社員だけに出していた手当の正当性が最高裁で否定されてしまったのですから、これは当然の流れですね。
「手当を無くす=給与が減る」というほど単純ではないのですが、それでも、今のままの手当を残したいと考える人もいる事でしょう。
もし、貴方が正社員で、既存の手当を守りたいと考えるのであれば、
「その手当に、自分達だけが貰える理由をしっかりと考え(または、今からでも作り)、会社側に認めて貰う」
という行動に出る事をお勧めします。
非正規や正規という枠を超えて、「貴方(たち)だけが手当を貰えるだけの理由」があり、また、会社がそれを認めてくれれば、貴方は、従来通りの手当を貰い続ける事ができるでしょう。
もちろん、単に、こじつけの理由を作るだけではなく、実際に、「会社にとっても価値のある、手当を貰えるだけの差」を考えるようにして下さい。
その理由を真剣に考える事は、会社の為にもなる可能性は高いでしょう。
貴方が非正規労働者の場合
貴方が非正規労働者で、正社員との間で「貰えるお金に差がある」と考えているのであれば、取るべき行動は簡単です。
貴方は、
「自分の仕事と、正規労働者がやっている仕事には差がない(全く同じ仕事をしている)」
という事を主張し、その結果として、同じだけのお金が貰えるように会社と交渉すれば良いのです。
ただし、このような主張をした場合、必ずと言って良いほど、
「貴方の仕事は、正社員の仕事とは違う」
という説明が会社側から行われる事でしょう。
そして、経営側の立場で申し上げると、その意見に一理はある(実際には差がある)事が多いのです。
ですから、そのような主張をする前に、
「貴方が、正社員と全く同じ仕事をしている」
と会社や周りの正社員に思って貰えているかどうかは、確認しておいた方が良いかもしれません。