ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

シャッター商店街は悲観する事ばかりではないらしい

シャッター商店街


シャッター商店街」という言葉をご存じでしょうか。

実は、このシャッター商店街。必ずしも悪い事ばかりではないようです。

少し面白いやり取りに遭遇しましたので、ご紹介します。

商店街の将来に関心のある方には、興味深く読んで頂けると思います。

※以下、場所や関係者の特定を防ぐ為に、脚色しています。


最初に、「シャッター商店街」をご存じない方の為に、少し説明をしておきましょう。

商店街の中には、客の減少・店主の高齢化などが原因となり、次々と店が閉まってしまった商店街があります。

こうした商店街においては、昼間でも、シャッターが閉まった店ばかりになってしまっています。

この光景から、こうした商店街のことを「シャッター商店街」と呼ぶようになりました。

当然、地元経済を考える方々からすると、大問題であり、「何とかしなければならない問題の象徴」として捉えられている事も少なくありません。

「シャッター通り」「シャッター街」などと呼ばれる事もあります。


なお、このシャッター商店街、田舎の町だけの問題ではありません。

それなりに大きな駅の駅前商店街であっても、発生しています。


そして、ある時、店舗の経営に携わる人が集まった場で、この問題が話題となりました。

ある商店街の関係者が、

「うちの商店街も、シャッター商店街になる日が近そうだ…」

と発言したのです。

まわりの多くの人にとっても、人ごとではなかったようで、

「いかに、シャッター商店街にならないか」

という議論やらアドバイスやらが続きました。

ここまでは、珍しい話ではないでしょう。

しかし、その中で、ある人が、

「シャッター商店街、良いじゃない」

と言い出したのです。

周りは、日頃、シャッター商店街になる事を恐れ、何とか食い止めようという意識を持っている方々ばかりです。

議論に火が付きました。というより、騒ぎになりました。

しかし、この暴論、確かに一理はあったのです(あくまで、一理、ですよ)。

皆さま、なぜ、彼が「シャッター商店街を否定しなかったか?」お解りですか?


実は、この後、シャッター商店街を肯定した彼が主体となって、有志の視察ツアーが組まれる事になりました。

合計で5カ所、商店街を見てまわる事にしたのです。

もちろん、念入りに準備した上で、です。

日頃、商店街振興を考え、付き合いのある商店街と交流しているメンバーも、真っ新な目で他の商店街を見る機会はないようで、なかなか面白い会となりました。


1カ所目は、いかにも、というシャッター商店街を視察しました。

平日昼間だというのに、全く活気がありません。

「こうはなりたくない」という声が聞こえてきそうな時間でした。


次に、「シャッター商店街の問題とは無縁だな」と関係者が実感しそうな商店街を3カ所、見てまわりました。

この2カ所目~4カ所目の商店街については、解りやすいように繁盛商店街①~③としましょう。

繁盛商店街①は、地方ですが、それなりに大きな駅に面した道路沿いの商店街。

繁盛商店街②は、少しだけ田舎ですが、学生が多い街の商店街。

繁盛商店街③は、観光地化した商店街。

この3カ所をまわった所で、参加者に「どの商店街が皆さまにとって『理想の商店街』ですか?」という質問が行われました。

どこも、それなりに人通りはあり、閉まっている店はほとんどありませんでした。

しかし、参加者は、暗い顔のままです。どの商店街もお気に召さなかったようです。

皆さまは、なぜ、参加者が暗い顔だったか、お解りですか?

答えは、この後、明らかにしますが、その前に、このツアーの続きを紹介します。


そして、最後の5カ所目の訪問地に到着しました。

そこは、正直、さびれた商店街そのものでした。閉まっている店も多く、先ほどの3カ所と比べて、人通りも少ない。

しかし、一カ所だけ違うところがありました。

それは、若者がやっている「良くわからない店」(年輩の参加者の表現そのまま)が何軒もあった事です。

もうお解りでしょうか。

この場所は、一度、シャッター商店街になりかけ、多くの店が閉まりました。

しかし、その後、若者が「自分たちが店を出せる場所」として、集まってきたのです。

そして、「新しい商店街」として歩み出していたのです。

しかし、それが実現したのは、一度、商店街としての価値がなくなった為に、出店コストが下がったり、若者が望まない「過去とのつながり」が消えたりした結果でした。

冒頭のシャッター商店街推進派の彼が意図していたのは、この事だったのです。

すなわち、抜本的な新陳代謝を狙うのであれば、一度、既存の商店街をリセットするくらいの経過が必要だ、という事だったのでしょう。

少し強引ですし、様々な問題のある発言ではあったと思います。

しかし、一理はあるようにも思います。


さて、少し時間を戻して、その前に見た3カ所の商店街の実態を明らかにしましょう。先ほど、後で明らかにする、と書いた「参加者が暗い顔をしていた理由」です。

繁盛商店街①は、人通りはあったものの高齢者ばかりでした。

そして、実は、商店街に出店していたのは、医者と薬局ばかりでした。

繁盛商店街②は、商業としては人気の街であったようですが、出店していたのは、大手チェーンの飲食店ばかりでした。

出店場所が限られており、恐らく、大手以外では出店競争に勝てなくなったのでしょう。

繁盛商店街③は、人通りのほとんどが外国人で、決してマナーが良いとは言い辛い状況でした。

どの商店街も、視察している側からすると、目指す姿からは遠く離れていた訳です。

商店街の将来、考え出すと深いですね。