ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

家庭ごみの有料化は正しいのか?商業施設への持ち込みから考える

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ある施設の管理に携わっている方から、

「うちの施設のゴミ箱に、外からゴミを持ち込む人がいて困る」

という話を伺いました。

そして、わざわざゴミを持ち込む人がいるのは、

「家庭ごみが有料化された為、自宅で捨てるとお金がかかる」

という理由らしいのです。

その後、

「家庭ごみの有料化は正しいのか?」

という議論をしたので、その時の内容を少しご紹介させて頂こうと思います。

※家庭ごみの有料化には、「ゴミ袋を有料化する方式(指定袋制)」や「有料のシールを販売する方式(シール制)」などがあります。


外で買ったであろう飲み物のゴミなどを、その施設のゴミ箱に捨てる人を見る事は私もありました。

しかし、その施設で問題にしているのは、そのようなレベルの話ではないようでした。

なんと、「自宅で出たゴミを袋に詰めて、そのまま捨てる人がいる」との事。

要するに、「ごみ集積場所に出す袋を、そのまま持ち込む」という、とんでもない人がいるのだそうです。

そして、その理由が、「家でゴミを出すと有料だから…」という理由なのだそうで。


各施設のゴミ処理費用は無料ではありません。

ですから、家庭ごみが施設に持ち込まれると、その処理費用を、その施設が負担しないといけなくなります。

モノを盗まれたり、モノを壊されたりしたのと同じような被害が、その商業施設には発生してしまう訳です。

※ご存じ無い方もいらっしゃるかもしれませんが、商業施設で出るゴミは、事業系ゴミとなります。この為、自治体は回収しないのが原則です。昔から、各施設は有償の回収サービスを契約してゴミを処理しています。


このような事が実際にあったという話を聞いて、「そもそも、家庭ごみの有料化って正しいのだろうか…」と考えてしまいました。

家庭ごみの有料化さえなければ、わざわざ自宅から距離のある商業施設までゴミを持ち込む人はいないのでしょうし。


ゴミの有料化には、実は複雑な歴史があります。

調査によると、昔は有料化されていた自治体でも、1970年頃に、一度、無料化された所が多いのだそうです。

しかし、1990年代になると、また、有料化する自治体が増えたのだそうです。

昔のゴミ回収が有料であった事情は解りませんが、昨今の家庭ごみの有料化については、次の2つの目的があると言われています。


①有料化する事で、ゴミの排出量を減らす(環境問題への対応)

②ゴミを出した量に応じた負担をして貰う(公平な費用負担)


なお、有料化によって、ゴミの量が減ったケースは少なくないようで、導入による①の効果は期待できる、と考えられているようです。

しかし、もし、冒頭で紹介した商業施設のケースのように、「ゴミを他の所で出す」ような人がいるとなると、①の効果も少しは疑わないといけないのかもしれません。

そのような人が多くいるとは考えたくもありませんが、ゴミの有料化は、あくまで、「自分のゴミは、自分の自治体で出す」という事が前提となっています。

そして、②については、「ゴミを多く出す人には、多くの費用を支払って貰っても良い」という前提があります。

しかし、世の中には、「本来は回収する義務のない所のゴミ(公共部分のゴミ)まで熱心に回収してくれている人がいる」という事を忘れてはいけません。

毎日、道に落ちているゴミを熱心に回収している家と、放置している家。

この差で、費用負担が変わるのは、ちょっとおかしい気がします。

また、休みの日に出掛けた先で出たゴミを自宅まで持ち帰って処理する家と、そうでない家。

どちらが正しいという訳ではないかもしれませんが、前者の家が損をする制度にも、ちょっと違和感を感じます。

※落ち葉や下草などについては、無料で回収する対応を行っている自治体もあります。


結局、この時の議論では、

「そもそも、ゴミを出す量に応じてお金を負担するという考え方に無理があるのではないか」

という流れになりました。


もちろん、ゴミの量によって料金がかかると解っていれば、「無駄なゴミが出るようなモノは買わない」というインセンティブが働く可能性はあり、結果、ゴミを減らすような動きに繋がっていく可能性はあります。

その意味では、「ゴミを出す量に応じてお金を負担する(家庭ごみの有料化)」という考え方に意味はあるのでしょう。

しかし、ゴミを出す人に、「ゴミを増やした責任がある」と決めつけるのは、やはり、少し強引な気はするのです。

この時の議論は、最終的に、

「最後はゴミになるとわかっているものを作った(または輸入した)企業が、ゴミ処理の費用を最初に負担しておく方式が良いのではないか」

という結論で終わりました(この方式は、一部のリサイクル対象で既に実現されています)。

そうすれば、善意でゴミを多く集めて出している人が損をするデメリットも回避できるし、無駄なゴミを減らす努力を企業がするので、ゴミ削減効果も期待できる、という訳ですね。

もちろん、この方式を実際に導入し、また、効果まで出すのは、なかなか大変だとは思います。しかし、将来の一つの叩き台にはなるように思います。


環境問題への注目が集まる中、皆さまは、ゴミの処理費用は、誰が負担すべきだと思われますか?