ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

日立の風力発電撤退は日本企業の戦わない姿勢の象徴か

日立の風力発電撤退

あまり知られていないかもしれませんが、先日、日立が風力発電機の製造から撤退する事を発表しました。

この発表と、それに伴う報道や反響を聞いて、私は「日本の製造業に将来はないかもしれないな」と、少し残念に思いました。

今回は、それについて書かせて頂こうと思います。

日本メーカーの風力発電機の製造事業からの撤退

風力発電機の製造からは、既に三菱重工業と日本製鋼所がほぼ撤退しています。

この為、今回の日立の撤退で、日本勢は、皆、撤退する事になると思われます。

誤解して頂きたくないのは、別に、日立(や他のメーカー)の経営判断が間違っているとか、そういう事ではありません。

この領域において、日本勢の技術は世界の主力市場で戦えるレベルではないそうです。そういう意味では、「妥当な判断」と受け止められている事も理解は出来ます。

ただし、風力発電は、長期的には成長産業であり、「今後10年で2倍近くに市場規模が伸びる可能性すらある」とも報じられています。

また、自然エネルギー産業は、日本においても重要であると考えられているはずですし、少しズレてはいるかもしれませんが、環境分野は、これまで日本の十八番であったように思います。

日立が風力発電機ビジネスから撤退する理由

この分野については専門家ではないので、間違っているかもしれませんが、一般のニュースリソースをもとに、私が理解した今回の発表は、以下のような内容になります。

風力発電機についての市場は伸びるかもしれないが、自社の製品は強くない。勝てそうにないから、他の所に経営リソースを集中させる為に撤退したい。

経営に携わる立場としては、極めて「ごもっとも」です。

不採算の家電からも早めに撤退した日立らしい、素晴らしい英断かもしれません。これを批判する気は全くありません。

おまけに、この風力発電の分野についても、生産は止めるものの、自社の強みが活かせる保守については今後も伸ばしていくそうで、理想的な判断であるとすら言えるかもしれません。


戦後の日本の製造業のマインドを思い出す

しかし、です。

同時に、「日本の急成長を支えた『製造業の経営者が持っていたマインド』は、どこにいってしまったのかな」とも思ったのです。

皆さまにも、少し思い出して頂きたいのです。

過去、日本の製造業は、「世界で戦える強みのある分野だけで戦ってきた」のでしょうか。

欧米の強敵が既にひしめく中、彼らを研究し、そして、彼らを超える製品を生み出す事で成長してきたはずです。

トヨタの成長物語をはじめ、戦後の多くの電化製品など、そうした事例には事欠きません。

こうした企業は、「自社に、そのマーケットで勝てる要素がない状態」でも果敢に戦って成長してきたように思います。

日本の経営者の誰もが、こうしたマインドを持っていないとすると、本当に、「日本の製造業は死んでいく」のかもしれません。

改めて、日立の風力発電からの撤退を考える

私は、今回の発表を、あまりに皆があっさりと受け止めている事に違和感を感じました。

自国のメーカーが、他国よりも弱い事が解って大騒ぎするような国になって欲しいとも思いませんが、同時に、成長市場なのであれば、今からでも新規参入して、または、撤退する企業からノウハウを吸収して、世界に挑んでいく人が当たり前のようにいる国ではあって欲しい気もします。

最低でも、「風力発電が、今後も必要な産業である」という立場に立つのであれば、「日本企業がプレイヤーとしていなくなって良いのかどうか」という事を多少は論じる雰囲気くらいはあって欲しかったと思います。

 

強みがない分野からは次々と撤退していく会社しかない国。

本当にそれで良いのかどうか、少し立ち止まって、考え直してみたい気はします。

 

いや、きっと、こんな事を書いている間にも、素晴らしいベンチャー企業が次々と生まれて、私の懸念などは吹き飛ばしてくれることでしょう!?

なんせ、ベンチャー企業の促進は、国も地方自治体も、皆が「力を入れている」と連日報道していますからね。そうですよね、関係者の皆さま。