もうすぐ4月。日本では、新入社員が会社に入ってくるシーズンですね。
先日、若手社員の離職率について経営者の方と話をする機会があり、ちょっと面白い流れになったので、紹介したいと思います。
「なぜ、最近の若いモンは、すぐに辞めるんだ」
経営者はご不満のようです。ちなみに、若いモンというのは、その会社の若手社員のことです。念のため。
「俺が若い時は、辞めるなんて考えもしなかった。」
なるほど。
「石の上にも3年。いや、会社だったら20年くらいはいなければ、一人前の仕事が出来るようにならないだろう。それまでは、文句なんて言わずに、言われた事をひたすら頑張るもんだろう。」
なるほど、なるほど。
「それが、どうだ。最近の若いモンは、一年目から、自分が成長出来る仕事がさせて貰えない、と言い出す。おまけに、他の会社と比較するような事も言うんだ。そして、納得出来ないと辞めていく。」
かなりお怒りのようです。
実は、日本企業で終身雇用の慣行が定着したのは、それほど昔ではないのですが、そんな事を言い出しても仕方がありません。
この経営者(社長)が、大きい会社出身だったのを知っていましたので、ちょっと聞いてみる事にしました。
「社長も、若手社員だった時は、色々と大変だったでしょう。つらい思いもされたのでは?」
予想通りの答えが返ってきました。
「あたり前だ。今の若いモンの苦労なんて、苦労に入らんよ。」
重ねて聞いてみます。
「では、社長は、どうして若い時に会社を辞めようと思われなかったのですか?」
面白い答えが返ってきました。
「すぐに辞めたりしたら、ロクな仕事に就けないだろう。我慢だよ。それが当たり前だった。」
なるほど。
「俺だって、思い返せば、嫌な事ばっかりだったよ。先輩にはこき使われるし、部下は迷惑ばっかりかけるし。でも、俺には独立という夢があったんだ。だから、その為の経験を積むまでは辞められないと思って頑張っていたんだよ。」
あれ。少し話が変わってきた気が(こちらも、解っていて聞いていますが…)。
ちょうど良いので、もう少し聞いてみる事にしました。
「他の人はどうでしたか?社長みたいに独立の為に我慢している人ばかりじゃなかったでしょう?」
少し悩んで、こう返ってきました。
「そうだな。みんな苦労してたよ。でも、辞めても、もっと良い所に行ける訳でもないって解ってたからな。家業があって戻れるようなヤツ以外は我慢して働いてたな。そのうち、それが当たり前になってた気がする。」
この経営者との会話は、実は、ここで終わりです。
本題が、この話ではなかったので、時間切れでした。
良く言われる事ですが、「最近の若いものは…」的な苦情(不満?)は、実は、どの世代に聞いてもあります。調査によると、数百~数千年遡っても、そういう事を考えていた人はいたらしい、という話まであります。
もちろん、表面的な内容だけを見れば、世代によって、内容は異なるでしょう。しかし、本質的には、それほど人間は変わっていないのかな、とも感じられないでしょうか。
大きく変わったのは、それぞれの人を取り巻く環境であり、それが、人の表面的な行動に影響を及ぼしているだけかもしれません。
もし、この経営者が、今の若者の立場になったとしたら、彼はどう動くのでしょうか。
「若者の退職、という経営課題にどう対応するべきか?」
少し考えただけでも色々な方向性がありますが、こうした所から考えていくと、経営者の価値観でも納得出来る対策が模索していける気もします。