今日は、ちょっとした視点を。
投資(投機)の世界で、AIの活用が始まっています。
具体的には、
「AIに、株を売ったり買ったりするタイミングを任せる」
「将来の為替の水準を、AIに予測させる」
といった挑戦が始まっているのです。
この挑戦の動向に、注目しています。
※投資分野へのAI活用については、「その人にあった投資方針をアドバイスする」などの方向性もありますが、今日のお話は、相場予想の分野についてのAI活用についてです。また、過去の相場の動きから、将来を予測するAI活用のみを対象としています。
注目している理由は3つあります。
まず、1つ目。
相場の予測には、いくつかの方法があるのですが、その中に「テクニカル(分析)」と呼ばれる手法が昔からあります。
これは、過去の相場(株価や為替水準)の動きから、将来の相場の動きを予測する、というものです。
昔から、チャート(グラフ)の特徴をとらえた売買を好む人は多くいらっしゃいまして、この手法が有効だと考えている人は、「過去の相場の動き方から、将来が予測できる」と信じている訳です。
しかし、この手法については、「意味がない」「有効だ」という争いが絶えません。
そこに、AIの登場です。
このような「過去から将来を予測する」という作業は、AIの得意分野です。
AIを活用した場合、あらゆるパターンによる法則性を検討する事も可能でしょう。
ですから、この争いに決着が付くのではないか、と期待しているのです。
もし、AIを活用しても過去の相場の動きから将来の相場が予測出来なかった場合、
「テクニカル分析は意味がない」
という結論が出るのかもしれません。
※この場合も、テクニカル分析擁護派からは、「現在のAIの能力が不十分だった」という反論が出るかもしれません。
次に、2つ目。
投資判断にAIを活用する事は、
「『判断が間違っているかどうか解らない』という状況を、AIがどう考えるのか?」
という事についての、良いケーススタディになるように思っています。
現在、AI活用が進んでいる多くの分野では、成功・失敗がはっきりと出ます。
例えば、Aさんの顔写真をAIに判断させて、AIが「Aさんではない」と答えた場合、これは、明らかに「AIが間違えた」と解ります。
この場合、AIを更に賢くしようと関係者が努力するだけの事で、それ以上の話にはなりません。
しかし、世の中にある課題は、単純に「正解」「間違い」が判断できるような課題ばかりではありません。
相場も同じで、例えば、1ヶ月経って損が出ていても、あと半月待てば、利益が出るかもしれない。
もちろん、逆に、放っておくと、更に損失が拡大するかもしれない。
このような、判断が難しいケースが投資判断では多く発生します。
その一方、現在の損得については、数字で解りやすく結果が出ます。
そのような難しい判断にAIをどう活用していくのか、もっと言えば、「AIに、どのように正解を教えていくのか」という事について、この挑戦から何らかの答えが見えてくるのではないか、と思っているのです。
最後に、3つ目。
「AIの活用で、AI自身が学習に使った過去のパターンが崩れる」
という事についての、良いケーススタディになると思っているからです。
AIは、投資判断の為に、過去の相場の動きを分析します。
その一方、AIが判断して実際に投資を行うようになると、その行動によって、相場の動きは影響を受けます。
すなわち、相場は、過去とは異なる動き方をするようになるはずです(既に、そうなっているという指摘も多くあります)。
結果、「判断の為に学習した過去のパターンを、AIは、自らの行動によって、変化させてしまう」という事になってしまうはずなのです。
要するに、「せっかく成功パターンを見出したのに、いざ、行動し始めたら、成功パターンが変わり、通用しなくなっている」という事象が発生するはずなのです(そもそも、AIが成功パターンを見つけられれば…ですが)。
そのような事が実際に起きた場合、AIは、新しい状況を学習して、自分の判断基準をアップデートせざるを得ない事になるでしょう。
しかし、そのアップデートした判断基準で動くと、また、相場の動き方が変わり…という無限ループが始まるはずなのです。
そのような状況に、AIはどう向き合っていく事になるのか。
非常に興味があります。
更に、相場に関与するのは、単一のAIだけではないでしょう。
自分以外のAIの動きにも影響を受けるはずです。
他のAIとの駆け引きまで覚え、AIは更に賢くなるのか。
それとも、AIが正しい答えを導けなくなってしまうのか。
そういった点についても、興味を持っています。
以上、どこまで皆さまに関心を持って頂けたかは解りませんが、投資判断は、AIの良い実験場になるように思っています。
今後、AIが様々な分野で導入され、問題も取り上げられるようになると思いますが、そのような話を聞かれた際、この視点を、ふと思い出して頂ければ、と思っています。