今日は、「自社の募集に応募してきた学生を『客扱い』すべきか?」というテーマについて取り上げたいと思います。
両方の意見を取り上げてみますので、皆さま自身が、どちらを「当たり前」と感じるか、考えながら読んで頂ければ、と思います。
意外と、「自分では当たり前」と考えていることが、「他の人にとっては当たり前じゃない」といった事が発見出来るかもしれません。
ある時、知り合った就職活動中の大学生から、
「○○という会社を受けるつもりだったが、受けるのをやめた」
という話を聞きました。
聞いてみると、その受けるのを止めた会社というのは、大勢が受けるような会社ではなく、しっかりとした志望動機がないと応募しないような会社でした。
不思議に思って、詳しく聞いてみると、
「選考プロセスの一環で会社を訪問した際、裏口から入らされ、貨物用のエレベーターで移動させられた。おまけに、汚い部屋で説明を聞かされた。」
というのです。
更に詳しく話を聞いてみると、他の会社では、綺麗な受付を経由して説明会の会場に案内され、丁寧な対応をして貰えたらしいのです。
比較して、「受けるのを止めた」との事でした。
要するに、自分が「客扱いされなかった」という事が気に入らなかったようでした。
この話、もう少し続きますが、皆さまは、以下の意見、どちらに賛成されますか?
①「自社を受けに来た学生を客扱いして、丁寧な対応をすべきである」
②「自社を受けに来た学生には、社員と同じような対応で十分である」
気になって、周りの経営者や人事に聞いてみた所、面白い事に、意見は分かれました。
まず、「学生を客扱いすべきである」という意見の理由から。
「採用活動では、学生に少しでも良い印象を持って貰えるように努力している訳だから、客扱いは当たり前。」
「裏側を見られて、それを外部に広められるのが嫌。」
「入社するまでは、うちの社員じゃない以上、お客様扱いは当然。」
「うちと縁がなかったとしても、その人は取引先やお客様になるかもしれない。だから、少しでも良い印象を持って帰って貰うべき。」
なかなか説得力のある意見な気もします。
次に、「学生を客扱いする必要はない」という意見の理由も紹介しておきましょう。
「自社のお客様が使うエレベーターに学生を乗せたくない。お客様に迷惑がかかったら困る。」
「自社の事をちゃんと知って貰う為には、入社した後の待遇に揃えるのが誠実な対応。」
「大量に来る学生を客扱いしていたら、自社のリソースが足りなくなる。」
などなど。
ちなみに、「学生を客扱いすべき」という意見を持っていた会社の多くは、「最終消費者を意識することが多い会社」でした。
やはり、学生は、「自社に対する応募者」であると同時に、「お客様」でもある訳ですから、悪印象を持ってもらっては困る訳ですね。
それぞれの意見に一理はあるように思われますが、改めて考えてみると、少なくとも、
「自社に来てくれた学生に、悪い印象を持って帰って貰うのはマイナス」
であるとは考えられます。
なぜならば、そのような印象を持って帰った学生も、将来、その会社と何らかの関係を持つ可能性はある為、少なくとも、良い印象を持って返って貰った方が企業にとってプラスになる可能性は高いからです。
ですから、応募してきた学生に対しては、とりあえず、客扱いをしておいた方がベターなのかもしれません。
その一方、最近は、過度に綺麗な所だけをアピールして採用活動を進めようとする会社も少なくないように思います。
少しでも会社の悪い所を見せると、それだけで逃げる学生がいる事は確かであり、人事(採用担当)としては、学生を逃がす事を極度に怖れているケースがあるようです。
しかし、それはそれで、あまり学生にとって誠実とは言えないようにも思います。
ぜひ、学生側にも、「自社の実態を見せずに学生を採用しようとする会社に就職して良いのか」という事は考えてみて欲しいと思います。
そして、企業が会社の実態を隠さずに見せ、そして、学生側も、過度に客扱いされなくても問題視せずに採用活動を続ける、そんな採用活動が当たり前になる事を願いたいと思っています。