ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

ウィズコロナの後半戦はエンデミックへの対応が大切らしい

エンデミック ビジネス

「エンデミック」という言葉をご存じでしょうか。

医療関係者と情報交換をさせて頂く中で、

近いうちにパンデミックは終わり、エンデミックになる可能性が高い

これからは、パンデミック対策からエンデミック対策が重要になる

といった話を伺ったので、ここでご紹介させて頂きます。

来年に向けて、この「エンデミック」という単語は覚えておいた方が良さそうです。

パンデミックとエンデミック

新型コロナウイルスが流行するようになってから、「パンデミック」という言葉は身近なものになりました。

パンデミック(pandemic)とは、「病気が世界的に大流行している状態」という意味です。

皆さまも良くご存じの通り、世界中で今回のパンデミックを終わらせるべく、対策が講じられています。

その甲斐あって、このパンデミックの終わりは見え始めているようです(ただし、強力な変異株が発生した場合などは、前提が変わる事も十分にあり得るようです)。

ですが、パンデミックが終わった後に予想されるのは、エンデミックという状態なのだそうです。

このエンデミック(endemic)というのは、「地域限定的に、病気が継続的に発生する状態」という意味だそうです。

すなわち、当面、今回の新型コロナウイルスの完全な制圧は期待できず、「一定の脅威として残り続ける」という事のようです。

日本語の用語を使って書くと、パンデミックが「終息」する事は期待できず、「収束」するのみで、「戦いは続けていかないといけない」といった表現になるでしょうか。

エンデミックとの付き合い方

エンデミック中も、感染してしまった場合の危険性は変わらないようです。

すなわち、感染してしまった人の一定割合は重症化してしまう。

感染者が、他の人に感染させてしまうのも同じ。

そして、自社の拠点でクラスターが発生してしまった場合には、その企業(や取引関係)の経済活動は大きな影響を受ける。

ですから、これからは、このエンデミックへの対策が大事になるようです。

では、企業などが行うエンデミック対策としては、どのようなものが重要になってくるのでしょうか。

切り分けて分析していくと、他の問題に対応する為に、既に企業が行っている対策との類似点も見えてきます。

エンデミック対策①:最新のワクチンへの対応

新型コロナウイルスによる死亡者を減らす上で、ワクチンが有効であった事は、ほぼ間違いないのでしょう。

しかし、そのワクチンの効果(抗体)が時間と共に弱くなってしまう事も解ってきました。

また、今後、新しい変異株に対応する為には、新しいワクチンを接種する必要がある可能性もあると言われています。

ですから、企業などでの基本的な対策としては、「従業員に、適切な時期に、しっかりと最新のワクチンを打って貰う」という事になりそうです。

それによって、感染による被害を抑える事が出来る可能性があります。

なお、このような対応については、同じウイルスと呼ばれるコンピューターウイルスへの対応と似た部分があります。

コンピューターウイルスへの対策の一つに、「組織内の全てのパソコンのセキュリティ対策を最新にし続ける事」があります(OSなどの最新化、ウイルス検知ソフトの定義ファイルの最新化など)。

その為に、セキュリティにしっかりと取り組んでいる企業では、社内のパソコンの状況を監視しています。

そして、対応が出来ていないパソコンがあった場合、そのパソコンをリスク要因として認識し、必要に応じた対策を講じています。

それと似ていると言えるでしょう。

ただし、日本では従業員にワクチン接種を強制化できないと解釈されており、また、体質的に接種出来ない人もいます。ですから、そのような点への配慮は必要となります。

エンデミック対策②:流行地域の把握

今後、海外はもちろん、日本国内でも、「このエリアは流行中」「このエリアは比較的安全」といった区分が出てくる事が考えられます。

ですから、企業は、そのような情報を把握し、不要不急の用事であれば、流行中のエリアへの社員の移動を避ける、または、行かせるにしても、感染対策を十分にさせた上で行かせる、などの対応が求められるようになると考えられます。

この考え方は、「海外渡航に関するリスク把握・対応」と同じです。

今でも、治安の悪いエリアや伝染病が流行している国への渡航が必要となる企業では、現地情報を常に把握し、適切な対応をしています。

それと同じような対応が、国内のエンデミック対応においても必要となる可能性があります。

エンデミック対策③:クラスター発生時を想定した事業継続計画

どれだけ対策を行っても、社内でクラスターが発生してしまう可能性はあります。

そして、その事態を想定出来ていないと、事業継続に大きな支障をきたしてしまう可能性があります。

ですから、そのような事態が発生した場合でも事業を止めずに済むような事業継続計画(BCP)を日頃から整備しておく事が望まれます。

また、可能であれば、被害が一定の範囲で済むような体制づくり(例えば、日頃の業務で顔を合わせるメンバーを一定範囲にとどめるような勤務シフトづくりなど)を検討する事も有用でしょう。

これも、社員が遭うかもしれない様々なリスクを踏まえた事業継続計画(BCP)整備という意味では、従来のリスク管理から大きく外れたものではありません。


以上、現時点では、このような対策をしながら、エンデミックの時代を乗り切っていく事になりそうです。

それが企業に当たり前と認識されるようになると、これらの対策は「(ウィズコロナ時代の)新しい企業にとっての生活様式」などと呼ばれるようになるのかもしれません。