最近、非常に注目されている投資商品に「SPAC(空箱上場)」というものがあります。
主に米国の証券市場に上場されており、一般の人でも購入する事が出来る投資商品です。
しかし、この商品、
「どんな会社に化けるか解らない会社の株を買う」
という、不思議なものなのです。
そんな商品が人気とは不思議ですよね?
でも、それが現実なのです。
日本では未だご存じない方も多いようなので、今日は、このSPACについて簡単にご説明させて頂きます。
また、このSPACの人気が過熱すると、証券バブルに繋がる危険性もあるように思いますので、その辺りの事についても書かせて頂きます。
まず、SPACの基本的な事から。
SPACとは、「Special Purpose Acquisition Company」の略であり、日本では「特別買収目的会社」と日本語訳されています。
簡単に言ってしまえば、SPACとは「他の会社を買収する為に設立された会社」です。
投資ファンドのようなものだと思って頂いても構いません。
ただし、このSPACが特徴的なのは、「上場した段階でも、まだ、どの会社を買収するのか、決まっていない」という事なのです。
そして、上場後、「一定期間内(2年程度が通常)に買収先を見つけ、その買収先と合併して役割を終える」という仕組みになっています(買収先企業が上場企業として残ります)。
ですから、SPACは一般的な事業は行いません。
あくまで、「上場する未上場企業を探して、その会社と合併する事」を目的とした活動を行います。
このSPAC、以前から存在はしていたのですが、2020年頃から上場が急増しました。
そして、現在活動中のSPACの会社数は数百社にものぼっています(1月だけでも91社が上場)。
ちなみに、ソフトバンクグループも、このSPACを2社も設立して米国で上場させています。
また、米国だけではなく、英国でもSPAC上場の為の準備が進んでいます。
さて、では、なぜ、このSPACは人気なのでしょうか。
それは、投資する人にとって、このSPACは、「まだ上場していない投資先に投資できる」というメリットがあるからなのです。
通常、未上場の会社に投資する難易度は高いですからね。
もっとも、投資先(買収先)が決まるまでは、「自分が、最終的に、どの会社に資金を出す事になるのか」すら解らないのですが。
ただ、最終的な投資先を自分を決められないのは、投資信託などに投資をする場合でも同じです。
ですから、投資先を探すSPAC運営者の能力を信じてお金を出せる人にとっては、その点は気にならないのかもしれません。
ちなみに、買収される側にとっては、「普通に上場するよりも短期間で上場が出来る」という事がSPACを活用するメリットであると言われています。
しかし、「SPACに買収されると、通常よりも早く上場が完了出来てしまう」などと言われると、ちょっと不思議に感じてしまう所ではありますよね(ちなみに、そう感じる人は多いようで、SPACを利用した上場を「裏口上場」と呼ぶ人もいるようです)。
最後に、このSPACの人気過熱を見ていて、不安を感じる部分についても触れておきます。
投資に詳しい人の中には、
「SPACは投資ファンドと同じようなものだと考えれば、別に、特別なものでもないのでは?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
おっしゃる通り。
SPACでなくても、未上場企業に投資する投資ファンド(ベンチャーキャピタル含む)はこれまでも多く存在しました。
ですから、別にSPACだけを特別視する必要はないのかもしれません。
しかし、いくつか気になる点があるのです。
まず、SPACの運営陣には、「『上場から一定期間内に買収を成立させないといけない』というプレッシャーが大きくかかっている」という事(成功させないと、運営陣(設立者側)の報酬に大きく響くのが原則です)。
そして、その「買収の為の期間が、通常、2年程度」と短い事。
さらに、現在、数百社ものSPACが「投資先を探している」という事。
これらの事から考えると、これまでとは比べものにならない程、
「投資先の奪い合いが過熱するのではないか」
と懸念してしまうのです。
そんなに簡単に「有望な投資先」が見つかる訳もありませんし、また、有望な投資先であれば、SPAC同士で奪い合いになって、買収条件が高騰していく可能性は高いでしょう。
実際、SPACが過去に買収した先をみると、EVや自動運転などの将来性重視のスタートアップ企業が多く、赤字企業も多いようです(売上すら殆どない企業まで…)。
SPACへの投資が過熱するという事は、結局、そういった「まだ結果は出ていないが、将来の可能性を高く評価して投資する」という事が盛り上がる事を意味します。
その評価が本当に正しいものなのかどうか。
もし、SPACの多くが適切な投資先を見つけられない事がはっきりした場合、SPACへの熱は急激に冷めるかもしれません。
そして、そのような事があれば、株式市場全体への影響も避けられないでしょう。
SPACがどのように今後評価されていくのか、目が離せません。