今日は、「PERK」という用語について(会社の福利厚生に関する用語です)。
日本では、欧米の用語がそのまま輸入されて使われるケースが多くあります。
しかし、海外のビジネス会話で普通に出てくる用語にも関わらず、日本では全く普及しない単語もあります。
今日取り上げる「PERK」は、以前から「日本では耳にしないなぁ」と思っていた単語の一つでした。
しかし、先日、ある企業のCMで、この「PERK」という用語が大々的に取り上げられていました(一般名詞というより、その会社の商品名のような取り上げられ方でしたが)。
それを見て、「ようやく、このPERKという用語も日本でメジャーになるかもしれない」と思いましたので、ご紹介させて頂く事にしました。
「PERK」という用語は、「従業員が、雇用主から賃金(給与)以外で与えられるもの」といった意味になります。
※海外では、PERKに複数のSを付けて「PERKS」として用いられる事も多いのですが、以下では「PERK」という表記で統一します。
典型的なPERKの例としては、
・無料の食事(指定の食堂での食事が無料になっているようなケースのほか、ピザなどが定期的に職場に届くような会社もあります)
・健康増進の為の費用補助(フィットネスクラブの会費補助のほか、ヨガクラスの費用やスポーツ大会への出場費用まで補助する会社もあります)
・会社から支給される物品(車や携帯電話など)
・エンターテイメントに関する補助(映画や遊園地のチケットの配布や費用割引など)
といったものが該当します。
これらの特典は、「労働の対価として、会社から与えられないと困る」という性質のものではないと思いますが、あると有り難いのは確かですよね。
ですから、PERKについては、「労働の対価として会社と合意した内容ではないけれど、その会社で働いていると得られる特典(メリット)」というくらいの意味で理解して頂くのが良いかもしれません。
会社側が、このPERKを導入・充実させるのは、もちろん、「従業員側から見た、その会社の魅力を上げる」という理由からです。
優秀な従業員に来て貰う為に、「うちで働いてくれれば、給与以外にも様々なメリットがあるよ!」とアピールしたり、今いる社員の離職率を下げたりする為に、様々な特典を用意する訳ですね。
結果、海外では、他社との間で、「うちのPERKの方が上だ!」という競争になっている事も珍しくありません。
会社によっては、「給与を上げるよりもPERKの水準を上げた方が、費用対効果が良い(より良い従業員を新規雇用したり、今いる従業員をつなぎ止めたりする為の費用が安く済む)」という考えでPERKに熱心な所もあります。
また、「従業員の私生活をサポートする事で、従業員が仕事に集中できるようにする」といった目的で導入に熱心な会社もあったりします。
なお、PERKには正確な定義がない為、「どこまでをPERKに含めて考えるのか?」という事については、かなり幅があるようです。
法定の福利厚生の内容には地域差もあるので、それも仕方がない事かもしれません。
例えば、以下のようなものもPERKに含められる事があります。
・通勤に関する支援
・様々な理由での有給休暇
・年金
・医療費補助(健康保険)
・育児補助(保育所など)
・働き方に関する自由(フレックスタイムやテレワークなど)
・会社の研修制度
・自己研鑽に関する費用補助
・社内のリフレッシュ用設備(社内に用意されたゲーム施設など)
・会社が保有(または契約)している施設利用の権利(保養所など)
・社員割引
など。
日本では、「法定・契約外の福利厚生として考えられているものが、PERKに該当する」と考えて頂ければ良いと思うのですが、実は、一点、「このPERKという用語がメジャーになる事で、日本で変化が起きるのではないか?」と思っている事があります。
それが、「『法律または契約で定められた従業員に対する福利厚生』と『提供する義務はないが会社が提供している福利厚生』の違いを、日本人が意識するきっかけになるのではないか?」という事です。
日本では、長期雇用が一般的であった事もあり、「福利厚生のうち、どこまでが労働の対価として、会社に支給義務があるのか」という点が曖昧になってきた部分があるように思います。
しかし、今や転職は当たり前です。
また、業績が悪化する事によって、福利厚生が見直される事も少なくないでしょう。
そのような環境の中で、今後、「自分が雇用主に求める待遇」について、より明確に意識する人は増えていくように思います。
今でも、「私は、(給与以外に)○○の条件が満たされない企業では働きたくない」という人はいらっしゃいます(育児関係のサポートや、働き方の自由さなど)。
しかし、今後、より明確に、「私は、とにかく給与が高くないと嫌だ」や「自分には、給与以外の待遇が充実している所が向いている」といった違いを意識される方が増えていく可能性があるように思っています。
そして、このPERKという用語のメジャー化は、そのきっかけになるかもしれません。