東京証券取引所(東証)が、「JPXプライム150指数」という新しい株価指数を2023年7月3日から算出する事を発表しました。
投資をしている人には影響のある話ですので、この株価指数に関する大事なポイントをまとめてみました。
※厳密には、JPXプライム150指数の提供を担当するのはJPX総研です。
最初に、なぜ、JPXプライム150指数という新しい株価指数が生まれたのか、という点について。
東証は、JPXプライム150指数について、「価値創造が推定される我が国を代表する企業で構成される指数」と説明しています。
この説明だけでは良く解らないと思いますが、平たく言ってしまえば、「大きな企業で、かつ、投資家目線で魅力的な銘柄だけで構成された指数」であると言えます。
もっとも、東証は2022年4月に市場区分の見直しを行いました。
その結果、東証1部という市場区分は無くなり、プライム市場が生まれました。
その際、東証は、プライム市場を「より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」として位置づけました。
そして、東証プライム市場に上場する企業には厳しい要件を求めるようになりました(という事になっています)。
ですから、本来は、「東証が求める優秀な銘柄だけで構成されている指数」が必要なのであれば、「東証プライム市場の全銘柄を採用した指数」で問題なかったようにも思います。
しかし、実際には、移行措置によって、かなりの銘柄が東証1部から東証プライム市場に移行してしまいました。
その中には、投資家目線でみると、あまり褒められた状況ではない企業も多く含まれています
例えば、PBR1倍を割っている企業すら、かなりの割合にのぼります(PBR1倍を割っているという事は、表面上の数字だけで言えば、今すぐ解散してしまった方が投資家の為になる可能性すらある、という事になります)。
このような背景から、「東証プライム市場の全銘柄」ではなく、「本当に優れた銘柄」だけで構成された株価指数が新たに必要な状況になっていた、と考えられる訳です。
東証の立場からすると、東証プライム市場への移行に続き、JPXプライム150指数を発表する事で、「上場している企業に、より投資家にとって魅力的な会社に移行させる」という圧力をかける事が出来る訳ですね。
では、JPXプライム150指数に含まれる銘柄は、どのように選ばれるのでしょうか。
JPXプライム150指数に含まれる銘柄は全体で150銘柄(会社)です。
銘柄の選定は少し複雑なのですが、以下のようなステップで選ばれる事になります。
1.東証プライム市場に上場している銘柄から時価総額上位500銘柄に絞り込みます。(規模の観点からの絞り込み)
2.1で絞り込んだ500銘柄の内、ROEが8%を超えた銘柄から、推定エクイティ・スプレッド(ROEから株主資本コストを控除したもの)の上位75銘柄を、まず、構成銘柄として採用します。(資本収益性による選定)
3.1で絞り込んだ500銘柄から2で採用された銘柄を除いた銘柄の内、PBRが1倍を超えている銘柄の時価総額上位75銘柄を構成銘柄として採用します。(市場評価による選定)
以上のステップで、資本収益性の観点から75銘柄、市場評価の観点から75銘柄を選び、足して150銘柄とする事になっています。
また、毎年8月の最終営業日に銘柄の入れ替えが行われます(2023年8月はスキップ)。
※詳細なルールは、以下のURLから確認出来ます。
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20230526-01.html
なお、このような選定が行われる結果、日本を代表すると考えられている会社であっても、このJPXプライム150指数の構成銘柄からは外れる事があるようです。
具体的には、トヨタやホンダがJPXプライム150指数から外れる予定であると発表されています。
では、投資家にとって、JPXプライム150指数を重要視した投資には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まず、JPXプライム150指数の構成銘柄であるという事は、前述のような基準で選ばれた銘柄である訳ですから、東証プライム市場に上場している企業の中でも、投資家目線で優秀な企業であると言えます。
ですから、優れた企業に投資したいのであれば、「JPXプライム150指数に採用されている銘柄から選んで投資する」という考え方も有効な訳です。
また、JPXプライム150指数に連動した投信などが今後設定される事で、「JPXプライム150指数の構成銘柄である」という理由だけで、その銘柄は買われる可能性があります。
JPXプライム150指数に連動した投資が、今後、どの程度行われる事になるかは何とも言えませんが、投資を考える際の参考にはなる事でしょう。
最後に、JPXプライム150指数を投資に活用する上での注意点・デメリットについても挙げておきましょう。
まず、JPXプライム150指数の構成銘柄になったからといって、今後、株価が上がるとは限りません。
現在の株価は、既に将来の様々な期待(予想)を取り込んでいると考えられています。
ですから、「JPXプライム150指数に採用される事による株価上昇期待」や「その企業が投資家にとって魅力的な運営がされている」という事は、既に現在の株価に組み込まれている可能性があります。
JPXプライム150指数に採用されているという理由だけで、その銘柄の株価がこれから上がるとは限らないのです。
そして、万一、その銘柄が、今後、JPXプライム150指数の構成銘柄から外れる事になった場合には、その銘柄の株価は下がる可能性が十分にあります。
ですから、「JPXプライム150指数に採用されている銘柄への投資を行うべきである」とは簡単には言えないのです(もちろん、その企業が今後も優秀な結果を出し続ければ、株価が更に上がっていく可能性も十分にあります)。
また、JPXプライム150指数という指標が、「そもそも投資において、優先して参考にすべき指数と言えるのかどうか」という点についても、しっかりと見極める必要があります。
JPXプライム150指数の銘柄選定の考え方(前述)に一定の意味があったとしても、その結果、投資に適した銘柄が本当に選ばれるとは限りません。
実は、TOPIXとJPXプライム150指数を比較した資料(グラフ)を東証自身が公表していますが、正直、あまり魅力的には見えない結果となっています(もちろん、過去の成績に意味はない、という意見もある事でしょう)。
※冒頭の画像にグラフを埋め込んでいますので、よろしければご覧下さい。オリジナルのグラフは、以下URLより。また、プロトタイプのパフォーマンスである為、変更となる事があるようです。
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20230330-01.html
そして、他にも様々な基準で銘柄を絞り込んだ株価指数は存在します。ですから、JPXプライム150指数よりも、それらの株価指数の方が優れている可能性もあるのです。
以上、JPXプライム150指数について、投資をされる方に知っておいて頂きたい点をまとめました。
実際にJPXプライム150指数を活用した投資を行う際には、ご自身で十分に検討した上で行うようにして頂きたいと思います。
※株価指数については、「京大川北/JPX日本株指数」についての解説記事もございます。よろしければ、こちらもお読み下さい。
※当記事は、何らかの投資を勧めたり、投資判断を提供するものではありません。投資をされる際には、各自の責任で行って下さいますよう、お願いします。