皆さまは、「社内での階級が上がるほど給与が上がる」という事について、当たり前だと思われていますか?
多くの会社では、多少のデコボコはあるにせよ、そういった考え方が常識になっていると思います。
しかし、その考え方が根本から覆るような話があったので、少しだけ紹介してみたいと思います。
冒頭の考え方について、「当たり前」と思われている方は、一読頂くと、給与についての考え方が少し変わるかもしれません。
経営の相談を受けて、ある企業の給与制度の見直しについてお話をさせて頂いていた際、
「階級が上がるにつれて、給与が上がる仕組みを見直したい」
と仰る経営者の方がいらっしゃいました。
「実力主義を本格的に取り入れたい、という事かな?」と思って、給与を決める条件のようなものについて話を進めていこうと思ったのですが、どうも違うようでした。
良く聞いてみると、その経営者の方が意図されていた事は、
「階級が上がるにつれて、給与が下がる仕組みにしたい」
というものでした。
正直、驚きました。
「階級による給与の差がほとんどない会社」というのは、私も聞いた事はあります。また、実力主義の会社で、基本給については、そういった制度設計をしている会社がある事も理解はしていました。
しかし、この経営者の意図は、本当に
「出世の階段を上るにつれて、給与が下がる仕組みにしたい」
というものでした。
皆さまは、この考え方に賛同されますか?
それとも、そんな会社で働きたくない、と思われますか?
この制度、実現させる上では、なかなか難しい点もあります。
しかし、この経営者に限らず、実は、「部下の階級を上げたのに、思い通りの仕事をしてくれない」と経営者が感じているケースは少なくないようです。
例えば、経営者が「昇進させたのだから、もっと仕事をして欲しい」と思っているのに、本人は、「出世したのだから、楽が出来る」などと思っているケースもあるようです。
もっとも、こうした事は、随分昔の日本企業では良くあったでしょうが、最近では少ないとは思います。
ただ、こうした問題があるとはいえ、冒頭の考え方にたどり着くほどの提案が出来る経営者はなかなかいないでしょう。
私は、真剣に、この経営者の考え方を聞いてみる事にしました。
この経営者のお考えは、こういう事でした。
その会社では、多くの社員が出世を望んでいました。
そして、その理由として、「階級が上がれば、業界内で評価される」という事情があったようなのです。
要するに、「まわりから偉い人として扱って貰えるようになるので、皆が出世しがっている」という事でした。
それも微妙な話ではありますが、その会社で出世できたという事は、それなりの人物評価がされたという事なのでしょうから、それはそれで良いとしましょう。
ただし、その会社では、階級があがると、現場からは離れていく仕組みになっていました。
そして、責任こそ重くなるものの、「仕事の大変さ」という面では、「現場の方が大変」という理解を経営者はされていました。
そして、この経営者は、「現場で頑張り続けたいという社員についても、十分な処遇をしてあげたい」と考えていました。
結果、前述のような給与制度をお望みでした。
階級が上がった社員は、仕事は楽になるし、良い思いも出来る。給与くらいは、一番辛い、現場で頑張っている人に多くあげたい。そういうお考えでした。
良く、「現場あっての会社」と口にする管理職や経営者はいますが、ここまで徹底させるのは、見事といえるでしょう。
勿論、この考え方には、様々ななリスクやデメリットがあります。
ですから、ほとんどの会社においては、正直、お勧めはできません。
しかし、「社内で偉くなれば給与があがる」という考え方を、盲目的に「当然」と考えている人にとって、この考え方は、色々と考えてみる価値のあるものだと思います。
皆さんも、ご自身の昇進について自問自答される機会はあると思いますが、その際に、
「昇進した場合、自分は給与は上がるべきなのだろうか?」
「給与は下がってでも、自分は昇進したいのだろうか?」
と考えてみて頂くと、今までとは違った発見があるかもしれません。