ビジネスコンサルティングの現場から

各種ビジネス・コンサルティングに携わる担当者が、日頃、「考えている事」や「気が付いた事」を不定期に発信します。

なぜ東芝の家電は今も売られているのか?魂を売った企業の行く末は?

日本の家電ブランド 東芝 東芝ライフスタイル


先日、年配の方から、クレームを受けました。

それは、

東芝ブランドの家電が、今も売られているのを見た

というものでした。

以前、この方には、「東芝の家電部門は海外メーカーに売られた」という説明をして差し上げた過去がありました。

今日は、このクレームを受けた時の会話をご紹介した上で、「日本メーカーが、自分のブランドを売る」という、「以前は考えられなかった事」について、少し、考えてみたいと思います。


最初に、クレームを受けた方との会話を再現してみたいと思います。

仮に、この方をAさんとしておきましょう。

Aさん「この前、量販店に買い物に行ったら、東芝ブランドの家電が売られていたよ。」

私「そうですか。」

Aさん「そうですか、じゃないよ。貴方は、私が東芝製品を買わないようにする為に、嘘を言ったのかね。」

私「?」

Aさん「だ・か・ら、東芝の製品は今も買えるんだよ。」

私「TOSHIBAブランドの家電ですよね。日本で売られているとは思いますよ。」

Aさん「貴方は、東芝の家電は海外メーカーに売られた、と言ったじゃないか。誤魔化すのか。」

私「いえ。誤魔化すつもりは全くありません。確かに、東芝の家電部門は、数年前、中国メーカーに売却されました。厳密には、売られたのは東芝の子会社ですが。」

Aさん「じゃ、なぜ、今も東芝の製品が日本で売られているのかね。」

私「…(なるほど、そういう事か)」

皆さま、このかみ合わない会話の理由、お解りになりましたでしょうか。


ここで、事実関係を整理しておきます。

まず、東芝ライフスタイルという東芝の白物家電を作っていた会社は2016年に中国の美的集団(ミデアグループ)という会社に売却されています。

また、東芝映像ソリューションという東芝のテレビを作っていた会社は、中国の海信集団(ハイセンスグループ)という会社に2018年に売却されました。

※東芝も資本関係を少しは残しています。


しかし、日本のマーケットにおいて、未だ東芝のブランドをつけた家電は売られています。

Aさんは、「この2つの事実が両立する」という事が理解出来なかったようでした。

最近は、他メーカーの事例もあるので慣れましたが、私自身、当時は色々と思う事もあったのを思い出しました。

ですから、丁寧に説明させて頂くことにしました。

私「実はですね。今、日本でTOSHIBAブランドをつけて売られている家電の多くは、東芝の製品ではないのですよ。」

Aさん「?」

私「海外メーカーが、TOSHIBAブランドを使って売っているのです」

Aさん「まさか!いや、しかし、値札の所のメーカー名の所に、東芝ライフスタイルって書いてあったぞ。どう考えても、東芝だろう。」

私「はい。その東芝ライフスタイルというのが、東芝から売られた会社です。今は、中国メーカー傘下となっています。なお、日本の東芝は、株式会社東芝として、今も存在しています。東芝ライフスタイルは、会社名に東芝とついていても、日本メーカーではないという事ですね。」

Aさん「そんな事が…」

私「はい。そんな事があるのです。」

Aさん「…(絶句)」


このような会話をして、Aさんに納得はして頂けました。

しかし、確かに、日本の消費者を混乱させる現状である事は間違いないと思います。

私たちのような経営に詳しい人間は、理解は出来ます。

しかし、多くの一般の方々には、「あり得ない」と思われるような現実かもしれません。

実際、一昔前であれば、「ブランドを汚す行為」として、このような事は絶対にあり得なかったはずです。


そして、従来はあり得なかった、「自社ブランドを他の会社(特に海外の会社)に使わせる」といった事が現実に起きているのには、2つの理由があると考えられます。

1つは、「背に腹は代えられなかった」という理由。

「事業を何としてでも手放したい」「(高額の)事業の売却代金がどうしても必要」といった事情があり、「契約せざるを得なかった」という理由。

もう一つは、「ブランドが傷ついても、自社の今後のビジネスに影響がないと判断した」という理由であった可能性。

例えば、消費者向けのビジネスからは撤退するので、一般消費者からブランドに関して悪い評価を受ける事になったとしても、「もう関係ない」と企業が考えてしまったケース。

この片方、または、両方であると考えられます。


しかし、私も「ブランド価値を向上させるという事が、どれほど大変か」は身にしみて解っているつもりです。

ですから、こうした現状については、一つの経営判断として尊重はするものの、色々と思う事もあります。

そして、特に、後者の理由(ブランド価値が傷ついても構わないだろう、という判断)であったのだとすると、その結末には、強い関心があります。

消費者向けビジネスを今後行わなかったとしても、あらゆる商売の背後には、消費者としての顔を持つ「個人」がいます。

そして、その「個人」が「取引先のブランドが低下した」と感じた場合、「消費者向けのビジネス以外にも影響は出る可能性はある」と考えています。


皆さまは、「自社の会社名を冠したブランドを、海外企業に利用する事を許した日本企業」をどのように評価されますか?

企業がビジネスを行う上での「魂」とでも言うべきブランドを他社に利用する事を許してしまった会社が、その後どうなっていくのか。

長期的に、また、注意深く、観察していきたいと思っています。