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東電のweb検針票への移行(紙の請求書廃止)が不評である3つの理由

東京電力 東電 web検針票 ペーパーレス化

東京電力(東電)が、「検針票(電気ご利用量のお知らせ)・領収書」をWEB化し、これまでポスト等に投函してきた「紙でのお知らせ」を、順次、廃止しようとしている事をご存じでしょうか。

実は、この話題、打ち合わせ時の雑談ネタとして、かなり盛り上がる事が多いのです(相手が関東圏在住で家計支出に関心の強い方限定です)。

それだけ、この件については色々と思っている人が多いという事なのでしょう。

そこで、今日は、この「東電のweb検針票への移行(紙の請求書廃止)」について取り上げてみようと思います。

東京電力と契約されている方で、この件について良くご存じない方は、ぜひ、ご一読下さい。

このweb検針票への移行が、なぜ不評なのか」という理由を中心に、後半では、「今後も紙での検針票を貰い続ける為の方法」についても紹介します。


さて、「請求書のペーパーレス化」は別に珍しい話ではありません。

東電の管轄地域以外の方が「東電が請求書のペーパーレス化を進めている」と聞かれた場合、「良くある話じゃないの?」と思われる事でしょう。

基本的には、その通りです。

私が知る限りでも、カード会社や金融機関など様々な企業が請求書のペーパーレス化を進めています。

しかし、東電のペーパーレス化は、いくつかの点で他企業のペーパーレス化とは違う特徴があります。


東電のweb検針票への移行(請求書のペーパーレス化)は、次のように行われます。

まず、ある日、いつも検針票が入っている場所(ポストなど)に、「電力ご利用量のお知らせ(検針票)に関する重要なご案内」というチラシが投函されます。

折りたたまれていると、かなり小さいチラシですし、他のチラシに紛れてしまっている事もあるでしょう。

しかし、このチラシを見逃してはいけません。

このちらしには、「202○年○月分より、紙の検針票のお届けを終了し、電気料金・電気ご利用量などのご確認はWebにてお願いすることにいたしました。」と書かれているのです。

そう。「ペーパーレス化への協力のお願い」ではなく、「ペーパーレス化は決定事項」なのです。

チラシに書かれている日付をもって、紙の検針票は自動的に届かなくなるのです。

もう、不評な理由の一部はお解りですね。

検針票が、いつ届くかを気にされている方は問題ないかもしれませんが、そのような家庭は多くはないでしょう。

多くの家庭では、ポストをあけて、検針票が届いているのをみて、「これだけ電気を使ったんだな」「○○円の請求がくるんだな」と確認されているはずです。

しかし、東電のペーパーレス化では、このチラシを見逃すと、ある日、いきなり検針票が届かなくなってしまうのです。

届かないからといって、もちろん、請求が行われない訳ではありません。

口座引落の場合、確認していなかったとしても、請求通りに引落されます。

指定口座の残高をギリギリにしている家庭の場合、残高不足になる危険すらあるかもしれませんね。

「いやいや、ペーパーレス化になっても、メールとかで請求書は届くんでしょ?他の会社のペーパーレス化に協力してるけど、ちゃんと通知が来たら明細をチェックしてるから、うちは大丈夫だよ」と思った方。

甘いです。


ここで、Web検針票を実際に使ってみる事にしましょう。

私も、「最初に会員登録とかあるんだろうな。面倒だな。」と思いながら、専用のウェブサイトにアクセスしてみました。

そうすると、「お客様番号」「住所」「契約者名義」「電話番号」などの情報を入力するように求められます。

もちろん、正しい情報を入力すれば、電気の利用量や請求額などを確認する事が出来ます。

しかし、その画面をどれだけ探しても、会員登録をする画面も、メールの設定画面も見当たりません。

そう。東電のweb検針票は、契約者情報を利用者が入力すると、「情報が確認できる」というだけの仕組みのようなのです。

※厳密には、次回以降、契約者情報の入力を簡略化する為の仕組みはあります(パソコンなどユーザー端末側にcookie技術を用いて情報を保存しておく仕組みだと思われます)。

東電側から、「請求書が発行されましたから、確認して下さいね」というリマインド(お知らせ)は来ないのです。

ですから、自分自身でカレンダーにメモでもしてTo-Doタスク化でもしておかない限り、請求書を確認せずに口座引落の日を迎えてしまう訳です。

これまでは、検針票が届く度に、「昨年と比べて利用量が○%増えてるから、もう少し節電しないといけないな…」などと思っていた人も、今後は、面倒になって、チェックしなくなる事が予想されます。

世の中的には、節電が求められていたはずですが、どうも、この東電のペーパーレス化では、「自分の電気利用量を意識する人は減る」流れになっているように思われます。


ここで、少しまとめましょう。

多くの会社が導入しているペーパーレス化との違い。そして、こういった案件に敏感な人が「東電のペーパーレス化に反感を持っている理由」は次の3つです。

1つ。「お願い」ではない。

多くのペーパーレス化は、「企業からのお願い」で始まります。

ペーパーレス化は企業にメリット(紙や配送のコストカット)がありますので、ペーパーレス化に協力すると、消費者にも一定のメリット(ポイントがたまるなど)が用意されているケースが多いといえます。

または、何か新しいプラン(多くは消費者にとってメリットのあるプラン)を新規に申し込んだり、切り替えたりした場合には、「ペーパーレスしか選べません」といった仕組みになっています。

こうした仕組みであれば、消費者側も強制されている訳ではないので、企業に反感を持つ事はないでしょう。

しかし、東電の場合、ペーパーレス化は決定事項として通知されます。

2つ。強制的にペーパーレス化が始まってしまう。

とはいえ、強制的にペーパーレス化を進めようとする企業も存在します。

私の知る限りでも、某ガス会社は、ある時期からペーパーレス化を原則にする事を決めました。

そして、ペーパーレス化への切り替えをしない契約者には、「追加料金」を請求する事にしました。

これまで無料で届いていたものが、ある日、有料に切り替わる訳ですから、この仕組みも反感を買ったようです。

しかし、この方式ですら、まだ契約者に優しかったと言えるでしょう。

なぜなら、実質的な値上げ(追加料金の発生)ではあるものの、「放っておいても、請求書は届き続ける」からです。

ある日、請求書が届かなくなって、「料金が確認できなくなる」という利用者は存在しなかったはずです。

東電の場合は、放っておくと紙が届かなくなってしまいます(詳細は前述の通り)。

そして、3つ。請求書等が発行されたタイミングでのプッシュ型の通知がない。

多くのペーパーレス化を行った企業のサービスでは、請求書などが用意できたタイミングで、ユーザーに通知が来ます(または、メールなどで請求書などの情報自体が届きます)。

それを見て、ユーザーは、必要な情報を確認する事が出来る訳です。

しかし、東電のペーパーレス化では、通知が来ません。ですから、自分で気をつけてwebを見に行く習慣を付けない限り、確認するタイミングを失ってしまうのです。

特に、電気を使う人は元気な人ばかりとは限りません。

ヘルパーなどが訪問時にポストの中身を確認するような家庭もあります。

そういった家庭では、より対応が放置されるのではないか、という懸念もしてしまいます。


さて、ここまで、東電のペーパーレス化の問題点を挙げてきました。

では、こうした問題に対して、どのように対応すれば良いのでしょうか。

対応は簡単です。

東電も鬼ではなく、紙の検針票を継続する方法も残してくれています。

東電のペーパーレス化に問題を感じる家庭は、紙の検針票を継続するようにして下さい。

ちなみに、私の周りでは、ペーパーレス化に賛成の人でも、今回はペーパーレス化に協力しない人が多いようです(やはり、前述のような問題があるからでしょう)。

東電に「紙の検針票を継続して貰う方法」は簡単です。

ここではパソコンでの方法をご紹介します(電話などでも対応は可能です)。

まず、紙で届いている検針票を手元において、東電のweb検針票の画面をブラウザで開きます(チラシにも記載されている通り、「東電 web検針票」で検索すれば、すぐに出ます)。

そして、右下に出ているチャットボタン(緑っぽいボタン)を押して下さい。

そうすると、チャットの画面が出ますので、「紙の検針票・領収証を継続する」を選びます。

あとは、画面の指示に従って、自分の情報を入力していくと、自動的に手続きが終わります。

担当者と話したりする必要もないのでスムーズに終わります。待たされる事もありません。

パソコン操作に慣れている人であれば、5分もかからないでしょう。


さて、今回、東電がペーパーレス化を進めようとしている理由は、単純に「コスト削減」だと予想されます。

そして、それ自体は、否定されるべきものではないでしょう。

しかし、様々な事情を抱えた契約者がおり、場合によっては命に関わるインフラでもある「電気」の請求書のペーパーレス化の進め方が、これで良かったのかどうか。

「利用者の反発」や「大きな問題に繋がる事はないのかどうか」など、この件については、経過を注目していきたいと思っています。